永遠の謎
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51部分:第四話 遠くから来たその四
第四話 遠くから来たその四
「それこそがな」
「そして二十歳の時に最初のオペラを書いています」
「妖精という作品です」
「これは楽譜も脚本もあります」
このことも王に話される。
「それはですが」
「陛下も確か」
「うむ、観ている」
上演させたのだ。彼自身がだ。
「だが、だ」
「だがですか」
「違いますか」
「今のワーグナーではないな」
こう言うのであった。
「どうもな」
「左様ですか」
「そこまで違いますか」
「そしてその次の作品もだな」
王から話を進めた。
「恋愛禁制だったな」
「あれはシェークスピアでしたか」
「尺には尺でしたね」
「あの作品をオペラにしたのですね」
「脚本は彼が書いた」
また言う王だった。
「彼は脚本は全て自分で書くからな」
「そうした作曲家もいないですが」
「他には」
「彼は舞台の全てを手がける」
それこそがワーグナーだというのである。
「演出も全てだ」
「ううむ、多才なのでしょうか」
「そうした人物なのですか」
「少なくとも作曲だけではない」
それに止まらない。ワーグナーはそうだというのである。
「そうしたことにもだ」
「才能を発揮しているのですね」
「それで恋愛禁制もですか」
「まだ彼らしさを発揮していないがな」
恋愛禁制でもまだだというのである。ワーグナーらしくはないとだ。
「それはな。だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「次だ」
王は今度はこう言ったのだった。
「次の作品だ」
「リエンツィですか」
「あれですね」
「あれは大成功でしたね」
「ワーグナーにとっては最初の」
「そうだ、あれは成功した」
実際にそうだとだ。彼は話すのであった。
「あの序曲もいい」
「あれは私も聴きました」
「私もです」
「何度か聴きました」
そのオペラの序曲はというのだ。周りの物達は話していく。
「何か聴いていると気が昂ぶります」
「えも言われぬ高揚感を感じます」
「あれはいい曲ですね」
「そうだ、そしてタイトルロールのリエンツィ」
主人公の話もするのだった。そのオペラの主人公である。
「あれこそがワーグナーなのだ」
「あれがですか」
「あれがワーグナーですね」
「あの主人公がなのですね」
「そうだ、私は思う」
王の言葉もまた高揚の中にあった。そうしてその中で語るのだった。ワーグナーとは何か、静かな高揚の中で語っていくのだった。
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