クロスウォーズアドベンチャー
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第53話:クリスマス
ダークタワーも残り僅かとなり、大輔はブイモンをマグナモンにアーマー進化させ、手っ取り早く残りのダークタワーを破壊する。
「プラズマシュート!!!」
ミサイルとプラズマ弾が周辺のダークタワーを瞬く間に粉砕し、消し去った。
「うわあああ、相変わらず見事なくらい強烈な一撃だわ」
周辺のダークタワーをあっさり消し飛ばした一撃に京は感嘆したように呟く。
「よし、これでデジタルワールドのダークタワーは全てぶっ壊したな」
「うん、長かったね」
「まあ、マグナモンがいたから破壊自体はスムーズに進んだけどな」
広範囲への攻撃を得意とするマグナモンに進化可能だったのが幸いだった。
もし出来なかったらここまでスムーズな破壊は出来なかったろう。
「さあて、ダークタワーは全てぶっ壊したし。今日はゆっくりしようぜ…」
「あの…」
「どうしたの?」
賢が言いにくそうにしているが、ヒカリが促す。
「実は母がうちでクリスマスパーティを開いて、みんなに来てもらえって…」
「「勿論行く」」
苦楽を共にしてきた仲間からのお誘いに断れるわけがないと大輔とヒカリは即答。
「京は?」
「勿論行きますよね京さん?」
意味深な笑顔を浮かべる2人に京はこめかみをピクピクさせる。
「わあ、その意味深な笑顔が腹立つ。勿論行くわよ!!絶対に!!ええ、何が何でも行くわよ!!」
「タケルは?伊織は?」
「うん、勿論行くよ?行くからその握り締めてる拳を解いてくれたら嬉しいかな?」
「はい、僕も行きます。喜んで行きます。前の僕の態度が悪かったからなんでしょうけど、その笑いながら睨むのは止めて下さい。」
「よし、よく言った。もし嫌だなんて言ったら…」
「ど、どうするつもりだったんですか?」
「……………さあな?」
ニヤリと笑いながら言う大輔に悪寒を感じた伊織であった。
「(行くって言って良かった……!!)」
体を恐怖でカタカタ震わせる伊織であった。
そしてクリスマス当日……ある場所で大輔達はある人物達を待っていた。
「何だよ、急に呼び出したりして」
「実は、太一さん達に俺達からクリスマスプレゼントがあるんです」
「プレゼント?」
地面の上に置かれていた巨大な靴下の中から飛び出したのは、太一達のパートナーデジモンであるアグモン達だった。
久しぶりに会う自分のパートナーに、彼らは喜びの声を上げた。
「アグモンじゃないか!」
「ガブモン!」
「随分久しぶりだなあ!」
「大輔達に連れてきてもらったんだよ!」
ミミにもアメリカへのゲートを開き、同じように靴下の中に隠したパルモンを送っている。
あちらが朝になれば、きっとミミも喜んでくれることだろう。
「ありがとう、みんな!」
「どういたしまして」
「皆さんに喜んで頂けて、僕達も嬉しいです」
今年はどうやら、それぞれにとって最高のクリスマスになりそうだ。
そして一乗寺家に着いてクリスマスパーティーを満喫する大輔達。
「去年はクリスマスどころじゃなかったからな」
「それ以前にいつデジタルワールドじゃ、クリスマスだったのかも分からなかったしね」
「クリスマスパーティー出来なかったなんて損してるわねー。」
「そんなことないですよ京さん。戦いで勝ったら祝勝会みたいなのやったからそんなに損じゃなかったかも。」
3人が思い出すのは戦いに勝った後にした祝勝会の馬鹿騒ぎ。
今ではもうタイキやシャウトモン達の叫び声もアカリやリリモン達の笑い声も聞こえないけれど。
「「「…………」」」
遠い目をする3人。
因みにブイモン達はお菓子を貪り食っている。
「そうそう、ブイモン」
「んあ?」
「この戦いが終わったら私と一緒に旅しない?」
「?」
いきなりの誘いにお菓子を食べる手を止めて首を傾げた。
「ウィザーモンのデータのサルベージよ」
