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クロスウォーズアドベンチャー

作者:setuna
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第13話:同盟

デジタル空間を移動するオニスモンとそれに乗るダークナイトモンと大輔達。

「(デジタル空間なのに一切影響を受けてないってことはオニスモンとダークナイトモンは相当強力なデジモンってことか…リリスモンとの戦いを見ていると、ダークナイトモンはパイルドラモンとほぼ互角レベル…オニスモンは……伝説とまで言われてるんだ。滅茶苦茶強いデジモンに違いねえ…)」

「ふふ…珍しいな。君があんな急拵えの芝居を打つとは…。余程スパロウモンのことが心配だったと見える。いやはや私も信用がないな。」

ダークナイトモンの言葉にネネは素知らぬ顔で口笛を吹く。

「(急拵えの芝居?スパロウモンを降ろしたのはこれからやる儀式はやっぱり危険なもんなんだな)」

「おおっ!デジタル空間を抜けるぞ!!我らがゾーンへようこそ!大輔君!!」

デジタル空間を抜けた瞬間、体が雨に打たれる。

「何だこのゾーンは…凄え雨…」

「レインゾーン。デジタルワールドで流れた涙が集まり、耐えることなく降り注いでいると言われている常雨の大地…」

ネネがこのゾーンの説明をするとオニスモンは城の先端に着地した。

「この城があんたのアジトか」

「そう、我が居城、ダーク・クリスタルパレスだよ。」

黒水晶で覆われた城に入り、ダークナイトモンの後をついて行く大輔。

「少々肌寒いのは我慢してくれたまえ。この黒鉄(くろがね)のボディーは暑さ寒さには疎くてね…」

「な…っ!?何だよこりゃあ!?モノクロモンやカブテリモンやスカルグレイモンにガルルモンにエンジェモン…アンドロモンやエアドラモン、メラモン…キリハさんのグレイモンやメタルグレイモンとは違うグレイモンにメタルグレイモンまで…」

見たこともないデジモンもいるが、中には大輔が見たことのあるデジモンもいくつかいた。

全員水晶の中に閉じ込められているが。

「ほう!大輔君。今では珍しいタイプのグレイモンとメタルグレイモンまで知っているとは、中々物知りじゃないか。どうかね、私の自慢のコレクションだ…いずれも名のある強豪デジモンばかり。ふふ…集めるのに苦労したよ…!そこのネネにも随分活躍してもらったものだ…!!」

「このデジモン達…まるでピクリとも動かねえけど…死んでるのか?」

「生きているよ?今は水晶の中で眠ってもらっているがね。今に目覚めることになる!これから始まる我が聖戦のために…!!」

水晶の中には大輔達のデジタルワールドでもかなり強力なデジモンも閉じ込めている。

倒すだけでも苦労するのに生きたまま閉じ込めるのは更に大変なはずだ。

ネネを利用してどんな手を使ったのか知らないが、これだけの数となるとダークナイトモンの高い実力も分かるというものだ。

「さあ諸君。儀式を始めよう…!!新たなる闇の歴史が今これより紡がれるのだ!!」

奥まで辿り着くと、そこには水晶に閉じ込められた…。

「どこかネネさんに似てる…まさかあの子が…?」

「そうよ、あれが私の妹のコトネよ」

花を握り締めて眠るコトネを見て、まるで彼女が閉じ込められた水晶が棺のように見えた。

一方、スイーツゾーンで今までのことを聞いたヒカリは震えていた。

「そんな…私が私が捕まったから…大輔君が…私のせいで…」

「ヒカリのせいじゃないわ!!悪いのはダークナイトモン達よ!!」

「そうだヒカリ君!!君は何も悪くないじゃないか!!」

「早く…早く助けに行かないと!!」

「どうやってだ八神ヒカリ?まず問題点は2つある。1つはダークナイトモン達の居場所、もう1つはどうやってゾーンを渡るつもりだ?コードクラウンが無いだろう?」

「そ、それは…」

「何とかしてその問題点をクリアしない限り大輔達は助け出せない。なあ、スパロウモン…お前、ネネのデジモンだろ?行き先に心当たりはあるんじゃないか?」

「…多分、レインゾーン…」

「レインゾーン…そこがダークナイトモン達のいるゾーンか。後はレインゾーンに行くためのコードクラウン…なんだよな…スイーツゾーンのコードクラウン…レインゾーンに繋がってないかなあ」

