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永遠の謎

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626部分:第三十六話 大きな薪を積み上げその三


第三十六話 大きな薪を積み上げその三

「だからこそバイエルンに人を送る。そしてだ」
「そして?」
「そしてだといいますと」
「あの方にお伝えしてくれ。あの方はそうはされないと思うが」
 だがそれでもだというのだった。
「だが、だ」
「何をされるのですか、一体」
「どうされるのですか?」
「助言させてもらおう。ミュンヘンに赴かれ」
 そうしてどうするかというのである。
「臣民と軍にお姿を見せるべきだと」
「そうすれば解決する」
「だからこそですか」
「それで済むことなのだ。本来はだ」
 しかしそれはだった。王にとっては。
「あの方には到底できないことなのだがな」
「あの方の人間嫌い故」
「それ故にですか」
「あの方にとって最早ミュンヘンは都ではないのだ」
 王の国のだ。それではないというのだ。
「おぞましい醜悪な町になり果てているのだ」
「だからこそそれはできない」
「どうしてもですか」
「それが問題なのですね」
「あの方をミュンヘンに案内できてもお連れすることはできない」
 それはどうしてもだった。
「だからこそだ」
「その最も簡単な解決策はできない」
「そうなりますか」
「その通りだ。できないのだ」
 残念な顔でだ。ビスマルクは述べた。
「だからこそだ。バイエルンに人を送ろう」
「わかりました。それではです」
「そのうえであの方をお助けしましょう」
「さもなければドイツは素晴らしい財産を失う」
 王をこう言ってなのだった。
「そして私はやはり」
「閣下御自身もですか」
「あの方を」
「敬愛している。心からな」
 立場は確かに違う。しかしそれでもその感情は健在だった。
 そうしてだった。その想いのままだ。ビスマルクも王を救おうとしていた。
 ミュンヘンではいよいよだ。王の退位のことが現実のものになろうとしていた。
 宮廷ではだ。ホルンシュタインが要人達に述べていた。
 その隣には白い髭に覆われた顔に丸眼鏡の老人がいた。気難しい顔をしていて髪の毛はほぼ残っていない。白衣が実に目立つ。
 その彼を手で指し示してだ。彼は言うのである。
「こちらの方がです」
「ドクトル=グッデン氏ですか」
「精神医学の権威である」
「そうです。オットー様の主治医でもあられます」
 その彼を紹介するのだった。
「そして陛下の診察もして頂けます」
「ではその方に陛下を診察してもらい」
「そのうえで」
「はい、陛下のお心のことがはっきりします」
 そう理由を作るというのだ。
「そうしますので」
「お話は聞いています」
 その医師グッデンもだ。重い声で言ってきた。
「バイエルンはこのままではですね」
「そうです。財政が破綻してです」
「どうなるかわかりません」
「私は医師です」
 こう前置きしてだ。彼は言うのだった。
 
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