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永遠の謎

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91部分:第六話 森のささやきその十四


第六話 森のささやきその十四

「その彼が強大なロシアと対立することはだ」
「何としても避ける」
「そういうことですか」
「そうだ、避ける」
 断じてだというのである。
「だからそれはない」
「左様ですか」
「それでは」
「そうだ。それはない」
 また答える王だった。
「ロシアとの戦いは絶対にだ」
「避けますか」
「決してですね」
「それだけは」
「では残る国は」
「あの国ですか」
 ロシアも否定されてだ。誰もが残る国が何処なのか理解した。そしてだった。その国が何処かをだ。彼等はその言葉に出すのだった。
「フランスですか」
「あの国ですか」
「あの国とですか」
「フランスは神聖ローマ帝国の頃から」
 その頃からだというのである。
「ドイツと対立してきていた」
「そうですね。何百年もの対立です」
「では今もですか」
「それは」
「フランスは常にイギリスと対立している」
 それは絶対なのだった。
「そしてドイツがそこに加わればだ」
「フランスにとっては実に厄介なことですね」
「ではその目はですか」
「何があろうとも」
「絶対に」
「そうだ。だからこそだ」
 それでだというのだ。王はプロイセンとフランスの戦いもだ。予見していたのだった。
「両国との戦いも避けられない」
「やがてですか」
「そうなのですね」
「そういうことだ」
 王の言葉は先の先を見ていた。まさにである。
「フランスはドイツ帝国の成立は何があろうとも妨害してくるだろう」
「そしてプロイセンはそれに対してですか」
「立ち向かうと」
「いや、何かしてくる前にだ」
 その前にだというのである。
「プロイセンが仕掛けるかもな」
「あちらからですか」
「そうしてきますか」
「ビスマルク卿はそういう方だ」 
 一度しか会っていない。だが王はビスマルクをよくわかっていた。彼がどうした人物なのか。実によくわかっていたのである。
「仕掛けられる前にだ」
「あの方から仕掛けられますか」
「そういう方ですね」
「非常に賢明な方だがそれと共にだ」
 王はビスマルクについてだ。この話をしたのであった。
「学生時代のことだ」
「その時代ですか」
「何かあったのですか」
「数多くの決闘に勝ってきた」
 そうしたことがあったのである。争うことを嫌う王とはまさに正反対であった。
「その為に乱暴者とさえ呼ばれていた」
「そうした血気のうえにですか」
「あの賢明さなのですね」
「手強い方ですね」
「しかしだ。そこで終わる」
 王はまた言った。
「フランスとの戦争でだ」
「そこで、ですか」
「戦争はなのですか」
「されなくなると」
「プロイセンもまた」
「何故あの方が戦争をするか」
 王であるから本来は敬語を使わなくともよい。しかし彼に敬意を払ってだ。それであえて敬語を使っているのであった。なおビスマルクも王に対してそうしている。お互いそれを知らないがだ。
 
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