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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第48話:不思議な少女

大輔達は現在、ダークタワーを破壊するために森に来ていたのだが、一緒に歩いていたテイルモンがふとその歩みを止めて樹海の中を見回す。

不自然に存在するダークタワーもここにはなく、何かがテイルモンの頭に引っかかっていた。

「……テイルモン?」

そして、少しの間を置いてテイルモンは思い出す。

「……ここ!私が本物のホーリーリングを無くした所だ!!」

「ホーリーリングを!?」

慌てて、ヒカリ達はテイルモンの元へ駆け寄る。

「間違いない。あの時は、デジモンカイザーが暴れていたから探せなかったけど……」

大輔達がデジタルワールドに来る日よりも前にテイルモンはこの森でイービルリングによって操られたユニモンから必死に逃れ、気付いた時には尻尾に填めていたホーリーリングが無くなっていたのだ。

「あれ?じゃあそのホーリーリングは?」

「…これは貰い物だ。私ではない私が使っていたホーリーリングのコピー。このホーリーリングでは私の本来の力は使えない。」

京がテイルモンの尻尾に填まっているホーリーリングを指差しながら問うと、テイルモンは少しの間を置いて答えてくれた。

「…本物のホーリーリング…か…よし、探してみるか。もしかしたら…」

「私の本来の力を発揮出来るようになるかもしれない」

「……もしかしたら拾われてるかもしれないけどな。ホーリーリングって稀少なんだろ?拾って悪用しようって奴もいるかもな」

「……あまり想像したくないな…まあ、あれからもう何日も経っているから有り得なくはないけど…」

「じゃあ、テイルモンのホーリーリングが拾われて悪用されてないことを願って探すとしますか!!」

ブイモンが元気よく言うと全員が頷いた。

「取り敢えず手分けして……」

「(来……て…)」

「?」

突如、頭の中に響いてきた声に大輔は勢い良く振り返るが、振り返った先には誰もいない。

「大輔君、どうしたの?」

タケルが疑問符を浮かべながら大輔に尋ねる。

「今、声が聞こえなかったか?」

「え?いや別に?何も聞こえなかったよ?大輔君、幻聴でも聞いたの?ボケるにしても早過ぎ……あがっ!?」

失礼なことを抜かすタケルの尻に膝蹴りが炸裂。

地面に突っ伏し、尻を押さえて痙攣するタケルを伊織達は呆れ半分、憐れみ半分の視線を寄越した。

「タケルさん……余計なことを言ったら痛い目に遭うっていい加減学びましょうよ…」

「タケル君って…もしかしてマゾって奴なの?」

それを聞いたタケルが起き上がる。

「いやいや違うよヒカリちゃん!?ただの冗談なのに短気な大輔君が手をあげるから…」

「冗談でも言う相手を間違えてんのよタケル君…」

タケルの言葉に京もツッコんだ。

「と言うか誰!?ヒカリちゃんにマゾなんて言葉教えたの!?」

【………………】

「………………ブフッ!!」

「ブイモン!!君か!!」

全員が明後日の方向を見遣るがとうとう堪えられなくなったブイモンが噴き出した。

「全く馬鹿やってる場合じゃないだろ…ホーリーリングを探さねえとな」

「原因は君…何でもないですごめんなさい」

蹴りを繰り出そうとする体勢に入った大輔にタケルは即座に謝罪した。

「何かタケル君が大輔をからかっていた時期が遠い昔のように思えてくるわねー」

「はい、今では問答無用でお尻に蹴りが入りますからね」

京と伊織が大輔とタケルを生暖かい目で見つめながら呟くのだった。

大輔はブイモン(D-3X内にブラックウォーグレイモン)と共に森を静かに歩いていた。広大な樹海の中で1つのホーリーリングを見つけ出すのは骨が折れるだろう。

「(来て…)」

「っ!!まただ」

「え?何だよ大輔?」

「声が聞こえるな」

「ブラックウォーグレイモン、お前にも聞こえるのか?」

「ああ…そして声の主の力…大きいがとても無邪気な力だ…闇の力だが、光にとても近い…」

D-3X内にいるブラックウォーグレイモンと会話する大輔に何か除け者にされたような感じがしたのかブイモンはムスッとしている。

「どうしたブイモン?」

「何でもない!!」

ムスッとした表情を浮かべながらそっぽを向くブイモンにブラックウォーグレイモンはこっそりと深い溜め息を吐いた。

