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永遠の謎

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484部分:第二十九話 人も羨む剣その六


第二十九話 人も羨む剣その六

「いや、違うか」
「違う?」
「違うといいますと」
「あの方は純潔だ」
 それならばだというのだ。
「純潔な方ならばだ」
「そういえば婚姻は破棄されましたね」
「だからこそですか」
「あの方は」
「天界とは別の世界に行かれるのではないのか」
 そうではないかというのだ。
「そう、聖杯」
「聖杯!?」
「あのアーサー王のですか」
「円卓の」
「そう、あの聖杯の城に行かれるのだろうか」
 王の行く場所はだ。そこではないかというのだ。
「その主として」
「聖杯といいますと」
「パーシバルでしょうか」
 この名前を出した者はだ。すぐに言い換えた。そのことに気付いてだ。
「失礼、パルジファルでしたね」
「ドイツの言葉で言えばな」
「はい、そうでした」
「そうだ。パルジファルだ」
 それだとだ。ビスマルクも言う。
「あのパルジファルではないだろうか」
「あの方はあの城の主なのですか」
「そうではないだろうか」
 ビスマルクは考えていく。王について。
「あの方はあの場所に行かれ」
「聖杯を守護されるのですか」
「ロンギヌスの槍も」
「思えばおかしな話なのだ」
 ビスマルクはこんなことも口にした。
「キリスト教の教えでは純潔でなければならない」
「はい、その生涯に渡ってです」
「そう言われていますね」
「しかし生み栄えよともある」
 モーゼの十戒にもあるだ。それだ。
「しかも同性愛を禁じている」
「その三つがそれぞれありますね」
「欲望に寛容な宗教ではない」
 本質的にそうなのだ。キリスト教は禁欲を強制する。これはユダヤ教から派生した宗教なので当然と言えば当然のことではある。
 しかしだ。それでもなのだ。
「純潔を。完全な純潔を維持することはだ」
「不可能に近いですね」
「それは」
「それこそ同性を愛するようにならなければならない」
 女に対しての純潔だからだ。そうなるのも当然だった。
「それは罪であり生み栄えることにもならない」
「しかし聖杯城に入るにはです」
「あくまで純潔でなければならないですから」
「ならばこの場合はだ」
 どうかというのだ。
「純潔を守るただ一つの方法は」
「それはあるのですか?」
「実際に」
「ある。心は女性である方だけができるのだ」
 そのだ。純潔を生涯に渡って守ることができるというのだ。
「そうした方だけがだ」
「そういえば閣下はバイエルン王の御心は女性だと仰っていますね」
「それも常に」
「そうだ。あの方は御身体は男性だが」
 それでもだ。心はだというのだ。
「御心は女性だから」
「だから男を愛されているのですか」
「御心がそうだからこそ」
「そうなのだろう。だから聖杯城にも行ける」
 そのだ。純潔な者しか辿り着けないその城にだ。
 
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