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永遠の謎

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492部分:第二十九話 人も羨む剣その十四


第二十九話 人も羨む剣その十四

「上演をだ」
「そうなのですか、上演を」
「待ちきれなかったのですか」
「そうだ。ワーグナーは反対した」
 歌劇の親であるだ。彼はだというのだ。
「どうしてもだ」
「そうですか。反対ですか」
「あの方は」
「そうだ。反対した」 
 そのことについてもだ。王は話していく。
「どうしても従えないと言ったのだ」
「その理由は一体」
「陛下に反対された理由は」
 彼の庇護者である王に対して反対する理由、それを聞かずにはいられなかった。
 庇護者に反対することはだ。それだけのものが必要だ。ではそれは何なのかをだ。誰もが聞かずにはいられなかったのである。
 それでだ。彼等は王に問うたのだった。
「完璧ではないそうだ」
「完璧ではない」
「作品の上演に関してですか」
「それがなってはいないから」
「反対していたのですか」
「今もしている」
 話はだ。過去形ではなかった。
 現在形であるとだ。王は言いだった。
「だからだ」
「そうだからですか。あの方は」
「完璧主義者であるからですか」
「上演に反対されているのですか」
「状況が整わないだけでなくだ」
 まだあった。完璧主義者のワーグナーが反対する理由は。
「指輪の四部作全てが完成してからだというのだ」
「その上演はですか」
「ワルキューレの」
「そう言ってだ。反対し続けている」
 しかしだ。王はというとなのだ。
 待ちきれずにだ。遂にだった。
「私はだからこそだ」
「上演されるのですね」
「あの作品を」
「観たい」
 一言だった。今は。
「是非共な」
「しかしワーグナー氏とのことは」
「どうされますか、一体」
「あの方のことは」
 だが、だった。王の強い言葉を聞いてもだ。
 彼等は顔を曇らせる。そのうえで王に問うたのだった。
「ワーグナー氏があくまで反対されているのなら」
「そのことは」
「わかっている。しかしだ」
 それでもだとだ。王は言ってだった。
 ワルキューレをだ。あくまだと言うのであった。
「私は観たいのだ」
「そのワルキューレを」
「何があろうとも」
「上演権を持っているのは私だ」
 このことが大きかった。王はそれを持っているのだ。
 だからこそだ。それを出してだ。王は上演させるのだ。
 それを出してであった。何としても上演させ観るつもりなのだ。例えそれがだ。ワーグナーとの抜き差しならぬ状況になろうともだ。
 それでだ。王は言っていく。
「その時もまた楽しみにしている」
「ワルキューレを観ることを」
「それを」
「また一つ憂いが来る」
 現実を見ての。そうしての言葉だった。
「戦争がはじまるのだから」
 こう言ってだった。王は。
 城の話も最後は憂いで締めてしまった。それからだ。
 ホルニヒとも別れ休ませたうえで夜に紅いワインを飲んだ。部屋のバルコニーからは白い月が見える。その光がワインも王も照らしている。微かに風が入り絹の薄いカーテンを揺らしている。
 その中で王は一人だった。しかしだ。
 その一人である筈の王がだ。言うのだった。
 
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