しばらく歩くと段々と薄暗い森の中が明るくなっていく。

所々に花が咲いており、重苦しい雰囲気が軽くなっていくような気がした。

「(来て…1人は寂しいの…私の所に来て…)」

「声が大きくなった…ここだな…何処にいるんだ?返事をしてくれ!!」

「お前は何処にいるのだ?」

「(私の声が聞こえたの?私の所に来てくれたの?)」

「ああ、そうだよ。君の声が聞こえたから此処まで来たんだ。」

「お前は何処にいる?場所を教えろ」

D-3Xから出たブラックウォーグレイモンも声の主に興味が湧いた。

力は自分に大きく劣るだろうが、光に限りなく近い闇の力の持ち主が気になりだしたのだ。

「(ここ!!私はここにいるの!!早く、早く来て!!)」

「あそこだな?」

「さっさと行くぞ」

「ああっ!?ちょっと待ってくれよお!!」

先に進んでいく大輔とブラックウォーグレイモンを追い掛けるブイモン。

「(不思議な空間だ…デジタルワールドであろうと俺が存在するだけで何らかの影響を与えると言うのにこの空間では何の変化も起きない…俺の闇の力が影響を与える前に浄化されているのか?)」

それなのに違和感は全く感じないどころかとても居心地がいい。

「(この空間は声が聞こえる者ならば例え異端の存在でも受け入れる場所なのか…)」

胸の奥に暖かい何かが灯るような感覚を覚えたブラックウォーグレイモン。

しばらく歩くと、銀色の髪の少女が満面の笑みで迫ってきた。

「わあ!来てくれたの!?ありがとう。ずっとずっと1人で寂しかったの!!」

「「…………」」

駆け寄って来た少女に大輔は目を見開き、ブラックウォーグレイモンは少しの間を置いて驚愕する。

「お前は…デジモンだな?」

「うん!!そうだよ!!」

見た目は人間の女の子に見えるが、よくよく見ると普通の人間とは違う部分もある。

「名前は?」

「名前?知らない」

あっさりと言う女の子デジモンに絶句する大輔。

「名前を知らないなんて…どう呼べばいいんだ…?」

「あなたの名前は?」

「…本宮大輔、大輔でいいよ」

「うん!!おっきくて黒いあなたは?」

「ブラックウォーグレイモンだ」

「ブラック…ウォー…グレイモン…?名前長いねえ。ブラックって呼んでいい?」

「…好きにしろ」

「うん、よろしくねブラック!!」

「俺はブイモンだ!!よろしくな!!」

明るく挨拶するブイモンに女の子デジモンは目をパチパチさせた。

「何?この青蛙?」

「んなあ!?」

「うーん……名前を思い出すまで何て呼ぶか…」

硬直してるブイモンを無視して女の子デジモンの代わりの名前を考える大輔。

本人は名前なんて知らなくても構わなそうだが、自分達からすれば名前が無いのは不便だった。

「う~ん、夏…親しみを込めてなっちゃんってのは?」

「なっちゃん?」

「うん、夏だからなっちゃん。夏は俺達にとって特別な季節なんだ。新しい友達になる君にあげる代わりの名前」

「夏…なっちゃん…なっちゃん!!うん!私、今から夏…なっちゃん!!」

「単純なの…」

「うるさいよ!出来損ないの海豚(イルカ)!!」

「何だとおっ!?この無駄にでかい白兎!!」

「止めろ、下らんことで喧嘩するな鬱陶しい」

「ごめんねブラック」

「むぐぐぐ…っ」

喧嘩してる2人を強引に引っ剥がすブラックウォーグレイモン。

なっちゃんは申し訳なさそうに謝るが、ブイモンは歯軋りしてなっちゃんを睨みつけている。

「なっちゃん、ブイモンは俺の大事なパートナーなんだ。あまりそういう風に言わないでくれ」

「パートナー?」

「一番頼りになる相棒さ」

大輔の説明になっちゃんは頬を膨らませた。

「私も大輔のパートナーになりたい」

「え?」

「んなああああ!?駄目だ駄目だ駄目だあああ!!大輔は俺のパートナーだ!お前みたいな奴に大輔をやれるかああああ!!」

驚愕し、目を見開きながら叫ぶブイモンに大輔は苦笑しながら首を横に振った。

「どうして?何で?」

悲しそうに大輔を見つめるなっちゃんに大輔はゆっくりと口を開いた。

「俺にとっての一番のパートナーはこいつだけだし、多分なっちゃんがパートナーになっても、俺はなっちゃんのポテンシャルを100%発揮出来ない。でも…仲間になることは出来る。このD-3Xがあれば、なっちゃんの傍にいて、一緒に戦うことが出来る。なっちゃんは…デジクロス要員になるだろうけど」

