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永遠の謎

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663部分:エピローグ 至高の救いその一


エピローグ 至高の救いその一

                     エピローグ  至高の救い
 王の遺体はすぐにミュンヘンに運ばれた。その王の都でだ。
 大々的な葬儀が行われる。王の棺は町を進んでいく。
 その棺にだ。民衆が集まりだ。手に手にだった。
 青い花を捧げていく。それはジャスミン、王のこよなく愛した青い花だった。
 その青い花を見てだ。葬儀を取り仕切るルイトポルド大公は言うのだった。
「それだけあの方が愛されていたのだな」
「はい、あの方は嫌われる方ではありませんでした」
「誰からも敬愛されている方でした」
「だからこそです」
「ああして花を捧げられるのですね」
「それに相応しい方だ」
 大公はやや俯きつつ周囲に述べた。その傍らにはホルンシュタインがいる。
 だが彼は何も語らない。沈痛な顔で俯いているだけだ。
 その彼を気遣う様に見てからだ。また言う大公だった。
「あの方は他の王の方々と共にだ」
「はい、安らかに眠られますね」
「これからは」
「私が言えることではないが」
 それでもだと話す大公だった。
「素晴らしい君主だった」
「それなのにこうなった」
「そのことがですね」
「残念だった」
 こう言うのだ。
「私の責任だが。だからこそだ」
「だからこそですか」
「殿下が」
「このことの咎は全て私が受けよう」
 十字架をだ。背負うというのだ。
「そうする。そしてだ」
「そして?」
「殿下、今度は一体」
「何をされるのでしょうか」
「葬儀の後で考えていることがある」
 こうした話をするのだった。
「それをしたい」
「御考えになられていることをですか」
「それをですか」
 周囲はこう言ってもだ。それでもだった。
 大公が何をしたいのかはわからなかった。その話の間にもだ。
 王はその眠るべき場所に向かっていく。誰も王に嫌悪や侮蔑の目を向けず深い敬愛の目を向けている。そうしてそのうえでだ。王に最後の別れを告げていた。
「陛下、御別れです」
「今までお疲れ様でした」
「安らかにお眠り下さい」
 厳粛な鎮魂歌が演奏されその中でだ。国の大通りを進みだ。王は旅の最後を進んでいた。民衆も兵達もだ。誰もが涙を流し王の棺を見送っていた。
 他国の外交官達もだ。こう言うのだった。
「これだけ敬愛されていた王はあまりいないでしょう」
「それだけ立派な方だったのですね」
「芸術と文化を愛された方でした」
「素晴らしい方でした」
 誰もがだ。王について賞賛の言葉を贈る。葬儀は壮大でだ。しかも厳粛な中で行われた。
 それが終わってからだ。大公はだ。側近達にこう言うのだった。
「陛下の築かれた城達だが」
「陛下は爆破しろと仰っていました」
「御自身がなくなられたら」
「ではあの城達はですか」
「全てですか」
「いや」
 そうではないとだ。それは否定する大公だった。
 
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