| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

思わぬ助け

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三章

「いえ、私もです」
「行くというのか」
「はい、私にはこれがあります」
 ここでだ、蓮花は。
 何処からか見事な剣を出してきた、そのうえで夫にこうも言った。
「山なので馬には乗りませんが」
「馬にも乗れるのか」
「はい」
 その通りだという返事だった。
「そちらも」
「そうなのか」
「それではです」
「今からか」
「はい、山に行きましょう。そしてです」
「そして?」
「あなたと家の方々は一つに集まってです」
 そうしてというのだ。
「進んで下さい、それも慎重に」
「慎重にか」
「ああした賊達は必ず根城の近くに罠を置いています」
 蓮花はこのことも話した。
「ですから慎重にです」
「進んでいくべきか」
「はい、そうしてです」
「攻めていくか」
「そうしましょう」
 こう言ってだった、蓮花が先頭に立ってだった。李と彼の家の者達はそれぞれ戦えるものを持って山に向かった。
 その途中にだ、蓮花は急に前に動いた。そうしてすぐに物陰にいた者を引っ立てて夫の前に戻って来た。
「この者は賊の下っ端です」
「まさか」
「はい、今も当家を見に来ていたのでしょう」
「まさか我々の動きに気付いたのか」
「いえ、まだです」
「気付いていないか」
「むしろ盗みに入れるかどうか」
 それをというのだ。
「見に来たのでしょう」
「そうだったのか」
「ですが今捕らえました」
 賊の下っ端の者をというのだ。
「この者から罠の場所や賊の状況を聞きましょう」
「そうするのか」
「若し嘘を言う様なら仕置きを与えます」
 蓮花は夫に淡々と述べた。
「そうしつつです」
「先に進んでいくか」
「はい、一つでも嘘を言えた」
 蓮花は強い声で言った。
「その時は殺しますから」
「ひっ・・・・・・」 
 賊は蓮花のその言葉に怯えた声を挙げた、その言葉に本気の凄みを感じたからだ。
 それでだ、賊は蓮花が問うよりもだった。
 自分からぺらぺらと喋っていった、そうして言うのだった。
「命だけは」
「わかったわ、お役人に話しておくわ」
「はい、ですから何でも喋りますので」
「まだ知っていることがあるのね」
「はい、全部喋ります」
 こう言って実際にだった。
 賊は何でも喋り李の家の者達を案内さえした、蓮花はその賊のすぐ後ろに立ち剣を構えつつ夫に言った。
「では行きましょう、若し賊が逃げても」
「その時はか」
「これがあります」
 懐から小刀を出して言った。
「すぐに急所に投げて仕留めます」
「小刀も持っているのか」
「弓矢も使えますが」
 それでもというのだ。
「今はです」
「それを使うか」
「山の、しかも深い森の中では」
「弓矢はか」
「木々が多いので」
 だからだというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