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永遠の謎

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633部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその十


第三十六話 大きな薪を積み上げその十

「陛下、謀反人達は全て捕らえました」
「全てですか」
「はい、全員です」
 こう王に報告するのである。
「後は。彼等を処罰するだけですね」
「そうですね。後は」
 王は将校の言葉を聞く。しかしだった。
 その返事は何処か虚ろでだ。こう述べるのだった。
「私は」
「陛下は?」
「いえ、有り難うございます」
 己の言葉を自ら遮っての言葉だった。
「では謀反人達はです」
「全員処刑ですね」
「まずは朝まで彼等をそのまま監禁しておくのです」
 そうしろというのだ。
「わかりましたね」
「そして朝になればですね」
 王の言葉の真意には気付かないまま将校は応える。
「彼等を」
「はい。そしてです」
 ここでだ。王は言った。その王の耳にはだ。
 城の外から歓声が聞こえてきた。その歓声はというと。
「王様万歳!」
「国王陛下万歳!」
 こうだ。王に忠誠を誓う衛兵や村人達が王に歓声をあげていたのだ。その彼等の自らへの言葉を聞きながらだ。
 王はだ。こう言ったのである。
「彼等に伝えて下さい」
「はい、何とでしょうか」
「有り難うと」
 そう伝えて欲しいというのだ。
「こう伝えて下さい」
「わかりました。それでは」
「私は。旅の中で彼等も見ることができました」
 己を慕いだ。絶対の忠誠を向ける彼等をだというのだ。
「非常に有り難いことに」
「その言葉も伝えて宜しいでしょうか」
「はい」
 王はそれもよしとした。だがその表情はというと。
 明るさがない。いつもの沈んだ深い憂いの中にある。その憂いと共にだ。
 王はだ。こう言ったのである。
「お願いします。貴方達のことば何があろうと忘れないと」
「有り難き御言葉。民達も喜びましょう」
「真に。感謝の念に耐えません」
 こう言ってなのだった。王は己の席に静かに座っていた。
 その捕らえられたホルンシュタイン達はだ。宿の中で村人達に王への歓声を聞きながらだ。
 そのうえで焦りと恐怖を覚えだ。口々に言っていた。
「まずい、このままでは」
「我々は皆処刑されるぞ」
「陛下もお許しになられない」
「そしてベルリンも陛下を支持するぞ」
 ドイツ皇帝として帝国の中にいる王への反逆は許さない、そういうことだ。
「では我々の行動は失敗か」
「失敗に終わるのか」
「そしてバイエルンの財政はこのまま破綻するのか」
「元の木阿弥ではないか」
「いえ、だからです」
 一人確かな顔の者がいた。ホルンシュタインだ。
 彼だけは落ち着き椅子に座りだ。こう同志達に述べた。
「朝までの我慢です」
「朝になれば処刑されるのですが」
「それでもだというのですか?」
「何、処刑はされません」
 見透かした目でだ。彼は話すのだった。
「それはありません」
「処刑はされないというのですか?」
「我等の命は保障されるのですか」
「ですから。朝になれば大公が摂政に就かれます」
 ホルンシュタインが言うのはこのことだった。
 
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