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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第45話:対話

ブラックウォーグレイモンとの戦いで敗北したブイモン達は…。

「うーん、負けちまった。悔しいなーもう」

「すみませんブイモン、全然悔しそうに見えません」

コンビニのパスタをズルズルと啜りながら喋るブイモンに伊織がツッコむ。

それは大輔を除いた全員が頷いた。

「何処に行くんだろう……ブラックウォーグレイモン……戦う為に生み出されたデジモン」

「あいつは多分、今は傷を治してより強い相手を捜してるよきっと」

ブイモンがデザートのケーキを頬張りながら言うと何故そんなことが分かるのかと京達がブイモンを見つめる。

「いやー何かなー。あいつと殴り合っていたらさあ、なーんかあいつのことが何となく分かるようになった」

「ふーん、戦闘馬鹿同士、共感したってことかしらねー」

【テイルモン…】

サラリと酷いことを言うテイルモンに全員は苦笑した。

ブラックウォーグレイモンに心があり、戦闘の一部始終を聞いたテイルモンはそいつは絶対戦闘狂だと確信していた。

「なあ、大輔。俺は嬉しいぞ、あんな奴がいて。あいつまだまだ強くなるぞ」

「だよな、生まれつき究極体だから成長も半端ないだろうしな。俺達が強くなるためには強い仲間とか必要不可欠だし…正直ブラックウォーグレイモンの戦い方は俺達に近いんだよな。相手に小細工無しで真正面からぶつかるって言う…正直凄えと思ったな。まだまだ強い奴は沢山いるって実感した…ヒカリちゃん、俺は決めたよ」

「ブラックウォーグレイモンをスカウトするの?」

大輔の考えを何となく察したヒカリは念の為、大輔に尋ねた。

「ヒカリちゃ~ん。流石にそれはないわよ~。」

「あ、バレた?」

「え!?嘘、当たり!?」

ヒカリの言葉に笑いながら京は否定するが、まさかの大輔の肯定に驚愕。

「だってあいつ強いし、これから強敵と戦うなら強い仲間が必要だろ」

「正しい!!君の言ってることは正しいよ!!でも相手はダークタワーデジモン…しかも闇の力を必要以上に増大させて生まれた存在なんだよ!?」

タケルが個人的な感情があるにせよ大輔の無謀な行動を止めようとする。

「クロスハートには暗黒系デジモンの魔王型のベルゼブモンが仲間になってくれたよなヒカリちゃん?」

「あ、うん。そうだね、後はバケモンとか沢山の暗黒系デジモンが仲間になって助けてくれたよね」

「私、もう暗黒系とか慣れちゃったわ。あの冒険で」

「うん、正直完全にとはいかないけど耐性出来ちゃったかも」

「ヒカリちゃんまで…」

茶を啜りながら言うテイルモン、大輔の隣でサラリと言ってのけるヒカリにタケルは愕然となった。

「実際、暗黒系ってだけで敵ってのはどうかと思うぞタケル。案外話が通じる奴かもしれないだろ?」

「まあ、あいつとの話し合い(殴り合い)は大変そうだけどな。“仲間にしたければ俺を倒してみろ”とか…」

「今、何か物騒な感じに聞こえたんだけど…」

「気のせい気のせい」

京がブイモンを見遣りながら言うとブイモンは満面の笑顔で言う。

「君達は3年前のことを知らないから…!!ヒカリちゃんも忘れたのかい?闇の恐ろしさを!?」

「忘れないわ…今でも完全に恐怖を克服出来ていない…でも、あの冒険がある程度の余裕を与えてくれたの。闇に対する恐怖への」

「正直、バグラモンとの会話で色々気付かされるところも沢山あった。俺はダークタワーデジモンってだけで心があるデジモンの存在を否定したくない。闇にだって優しい居場所があったっていいじゃないかよ。」

バグラモンとの会話で大輔も色々と考えさせられた。

闇にだって暖かな居場所があってもいいはずだ。

そして相手が闇の存在でも分かり合えるという希望をベルゼブモン達は与えてくれた。

「…………」

大輔の表情を見てタケルは大輔は自分の考えを変えるつもりが全くないことを悟って俯いた。

「大輔君、約束して。絶対に無茶はしないって」

「どうかな?それなりに無茶しないといけないかも」

「もう!!」

笑いながら言う大輔にヒカリは怒ったように大輔を見つめるのであった。

一旦解散となり、子供達はそれぞれの自宅に帰って行った。

自宅に帰ったタケルはリビングでかつての記憶を思い出していた。

今でも、たまにあの日を夢で見たりする。

消えていくパートナーの姿を見ているしか出来ずパートナーの名を叫んでいた無力な自分。

どんどん気持ちが暗い方向に向いていったその時。

「……あ」

インターホンの音に我に返ったタケルはすぐに玄関に向かい、急いで扉を開けるとそこには…。

「ようタケル。」

包みを持った大輔が手を上げて挨拶をした。

「大輔君…どうしたの?」

「ブラックウォーグレイモンのスカウトを一番嫌がってたお前の説得みたいなもんかな?…冗談はこれくらいにして…はっきり言って俺はお前のことを知らなさすぎるから。話してくれよタケル、何でそこまでして闇を憎むのかを。」

