戦国異伝供書
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第二十四話 奥羽仕置きその十三
酒を飲み女と遊び煙草を吸い書を読む。そうして馬に乗り水練をして槍を振るう。そうして暮らしているのだ。
その慶次にだ、信長は言うのだ。
「岐阜は嫌いか」
「嫌いではありませぬが」
それでもというのだ。
「やはり傾くとなりますと」
「都か」
「あそこが一番よいので」
それ故にというのだ。
「あちらにいます」
「そうしておるか」
「はい、ですが」
「わしにはか」
「また機を見て」
そうしてというのだ。
「これはという悪戯を用意しております」
「それにわしをかけるか」
「そう考えています」
「よいか、その時はじゃ」
また柴田が言ってきた。
「わしがお主の頭をしこたま殴りじゃ」
「そうしてですか」
「その頭たん瘤だらけにしてやる」
「子供の頃の様にですな」
「今もじゃ、覚えておくのじゃ」
「しかと」
「しかしお主はそれでもじゃな」
慶次の気質、傾奇者であり童心を持っていることから言うのだった。彼もまた慶次をよくわかっているのだ。
「傾いてじゃな」
「悪戯もします」
「そうじゃな、ではじゃ」
「頭にですか」
「たん瘤を数えきれぬだけ作ってやるわ」
「全く、お主が政に興味を持っておれば」
前田が叔父として言ってきた。
「前田家の中でもな」
「重くですか」
「なっておるぞ、そもそもお主は前田家の嫡流ではないか」
「しかし家督は叔父上が継がれたので」
それでと言うのだった、自身の叔父に。
「そもそもそれがしはです」
「家督にもか」
「興味がありませんので」
これも最初からだ。
「ですから」
「このこともか」
「はい」
至ってというのだ。
「構いませぬ」
「家督もよいか」
信長も聞いて言うことだった。
「お主は」
「はい、父上ともお話してです」
「そうしてか」
「家督を継げば何かと面倒なことが多いので」
「それよりも傾きたいか」
「それで、です」
慶次はというのだ。
「そもそもそれがしは養子ですし」
「それでもお主は今では前田家の者じゃ」
前田はそこは強く言った。
「だから家督も継げるのじゃが」
「いやいや、それには叔父上の方が相応しいですから」
「わしの方がか」
「戦の采配も政も出来まする」
自分と違ってというのだ。
「それがしは戦の場では松風に乗り朱槍を手に突っ込むのみ」
「己が戦うだけだからか」
「はい、ですから」
それ故にというのだ。
「家督は叔父上の方が相応しいです」
「だからいらぬか」
「左様です」
「そうか、お主はつくづく雲だな」
信長は慶次についてこうも言った。
「空に浮かび自由に飛ぶな」
「雲ですか、それがしは」
「織田家におるが縛られておらぬ」
織田家にはというのだ。
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