老ガンマンへの心遣い
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第二章
佐藤はそのティーボーンステーキを食べて妹に言った。
「おい、この店のステーキな」
「ええな」
妹も食べつつ兄に応えた。
「ええ焼き加減でな」
「それでソースもええし」
「お肉は普通の質みたいやけど」
「美味いな」
「ほんまにな」
実際にというのだ。
「これはもう一枚ええな」
「食えるだけ食うか」
「そしてな」
「その後でパンを食べて」
「デザートも食べるか」
「そうしよか、後な」
それにと言うのだった。
「酒もな」
「飲むか」
「ワインや」
佐藤は笑ってグラスの中の赤ワインを見て述べた。
「これも飲むか」
「ステーキにはワインや」
「そや、それも赤や」
このワインがいいというのだ。
「これも飲んでな」
「そしてな」
「心の底から楽しもうな」
「そうしよな」
兄妹で話してだ、そしてだった。
二人はステーキのお代わりを注文した、二人共四枚食べてそれからパンとデザートのアイスクリームを食べた。ワインはボトル二本ずつ空けていた、
それで二人共店を出ようとしたがカウンターでカウボーイの格好をした蛇人の老人がこんなことを言っているのを見た。
「わしは決めたのだ」
「やれやれ、またかい?」
カウンターの中の初老の亀人が呆れた顔で応えていた、着ている服は蝶ネクタイにベストというものだ。
「爺さん決めたのかい」
「うむ、あの山のドラゴンが復活したな」
「!?」
兄妹は老人のその言葉に目を止めた、そのうえで話を聞くことにした。だが老人は二人に気付かず言い続けていた。
「わしは最後の最後にな」
「ドラゴンをかい」
「自慢の銃で倒す、何しろわしはじゃ」
「ああ、ずっとこの辺りで一番の銃の使い手だったな」
「そうじゃ、わしはものごころ着いた時からじゃ」
まさにという口調での言葉だった。
「銃を手にして馬に乗ってじゃ」
「悪者達が来てもな」
「退けてきた、カウボーイとしてな」
「そしてガンマンでもあってだよな」
「保安官もやっておったじゃろ」
このことも言うのだった。
「その時もじゃ」
「このハリウッドの治安も護ってたな」
「その自負がある、それでじゃ」
「ドラゴンもかい」
「倒してみせよう、今から行ってな」
「その噂は俺も聞いてるぜ」
亀人は老カウボーイにこう返した。
「けれど二千年前の話でな」
「ドラゴンは一万年以上平気で生きるぞ」
「そうだが噂だからな」
それ故にというのだ。
「本当にいるかね」
「おる、わしにはわかる」
老人は強い声で言い切った。
「だから今からじゃ」
「山に行ってかい」
「退治してくるわ」
「せめて噂を確かめる位すべきじゃないかい?」
「わしにはわかる、だから行って来る。それで共にドラゴンを倒す仲間も探す」
こう言ってだ、老人はバーボンをあおった、佐藤兄妹はそんな老人を見ていたが彼がバーボンをあおったところで二人で話した。
「ドラゴン復活したんか?」
「噂ちゃうか?」
香菜は兄にどうかという顔で応えた。
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