「あまり安易な希望に縋らん方が良いぞ」

ブイモンがスイーツゾーンのコードクラウンを見つめるが、キリハはあまり期待しない方がいいと言う。

「うがーっ!こうなりゃあ、気合いだっ!みんなゾーンの果てまで走れーっ!!」

悩みすぎて頭がバーストし、自棄を起こしたシャウトモンが叫ぶ。

「(アホだっ…!!タ…タイキは何でこんな奴の夢のために…!?)」

「もう、気合いと根性でどうにかなるレベルじゃないんだけどなあ…」

最早これには流石の賢も苦笑するしかない。

「モニ?」

【え?】

声が聞こえて全員が振り返ると、そこにはモニタモンの赤ちゃん版と言えそうなデジモンがいた。

「モニ!」

「このデジモンはネネさんがいつも抱えていたデジモンじゃないか」

賢がこのデジモンの目線に合わせるように屈みながら言う。

「モニモン!何でこんな所に…?」

スパロウモンが尋ねると、モニモンの顔にネネの映像が映る。

「…なさんがこの映像を見ているということは、大輔君が私達に捕らえられ…ダークナイトモンが自らの野望を叶えようとしていることでしょう…そうなれば最早、彼を止めることは誰にも…例え皇帝バグラモンにすら出来ないでしょう。だからせめて…あなた達には真実を知ってもらい…彼の目の届かぬ所へ逃げて欲しいの…!!」

それは…モニモンに残しておいたネネからのメッセージであった。

「賢ちゃん、これって…」

「静かに」

「ダークナイトモンの目的は、3人のジェネラルからデジクロスの力を操る資質…交わりの旋律(クロス・コード)を引き出し、それを1つのジェネラルとXローダーに集めることによって、負のデジクロスの力を齎すXローダー…ダークネスローダーを作り出し、またそれを操り、ダークナイトモンの意のままに動くジェネラルを手に入れることです」

「ダークネスローダー…?」

ブイモンが疑問符を浮かべながら、ネネのメッセージに耳を傾けた。

そして、レインゾーンのダーク・クリスタルパレスでは大輔がネネ本人から同じ話を聞いていた。

手枷は外されたが、逃げられないように檻に入れられている。

「ダークネスローダーの齎す力…強制デジクロスは…相手のデジモンの意志に関係なく一方的にデジクロスし、その力のみを取り込むことの出来る邪悪な力よ。」

「(ダークネスローダー…デジモンカイザーだった頃の賢が使っていたD-3と同じ…いや強化版みたいなもんか…)」

ネネの話に耳を傾けながら、ダークネスローダーと暗黒D-3が似ていると大輔は思った。

他のデジモンの意志を無視したような機能が似ている。

「この力を使うことで、ダークナイトモンは理論上無制限にパワーアップを繰り返すことが出来る…この城のデジモンを取り込むだけでも、少なくとも三元士以上の力を得るでしょう…」

「あんな奴が三元士以上に…まずいな…」

「安心して大輔君。」

「ん?」

「彼は悪人だけど合理主義者よ。クロス・コードを失い、ただの人間に戻るあなたからは興味を失い、放置するだけでしょう…どこまでアテになる情報か分からないけれど…果てない荒野の世界。コリドーゾーンのコードクラウンが人間界に繋がっているという噂があるわ。いつかヒカリさん達と合流して…それを探してみるのもいいかもね」

「コリドーゾーンってとこのコードクラウンが現実世界に繋がってる?」

それを聞いた大輔が思わず聞き返した。

でも何故自分にそんな情報を与えるのだろうか?

