八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十七話 鉄仮面その四
「スペインだったでしょうか」
「あの国と戦っていた様な」
「うん、当時フランスとスペインは仲悪かったから」
文字通り犬猿の仲だった。
「相手はハプスブルク家だったから」
「あのオーストリアの」
「皇帝のお家でしたね」
「うん、オーストリアというか当時は神聖ローマ帝国の皇帝で」
しかもだった。
「スペイン王もね」
「ハプスブルク家で」
「その関係で」
「フランスはブルボン家で」
三銃士の頃はそうだった。
「ハプスブルク家とは長年争ってきていて」
「フランスとスペインも仲が悪かった」
「そうでしたね」
「だから三銃士ではハプスブルク家は敵だよ」
言うまでもなくフランスにいるダルタニャン達にとってもだ。
「それも不倶戴天のね」
「そうなのね」
「それで戦っていましたのね」
「そうなんだ、三十年戦争だって」
完全にダルタニャン物語の時代だ。
「ブルボン家とハプスブルク家の戦いで」
「宗教戦争が」
「そうなっていましたね」
「授業で先生もそう言ってたし」
「宗教戦争でもあり国家間戦争でもあったと」
「うん、この辺りかなり難しいけれどね」
宗教での戦争か国益を賭けた戦争か、神聖ローマ帝国内の内戦かどうかという複雑な事情が幾つも錯綜していた。
「フランスはね」
「国家としてね」
「あの戦争に参加していますね」
「それを決めたのがリシュリューなんだ」
まさにこの人だ。
「三銃士じゃ敵だけれど」
「というか悪人じゃないの?」
美沙さんはリシュリューについてこう言った。
「あの人」
「作品ではそうだよね」
「ダルタニャン達の敵よね」
「ライバル親衛隊の直属の上司だしね」
「親衛隊はあの人達の兵隊さんよね」
「そうだよ」
三銃士の中ではそうなっているし実際にリシュリューは国王の銃士隊とは別にこの軍隊を率いていた。
「その関係でね」
「主人公達の敵のボスよね」
「ボスもボスだよ」
それこそだ。
「大ボスだよ」
「そうよね、けれどなの」
「フランス内部でもいがみ合いがあったけれど」
「それと国家間の争いもあったのね」
「そうだったんだ」
「複雑ね」
「しかもハプスブルク家はカトリックだけれど」
それもカトリックの守護者とまで言われていた、神聖ローマ帝国はカトリックを守護するローマ皇帝とされていたからだ。その皇帝を出すハプスブルク家がカトリックでなくては何にもならないことだったのだ。
「リシュリューもカトリックで」
「同じ宗派よね」
「ブルボン家もカトリックだから」
「カトリック同士でもなのね」
「国益の関係でね」
フランスと神聖ローマ帝国、スペインとのそれだ。
「リシュリューは三十年戦争に参戦を決めてね」
「スペインとも戦った」
「そうですのね」
「そうした意味ではダルタニャン達の味方だよ」
「敵であり味方」
「そうですか」
「リシュリュ―自身はルイ十三世に悪意はなかったし」
このことは事実だ、ブルボン王家ひいてはフランスの為に働いた人だ。
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