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輪入道

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第二章

「福井じゃ禁句だから」
「そうなの」
「あれでしょ、お城の近くに行列で出る」
「騎馬武者のね」
「それ本当に洒落になってない話だから」
「そんなになの?」
「見た人が死ぬっていう位にね」 
 マリンはお握りを食べる手も止めてリィナに話した、今新幹線はどんどん西に向かっている最中だ。
「怖いから」
「それは本当に洒落になってないわね」
「だからね、言わないでね」
「ええ、わかったわ」
 リィナも顔を少し青くさせてマリンの言葉に頷いた。
「そういうことなら」
「ええ、それでね」
「出るのは」
「ヤクザ屋さんでも幽霊でもないわよ」
「じゃあ妖怪?」
 リィナは今度はこの存在を話に出した。
「それ?」
「そう、何でも夜の十二時にラジオ局の前に出るらしいのよ」
「そうなの」
「一月十日で住み切った満月の日に」
「って今日じゃない」
 リィナはマリンにすぐに言い返した。
「来月は十日えびすで織田作之助さんの命日じゃない」
「織田作之助さんに関係あるかどうか知らないけれど」
 同じ大阪の作家でもというのだ。
「それでもね」
「出るの」
「十二時に満月だったらね」
「結構レアな出現度ね」
「ちなみにね」
 マリンはスマホを出して今日の大阪の夜の天気をチェックして言った。
「今夜快晴でお月様もね」
「満月なのね」
「まさにね」
「ドンピシャね」
「完璧な位にね」
「じゃあ夜の十二時にはね」
 それならとだ、リィナはマリンに述べた。
「ラジオ局の前に出ないことね」
「そうね、その前に帰ることね」
「収録夜だけれど」
「九時からだからね」
「最悪でも十一時半までには終わらせて」
「早く帰りましょう」
「そうした方がいいわね」
 二人で話した、そしてだった。
 リィナは少し考えてからマリンに尋ねた。
「それはいいとして」
「どうしたの?」
「まあ妖怪はリイナ達高校から八条学園だから」
「世界一妖怪や幽霊が出る学園だからね」
「まあいいとして」
「それでもっていうのね」
「問題はどんな妖怪か、だから」
「それよ。悪い妖怪だと」
 マリンもこう答えた。
「怖いから」
「それでよね」
「ええ、だからね」
 それでというのだ。
「気をつけないとって言ったのよね、リィナちゃんも」
「そうだけれど。どんな外見の妖怪なのよ」
 妖怪といっても色々だ、リィナが今言うのはこのことだった。
「ろくろ首とかから傘だったら別にね」
「驚かしてくるだけでね」
「怖くないわよ」
 こうマリンに言うのだった。
「一つ目小僧とかも」
「そうよね、逆に一本だたらとか牛鬼とかね」
「そんなのだったら冗談抜きで危ないわよ」
「実は私も出るって聞いただけで」
「具体的にはなのね」
「知らないの」
 そうだというのだ。 
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