「どうして俺にそんなことを?ネネさんはコトネちゃんと一緒に現実世界に帰るのが目的じゃないんですか?ていうか、ダークナイトモンの目的とコトネちゃんを救うことに何の関係が…まさかあんた、ダークナイトモンの意のままに動くジェネラルに!?」

大輔はネネが何をしようとしているかに気付いた。

一方スイーツゾーンでネネのメッセージを聞いていたブイモン達は。

「数年前…孤児の赤子だったスパロウモンを助けようとして私はXローダーを手に取り…妹と共にこのデジタルワールドに迷い込みました。始めは戸惑うことばかりでしたが…少しずつ知人も増え、この世界の仕組みや…デジクロスの力についても知り…ようやく本格的に人間界へ帰る方法を探し始めようとした矢先、妹のコトネが体調を崩し…眠ったまま意識が戻らなくなってしまったのです。そんな折、私達の前に現れたのが、スカルナイトモンとデッドリーアックスモン…ダークナイトモンの正体…デジクロスする前の姿です。」

「スカルナイトモンとデッドリーアックスモン…スパロウモンの話でも出たな」

「あの姿はデジクロスした後だったのかぁ!!?」

「なる程な…あの強さにも少しは合点がいくぜ…」

たった2体のデジクロスでリリスモンとそこそこ戦えるレベルになるのだとしたら、単体時も相当な強さなのだろう。

ネネのメッセージはまだまだ続く。

「彼らは私に語りました。体に宿るクロス・コードを見出され、ジェネラルとしてこのデジタルワールドに来るはずだったのは私だけで、妹はただ近くにいて、巻き込まれただけだった…ところが偶然にもコトネも不完全ながらクロス・コードを持っていた…!そのことが幼いコトネの体に負担をかけ、生きる力を奪っているのだと…」

「クロス・コードってそんなに体に悪いのか?でも大輔達は平気そうだぞ?」

「恐らく不完全だからよ。内包した不完全な力ほど体に害がある物はないわ」

そして再び、レインゾーンでは…。

「私達は早くに両親を亡くして遠縁の家に預けられたわ。コトネはたった1人の肉親なの。私は何があってもこの子を失いたくなかった…!彼らがダークネスローダーを作り出す過程でコトネの体からクロス・コードを取り除くことが出来ればあの子を助けることが出来る…私はそれがどんな災厄をデジタルワールドに齎すかを承知で彼らの陰謀に加担することを決めたの…」

「ダークネスローダーをネネさんに使わせるために…あの野郎は何するつもりなんだ?」

「ダークナイトモンは魔術を使って私の心を永遠に封じ込め、意のままに操る用意があると言っていたわ…私はこれからデジタルワールドに永遠の闇の支配を齎す本物の魔女になるのよ。それが…私がダークナイトモンと交わした取り引き…」

それを聞いた大輔は…そしてスイーツゾーンでネネのメッセージを聞いていたヒカリ達も驚愕していた。

「そっ…そんなっ…!嘘でしょネネ…!!?」

「成る程な、ネネがお前を遠ざけたのはダークナイトモンに強制デジクロスされないようにするためか!!ふざけやがって!!マグナモンへの進化が今でも出来るなら一瞬であいつを消し飛ばせるのに!!」

「…許せねぇっ…!」

拳を握り締めるシャウトモン。

その横でキリハも吐き捨てるように言う。

「ふん…!確かに度し難いな、あのダークナイトモンという輩はっ…!」

「違ぇっ…こんな悲しいことがまかり通ってる…今のデジタルワールドが許せねえっ!!」

「シャウトモン…」

「俺達ぁてんでんバラバラに生きてんだ…そりゃあ、いがみ合ったり喧嘩したりすることもあるだろうさ…!!けどっ…全力でぶつかり合って分かり合うことが出来りゃあ…みんなそれぞれのハッピーを掴み取ることが出来るはずだ…!!こんな一方的に…誰かの都合で誰かの心が押し潰されるなんてことがあってたまるかっ…!!」

シャウトモンの言葉を聞いた全員の心に何かが響いた。

「ジェ…ジェネラルのみんな!お願いだっ!!僕をネネの所に連れて行って…!!」

スパロウモンがタイキ達に土下座をして懇願し始めた。

「僕の体に登録されたログをXローダーかD-3Xで辿ればネネ達のいるレインゾーンに行くことが出来るはずだ!!行って何が出来るのか分からないけど…僕は…僕はネネの傍にいなきゃ…!!」