「???よく分からないけど、大輔と一緒にいられるなら何でもいい!!」

疑問符を沢山浮かべながらも、なっちゃんは大輔の傍にいられるならとD-3Xに触れた。

「その代わりブイモンと仲良くな?」

「ゔ……ゔゔゔ…わ、わ、分か…った………」

凄まじい葛藤の末、なっちゃんは了承した。

「ブイモンもいいな?」

「分かった分かった。仕方がないから大輔の傍にいさせてやるよ。ふんっ」

「むうう…!!」

「何故こいつらは仲が悪いんだ…?」

「性格の相性が最悪なのかなあいつら?」

呆れ顔のブラックウォーグレイモンと苦笑する大輔。

なっちゃんとブラックウォーグレイモンをD-3X内に入れようとした時であった。

「困るのだがな…彼女を連れて行かれては…彼女を取り込んで完全に復活することが出来なくなる…」

「誰だ!?」

振り返ると山のように大きく、強靭な四肢を持つ魔獣で、下半身には全てを飲み込む程の大きな口が付いているデジモンがいた。

「クーックックック…ようやく…ようやく見つけたぞシスタモン・ブラン…」

暖かな空間が暗くおぞましい空間に変わる。

「貴様、何者だ?」

「私はかつてアポカリモンと呼ばれた者…今ではガルフモンとして生まれ変わった」

「アポカリモン…確か、太一さん達が倒したデジモンだったな。その生まれ変わりだって?」

ガルフモンは大輔の言葉に笑みを浮かべた。

「そう、私はかつて選ばれし子供に敗北し、自爆を試みたが、デジヴァイスの力によって阻止され、僅かな残骸となって暗黒空間を漂った…そして暗黒空間の中で飛び散った残りの残骸とデジモン達の無念を取り込んでガルフモンの…今の姿になれたと言うわけだ。だが、アポカリモンとしての力と姿を取り戻すには力が足りない。だから…」

「この空間を作り出せる莫大な力を持つナツ…いや、シスタモンを取り込んで復活しようと言うのか?」

「その通り…お前も私と同じ暗黒の存在だ。特別に取り込んだ後も意志を残してやっても良いぞ?」

「ふざけるな!俺は貴様の一部になど絶対にならん!!」

「おい、ガルフモン。アポカリモンの生まれ変わりだか何だか知らないけどな。俺の仲間を取り込むだの何だの…ふざけんな!!」

ガルフモンの言葉に激怒するブラックウォーグレイモンと大輔。

「どうやらもう1回叩きのめしてやらないといけないみたいだな。おい、なっちゃん。危ないから下がってなよ」

なっちゃんを下がらせると、ブイモンも拳を鳴らして戦闘体勢に入る。

「(こいつみたいな得体の知れない奴には小手調べなんか要らねえ!!)デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、奇跡の輝き!マグナモン!!」

「頼んだぜ、マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!」

「「うおおおおおお!!!」」

マグナモンとブラックウォーグレイモンが同時にガルフモンに突撃した。

ガルフモンの豪腕が2体に向けて振り下ろされるが、それをかわして攻撃に移行した。

「プラズマシュート!!」

「ウォーブラスター!!」

プラズマ弾とミサイルの一斉掃射と連続エネルギー弾がガルフモンに直撃する。

「ぬおっ!?」

よろめいたガルフモンにマグナモンとブラックウォーグレイモンは追撃を繰り出す。

「ミラクルグリッター!!」

「ガイアフォース!!」

鎧から放つ光と負のエネルギー弾がガルフモンに直撃した。

「「…やったか……?」」

「この程度でこの私を倒せると思っていたのかな?」

「「何!?」」

背後から聞こえた声に戦慄を覚えたマグナモンとブラックウォーグレイモンは振り返るが既に手遅れであり、下半身の巨大な口の中に吸い込まれてしまった。

「ああ!?」

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!」

吸い込まれてしまったマグナモンとブラックウォーグレイモン。

残ったのはなっちゃんと大輔のみ…。

「あの2体は間もなく消化吸収され、私の一部となるだろう。その上でシスタモン・ブランを取り込めば私はかつての…いや、それ以上になれる!!」

ガルフモンが笑みを浮かべながらなっちゃんを見下ろすと、口から闇の波動弾を放った。

「魔法盾展開!!」

詠唱し、槍を構えると魔法盾を展開して波動弾を受け止めた。

「なっちゃん!!」

「大輔、大丈夫!?」

「ああ」

「ほう、成長期でありながら我が一撃を防ぐか…益々取り込みたくなったぞ貴様を」

なっちゃんの力を目にして益々彼女を取り込みたくなったのか、ガルフモンが醜悪な笑みを浮かべる。

「(マグナモンとブラックウォーグレイモンの攻撃をまともに喰らったのに大してダメージを受けてない、とんでもなくタフな奴だ。奴を倒すにはマグナモンとブラックウォーグレイモンをデジクロスさせるしか…でもどうやって?)」