「……ああ、あっちの俺達がやったっていうアレか?良いぞ別に」
「いいの?」
まさかあっさり了承してくれるとは思わなかったテイルモンは目を見開いている。
「んー?何かあいつら見てたら対抗意識が湧いてきたと言うか…絶対あいつらよりデータを見つけてやる」
「ああ、なるほどね。まさかウィザーモンも自分のデータで張り合いが起きるなんて思わなかったでしょうね」
理由を聞いたテイルモンが深い溜め息を吐いたが、断られるよりはマシかと前向きに考えることにした。
「大輔君、サルベージって?」
「ウィザーモンの散らばったデータを回収してウィザーモンを復活させるんだよ。デジタマ以外じゃこれしか方法がないんだと」
「それって大変なんじゃ…」
「大変だろうな、デジタマより遥かに小さいデータ片を1つ1つ回収してくんだから…勿論俺達も協力するけどな」
タケルの言葉に大輔はそう言うと菓子を一口食べた。
「ブイモン…ありがと」
「気にすんな」
短い言葉のやり取りの後、再び菓子を頬張るブイモンとテイルモン。
向こうの自分達に出来たことが自分達に出来ないはずがない。
この戦いが終わった後に続く旅に気持ちを弾ませながら。
「ねえねえ、このお菓子も食べていいの?」
「いいけどさ、なっちゃん。食い過ぎでお腹壊さないようにな」
なっちゃんが袋を開けてスナック菓子を食べ始める。
ブラックアグモンは黙々とクッキーを頬張っている。
賑やかで楽しいパーティー、しかしその楽しい気持ちも京のD-ターミナルに送られたメールの内容によって吹き飛ぶことになった。
「みんな!!現実世界にデジモンとダークタワーが現れたって!!場所は…」
それを聞いた全員が立ち上がり、一斉に駆け出した。
「デジメンタルアップ!!」
「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」
「ブラックアグモン進化、ブラックウォーグレイモン!!」
「先に行く!!」
「うん、私達も直ぐに向かうから!!」
「もしかしたらあっさり終わってるかもな!!」
大輔を乗せたマグナモンとブラックウォーグレイモンは凄まじいスピードで中学生バンドコンテストが開催される会場に向かう。
「くそ、インペリアルドラモンなら全員を乗せてあっさり行けるのによ!!」
「無い物ねだりしても仕方ない。今は使える力でどうにかするしかない。」
インペリアルドラモンDM系統には劣るが、マグナモンとブラックウォーグレイモンのスピードは素晴らしく速い。
あまり時間をかけずにコンテスト会場に到着出来た。
「太一さん!!みんな!!」
「大輔!!」
「良かった、無事だった…マグナモン、ブラックウォーグレイモン!!」
「プラズマシュート!!」
「ガイアフォース!!」
プラズマ弾とエネルギー弾が超スピードでダークタワーに接近すると、一瞬で消し飛ばした。
するとこちらに気付いたデジモン達が襲い掛かる。
「……ライトオーラバリア!!」
一気に巨大なバリアを張って、近付いてきたデジモン達を弾き飛ばす。
「ブラックウォーグレイモン、殺すなよ!!」
「分かっている…ぬうん!!」
ブラックウォーグレイモンが右腕を大きく横に振るうと、凄まじい風圧が起き、空を飛ぶデジモン達は為す術なく吹き飛ばされてしまう。
因みに太一達も風圧で吹き飛ばされそうになったが何とか堪えた。
「どりゃああああ!!」
「うおおおおお!!」
マグナモンとブラックウォーグレイモンは必殺技どころか得意技すら使わずに一撃で気絶させていく。
格下の完全体や成熟期からすれば自分達の得意技でさえ必殺技と何ら変わらない威力だと分かっているのだ。
「アグモン、加勢するんだ!成熟期なら俺達にだって!!」
「分かった、太一!!」
完全体は厳しいが成熟期の相手なら自分達にも出来る。
後輩ばかりに戦わせてたまるかとアグモン達も成熟期に進化して加勢してくれた。
「サンキュー!!」