「…頭を上げてくれスパロウモン。大輔やネネさんを救いたいのは僕も同じさ。僕は行きますよレインゾーンへ!!」

「俺も行くぞ!シャウトモンが言ったように…あんな奴の都合のためにあの娘の心が押し潰されそうになってるなんて…放っとけない!!」

「私も行きます!!大輔君を、ネネさんを助けたい!!」

賢、タイキ、ヒカリがそう言うとアカリ達も頷いた。

「俺もレインゾーンに行こう」

何とキリハまでレインゾーンに向かうと言う。

「何でお前が?」

「本宮大輔は俺の部下になる男…それを潰されてたまるか。それにあのダークナイトモンの外道っぷりが気に障った…故に叩き潰す!!」

タイキが尋ねるとキリハは大輔の救出とダークナイトモン討伐が目的のようだ。

「ありがとうございますキリハさん。心強いです」

「精々足を引っ張らんようにするんだな一乗寺賢」

「おいおい、本当に奴らとやることになってしまったぞ。」

「珍しいな、キリハのあんな態度は…ありゃあ噂に聞くツンデ…」

「おっと、みなまで言うな?後でぶっ飛ばされるぞ」

メイルバードラモンがグレイモンの口を閉ざすが間に合わず、グレイモンはキリハにぶっ飛ばされた。

「(凄え…)」

グレイモンの頭に出来たタンコブを見てブイモンは思わず胸中で呟いた。

「大輔君…今、助けに行くから…」

ヒカリの呟きが聞こえたキリハはヒカリに尋ねる。

「本宮大輔の元まで行ったら何を言うつもりだ八神ヒカリ?」

「え?そ、それは…迷惑をかけたから謝りたくて…私が人質にされたからこんなことに…」

その言葉にキリハは思わず溜め息を吐いた。

「本宮大輔に言うべき言葉は断じて謝罪などではないぞ八神ヒカリ。」

「え?」

「俺が人質にされたお前を無視してダークナイトモン達にグレイモン達を向かわせようとしたのを本宮大輔が止めたという話は覚えているな?」

「は、はい」

「…土下座だ。」

「……え?」

土下座という単語にヒカリは目を見開いた。

「…激昂した俺達を止めるために、お前を救うために…奴は俺達に土下座をしたのだ。勢いを付けすぎたためか、額から血を流してまで、止めてくれと懇願し、お前を大事な女なのだと言っていた…」

「大輔君が…?」

「奴の愚直なまでに真っ直ぐな性格を考えれば、あのような外道に従うなど腸が煮え繰り返る程のはずだ…しかし、そんな自分の誇りよりも…お前が余程大事だったのだろうな。誇りを捨ててまでお前を救おうとした本宮に謝罪するのは、奴の決意に泥を塗ることになるぞ。」

キリハの言葉にアカリも頷くとヒカリの肩に手を置いた。

「キリハ君の言う通りよヒカリちゃん。ヒカリちゃんが大輔君に言わなきゃいけないのは“ごめんなさい”じゃない…“ありがとう”よ」

「…はい…!!キリハさん、アカリさん…!!」

怪我をしてまで、屈辱に耐えてまで自分を救ってくれたことに対しての感謝の言葉を伝えるために絶対に大輔を救うと決めたヒカリ。

「お前は幸福者だぞ。あのような男に大事にされているのだからな」

「へっ!?あ、あの…」

キリハの発言に赤面するヒカリ。

「こほん、では行きましょうか…」

脱線しそうなので、賢が咳払いするとスパロウモンの力を借りてレインゾーンに。

「(…もう1人気に障る輩は…気高い淑女の決意に泥を塗りつけた…蒼沼キリハという男だ!!この恥を雪がずに王を名乗れるかっ…!!今行くぞ天野ネネっ…!)」

キリハは口には出さなかったもう1つの目的、天野ネネ救出を胸にレインゾーンに向かうのであった。 
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