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この世の最後に

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第四章

「あいつの落語は話さないだぎゃ」
「絶対にな。いいとは思わない」
 だからだというのだ。
「全くな」
「あいつはそもそも人間性が駄目過ぎるだがや」
「権力者に媚びるだけが能だ」
「そうだぎゃな」
「あいつは野球も相撲も愛していない」
 では何を愛しているかというと。
「強い者に媚びることだけをだ」
「愛しているだぎゃな」
「そうした唾棄すべき屑だ」
「わしもそう思うだがや」
「だからその落語も聞かない」
「話すこともないだぎゃな」
「そうだ、あいつは落語家ですらない」
 では何かというと。
「自称でその実態はだ」
「権力者に媚びる太鼓持ちだぎゃな」
「野球の世界が大変だった時に正体を表した」
 卑しいことこの上ないそれをというのだ。
「たかが選手とだ」
「あのオーナーの発言を肯定しただがや」
「そこで正体を公にした」
「権力者に媚びる屑だがや」
「それがあいつだ」
「じゃああいつはたかが芸人だぎゃ」
「違う、たかが屑だ」
 芸人という職業ですらないというのだ。
「まだ蛆虫の方が世界に貢献している」
「蛆虫はちゃんと食物連鎖の中にあるだぎゃ」
「しかしあいつは違う」
「人間の世界にいるだけにだぎゃな」
「それにも貢献していない」
「まさに生きるだけで害になってるぎゃな」
「そうした奴だ、そんな奴の落語なぞ」
 この上ない否定を以てだ、室生は言い切った。
「言わない」
「そうだぎゃな」
「私はな」
「わしもあいつは大嫌いだがや」
 坂口もこう言った、二人共汗が玉から竹の様になっている。サウナの中でそれだけの汗が出てきているのだ。
「だからだぎゃ」
「私がここまで言ってもか」
「別にいいだがや」
「唾棄すべき屑だからだな」
「早く芸能界、落語会からいなくなるべきだがや」
「その通りだな」
「観ているだけで不愉快になるだがや」
 こうまで言う坂口だった、そしてだった。
 二人は一旦サウナを出てかかり湯をしてから水風呂に入ってだ、そのうえで室生にあらためて言った。
「それでだぎゃ」
「今度は何だ」
「いや、落語の話を一日数話ずつしていてだぎゃな」
「徐々にだ」
「あの娘の心をだがや」
「上向きにされていく」
「やっぱりそうするだがや」
 坂口は無図風呂の中で頷いた。
「徐々にだぎゃな」
「病は気からだが」
「心が上向くとだぎゃな」
「自然とだ」
 まさにというのだ。
「よくなっていく」
「その通りだぎゃ」
「ではいいな」
「これからもだぎゃな」
「毎日決まった時間にあの娘のところに行く」
「そしてだぎゃ」
「落語を話す。それで君はどうする」
「わしも嫌いではないだがや」
 笑みを浮かべてだ、坂口は室生に答えた。 
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