マグナモンとブラックウォーグレイモンはガルフモンの体内だ。どうやって2体をデジクロスさせる?

「(何とかしてあの2人の所に行かないと…でも…俺があいつの体の中に入って無事でいられるわけがないし…)」

「く…ぐうう…!!」

再び放たれたガルフモンの攻撃を魔法盾で必死に防ぐなっちゃんを見て何かが閃いた大輔。

「なあ、なっちゃん。俺達を包み込むようなタイプのバリアって張れないか?」

「え?張れるけど、どうして?」

「へへ…、一か八かの賭けさ」

疑問符を浮かべるなっちゃんに大輔は笑みを浮かべた。

「さあ、これで終わりだ。シスタモン・ブランを取り込んで私は世界を滅ぼし、私が世界を支配する!!」

ガルフモンが下半身の口を開けた瞬間。

「今だ、なっちゃん!!」

「うん!!」

なっちゃんが槍を構えて詠唱をし、彼女と大輔を包む円形のバリアが展開され、一気に口の中に突入した。

そしてガルフモンの体内ではマグナモンとブラックウォーグレイモンが消化吸収されまいと必死に足掻いていた。

「くっ…このままじゃ、消化されちまう…」

「奴の一部など冗談ではない…!!」

技を当てて無理矢理脱出しようとするが威力が足りず、焼け焦げてはいるが、穴は開いていない。

このままでは…。

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!」

「大丈夫!?」

「大輔!?」

「ナツか!?」

バリアに守られた大輔となっちゃんがまだ消化されていないマグナモンとブラックウォーグレイモンを見て安堵の表情を浮かべた。

「なっちゃんにバリアを張ってもらったんだ」

「ああ、成る程な…」

自分達ですら危険な場所に大輔達が入れるわけがないので納得した。

「マグナモン、ブラックウォーグレイモン。反撃開始と行こうぜ!!」

「おう!!」

「…ああ」

大輔がD-3Xを構えた。

「マグナモン!!ブラックウォーグレイモン!!アンノウンクロス!!」

「行くぜブラックウォーグレイモン!!」

「ふん…貴様に俺の力が使いこなせるか見せてもらうぞ…!!」

デジモンとダークタワーデジモンの全くアンノウン(未知の)な合体。

光が消えた時にはマグナモンの鎧は銀色に変化し、背中に翼と両腕にドラモンキラーを装備して体色は蒼から漆黒に変わっていた。

「マグナモンBW(ブラックウォリアー)!!!」

「行け、マグナモン!!」

「プラズマガイアフォース!!」

負のエネルギーを纏った紅いプラズマ弾が炸裂し、ガルフモンの体内に傷を作る。

「うおおおお!!ブーストトルネード!!」

両肩、両腰のブースターを噴かして高速回転し、銀色の竜巻となって突進する。

「ガッ!?アアアアアア!?」

突如襲う激痛に悶え苦しむガルフモン。

マグナモンBWがガルフモンの体をぶち破って脱出し、大輔となっちゃんも脱出に成功していた。

「脱出成功!!さあ、ガルフモン!!覚悟しろ!!プラズマガイアフォース!!」

プラズマ弾と誘導ミサイルが一斉掃射され、ガルフモンに直撃する。

「ば、馬鹿な…光と闇が交わっただと!?有り得ん!!」

「有り得るんだよ、お前の目の前で起きてるだろうが!ダークネスグリッター!!!」

黄金の輝きと闇の輝きが混ざり合い、銀色の閃光が鎧から放たれた。

「そ、そんな…ひ、光と闇が交わるなど…そんな奇跡が…うわああああああ!!!!」

光と闇の閃光に飲まれたアポカリモンの生まれ変わり、ガルフモンは断末魔の叫び声を上げて消滅した。 
 

 
後書き
この作品にメイクーモンはいない…いないのデス!! 
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