「僕に構わずにブラックウォーグレイモンをスカウトすればいいじゃない」

「お前は馬鹿か?お前はアホか?仲間の気持ちを完全に無視なんか出来るか。男同士腹割って話そうぜタケル。自分の気持ちを隠してばかりじゃ相手に何も伝わらねえんだからよ」

大輔が呆れたように言うと包みを差し出した。

「お前飯はコンビニ弁当ばっからしいから飯作っておいたから後で食え」

「あ、ありがとう…」

2つの包みを受け取る。

小さな鍋にタッパーに入ったご飯…どうやら鍋の中身はカレーのようだ。

リビングにある椅子に座り、向かい合う大輔とタケル。

そしてタケルは静かに口を開いて話し始めた。

タケルが闇を嫌悪する理由、3年前の冒険でエンジェモンが自分の命と引き替えにデビモンを倒した時の事を。

「そんなことがあったのか…」

「あの時、僕はどんなに願った事か…時間が巻き戻せる物なら…けど、時間は戻らない。嫌でも向き合わなければならない現実。僕は底なしの絶望の中、自分の運命を呪っていた…」

「悪かったな、タケル。辛いこと思い出させてよ。でもなタケル。お前や太一さん達が戦ったのがたまたま闇のデジモンだっただけで全ての闇のデジモンが悪い奴とは思えねえんだ。実際に俺とヒカリちゃんは何度かそいつらに助けられてる。ブラックウォーグレイモンだってたまたまダークタワーデジモンに生まれちまっただけさ。あいつを作ったのはアルケニモンだ。俺達人間が親や生まれを選べないように…あいつも選べないじゃねえかよ」

「…………」

「前にバグラモンが言われたことがある。“悪には悪の拠り所があってはいけないのか?”って…デジモンは神様は神様、光は光、闇は闇、善は善、悪は悪として生まれて死ぬまでその性質を変えることがないらしい。悪に生まれたデジモンは世界を呪うことを宿命づけられて、いつか正義に全ての名誉を奪われて滅ぼされる…。バグラモンはさ、悪の親玉だったけど元々はデジタルワールドの神様に仕えていた大天使のデジモンだったらしいんだよ。」

バグラモンは大輔達が戦ったデジモンだとは聞いていたが、デジタルワールドの神に仕える大天使デジモンであったことは知らなかったため、驚愕するタケル。

「敢えて悪の親玉になったんだよバグラモンは、光から闇になって、悪のデジモン達の拠り所になって世界の行く末を見極めるために。弟のことで諦めちまったけど、最後の最後で未来を信じてくれた…なあ、タケル。俺はさ、信じてえよ。甘いと思われても馬鹿って思われても良い。光と闇だって、いつかは分かり合えるかもしれないじゃんか」

「大輔君…」

「あ、一応言っとくダークナイトモンみたいな屑野郎は徹底的に叩きのめすからその辺は勘違いすんなよ?」

「う、うん…(叩きのめすって…)」

見てみたいような、見たくないような…いや、やはり見たくないかもしれない。

「少なくてもよ、闇のデジモンにだって友達や仲間のために命を懸ける奴もいるんだってことは信じてくれよ。ブラックウォーグレイモンは多分強い相手と戦ってそれに勝ちたいんだよ。パイルドラモンとの殴り合いでの意地を見てるとな」

「………分かった…信じて…みるよ。でももしブラックウォーグレイモンがデビモンみたいな奴だったら…」

「ああ、そん時はお前の考えに任せる。さて、飯にするか。温め直すからキッチン借りるぞ」

カレーを温め、ご飯をレンジで温め直して皿に盛る。

「ほれ、食え」

「「頂きます」」

タケルは気付かぬ内に笑みを零していた。

仲間とは言え久しぶりの手料理である。

大抵が市販の物やインスタント食品でハッキリ言って、タケルは手料理に餓えていた。

カレーを口に運ぶタケルとパタモン。

「「美味しい!!」」

タケルとパタモンのことを考えて辛みを抑えてくれたのだろうか、何よりこの滑らかな舌触りは何だろう?

「バナナだよ。」

「「バナナ!?」」

「カレーの隠し味にすりおろしたバナナを入れたんだ。程良い甘味とまろやかさが出るんだ。覚えとけ」

「そうなんだ…この前もお兄ちゃんのカレーをご馳走になったんだけどこれがまた辛くて……何でもいいって言った僕が悪いんだけど」

「タケル、台所の帝王にそれは禁句だ。次は俺ん家に食いに来いよタケル。飯くらい食わせてやっから」

「……ありがとう」

「お代わり!!」

「へいへい」

パタモンから皿を受け取ってカレーを盛り付ける。

もっと多めに持ってくるべきだったと後悔する大輔だったが、取り敢えずデジタルワールドに行き、ブラックウォーグレイモンをスカウトして駄目なら話し合い(殴り合い)でどうにかするとタケルに説明するのであった。

「ねえ、大輔君。いっそのこと殴り合いって言った方が清々しいよ?」

「気にすんな」

鍋とタッパーを持って高石家を後にする大輔であった。 
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