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戦国異伝供書

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第二十四話 奥羽仕置きその四

「人がどれだけ万全なものを築いてもな」
「滅していますか」
「これまで二つの幕府が滅んでおるではないか」
 鎌倉、室町とだ。信長は話した。
「そうであろう」
「ですな、どちらの幕府もです」
「滅んでいます」
「最初は盤石と思われても」
「それがですな」
「そうじゃ、何もかもがじゃ」
 まさにとだ、信長は家臣達に話した。
「形あるもの全て何時かは壊れ人もじゃ」
「死ぬ」
「そうなるとですな」
「殿は言われますな」
「そうじゃ、結局全てのものは死に滅する」
 これが世の定めだというのだ。
「だから三百年位までは言えるが」
「しかしですか」
「それより先となりますと」
「どれだけ泰平を盤石にしても」
「それを安泰に治める仕組みを築いても」
「三百年じゃ」
 そこまでだというのだ。
「後はわからん」
「千年はとても」
「とてもですか」
「言えませぬか」
「そうじゃ、言えぬわ」
 到底というのだ。そしてだった。
 信長はあらためてだ、家臣達に話した。
「結局人はそんなものじゃ」
「三百年ですか」
「千年もとは言えぬ」
「政の仕組みについても」
「そこまでなのですか」
「そして五十年じゃ」
 こうも言う信長だった。
「人の生にしてもな」
「殿がいつも舞われている敦盛ですな」
「敦盛にある言葉ですね」
「人の一生はその長さだと」
「そして必ず滅するのじゃ」
 死ぬというのだ。
「不死身の者なぞおらぬ、仙人といっても結局はじゃ」
「死ぬ」
「そうなるとですか」
「殿はお考えですか」
「長生きしてもやはり死ぬ」
 そうなってしまうというのだ。
「死なぬ者は絶対におらぬ」
「ではですか」
「殿もやがてはですか」
「そう言われますか」
「わしは自分が死なぬと思ったことはない」
 一度もとだ、信長ははっきりと言った。
「そうであろう」
「はい、殿はご幼少の頃からです」
 信長をその時から知る者の一人としてだ、林が答えた。
「死なぬ命はないとです」
「言っておるな」
「まさに」
「そうじゃ、死なぬなぞじゃ」
「誰もですな」
「有り得ぬ」
 まさにというのだ。
「これは絶対のことじゃ」
「誰もが必ず死ぬ」
「そしてじゃ」
「そのうえで」
「人は生きていくのじゃ」
「必ず死ぬからこそ」
「その生を全力でな」
 限りあるその中をというのだ。
「それが人の務めじゃ、そしてわしもじゃ」
「天下を統一されて」
「そうしてですな」
「天下を泰平にし」
「泰平を長く続ける仕組みを築かれますな」
「そうする、わしはその為におる。そして」
 ここでだ、信長は前を見据えつつだった、ふとその整った眉を顰めさせてそのうえでこうも言ったのだった。 
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