「マグナモンとブラックウォーグレイモンは完全体を!!」
グレイモンが風圧で吹き飛ばされて体勢を立て直そうとしているダークティラノモンに頭突きを喰らわせながら叫ぶ。
マグナモンとブラックウォーグレイモンはもんざえモンとメガドラモンに突撃する。
力の差を感じ取って逃げようとする2体だが、それよりも早く2体に接近し、手刀を叩き込んで気絶させた。
「マグナモン!!」
「ネフェルティモン?」
ヒカリを乗せたネフェルティモンがマグナモンに寄ってきた。
「こっちは粗方片付いたわ。後はデジタルワールドに帰すだけよ」
「そうか、良かった。」
「まあ、あんた達が弱らせてくれていたおかげでそんなに苦労しなかったわ」
確かに向こうを見遣るとグレイモン達は苦戦することなく、ダークティラノモン達を気絶させていた。
光子郎のノートパソコンを利用してゲートを開き、デジタルワールドに強制送還する。
「今日は、せっかくパーティやってたのに、ごめんな」
賢の自宅であるマンションの前で子供達は彼を見送る為に揃っていた。
「いえ、いいんです」
「来年があるし、来年はもっとバーッとやろうぜ」
「うん、それじゃあ……」
ワームモンを抱えてマンションの中に立ち去る賢。
「……………」
「大輔君、どうしたの?」
「いや、ダークタワーが何で現実世界に現れたのか気になってよ?いや、アルケニモン達の仕業なのは分かってるんだ。でもあいつらの目的はデジタルワールドを破壊することだったはずだ。どうして現実世界にダークタワーを建てる必要があるんだ?進化妨害、ダークタワーデジモン…そして中華の泉で偶然復活させたチンロンモンの言っていたダークタワーの世界のバランスを崩す力…現実世界のバランスを崩して奴らに何の得が………何ですか?」
タケルの言葉に答えながら考える大輔。
しかし自分に集中する視線に気付いて振り返ると愕然としている先輩達。
「へ?あ、いや…その…」
「お前でもそこまで考えるんだな」
「お、お兄ちゃ…!!」
引き攣り笑いを浮かべる太一、そして失礼なことを言うヤマトにそんなヤマトの発言に顔を真っ青にするタケル。
大輔はヤマトの発言に微笑んだ。
伊織も京もこれから起こるであろう惨劇に顔を真っ青にする。
呆れたように見つめるのはヒカリ、ブイモン、テイルモン、ブラックアグモン、なっちゃんのみ。
「ヤマトさん」
「何だ大す…うがあ!!?」
ドゴオンッ!!!
ヤマトの尻に回し蹴りが凄い音を立てながら叩き込まれた。
いつもタケルに繰り出される物より遥かに強烈な一撃であった。
「(ぼ、僕のより凄い…あれでも手加減してくれてたんだ…)」
「~っ!!~っ!!!~~~っ!!!!」
尻を押さえて転げ回るヤマトを冷たく見下ろしながら大輔は口を開いた。
「流石兄弟だな、失礼なとこが本当にそっくりだよ」
「本当に変わったなあ…」
「これくらいしなきゃ暴走が止まらない馬鹿とか(シャウトモン等)がいたんで」
一方、未来の並行世界のデジタルワールド。
「ぶぇえええっくしょいっ!!」
「シャウトモン、風邪カ?」
盛大なくしゃみをするシャウトモンにバリスタモンが疑問符を浮かべながら尋ねた。
「いやあ、そんなことねえと思うんだけどよ…」
鼻をかみながら首を傾げるシャウトモンであった。
そして再び大輔達のいる世界では大輔が未だに悶絶しているヤマトを無視して全員に解散を指示した。
「みんな、帰ろう」
「「「「「はーい」」」」」
ヒカリ、ブイモン、テイルモン、ブラックアグモン、なっちゃんが返事をした。
「え…でもよ…」
悶絶しているヤマトを見遣りながら太一が口を開こうとするが。
「帰ろう」
【はい】
有無を言わせぬ迫力で言い放つ大輔に全員は素直に頷いてこの場を後にする。
尻を押さえて悶絶するヤマトを放置しながら…。
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