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真ソードアート・オンライン もう一つの英雄譚

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第一部
幕間の物語
  似た者同士

 
前書き
1日ズレてしまった……!すみませんでした!!(土下座)
あ、何のことか分からないと思うので説明します。
「ソードアート・オンラインー月夜の黒猫ー」とのコラボ小説の投稿は基本的に毎月2日更新で頑張ろうと思います。
本編はpixivの方が進んでおりますので、そちらが気になる方はpixivでお待ちしております。 

 
2年前、まだ俺たちがこのSAOがデスゲームだと宣言されてから1ヶ月程度しか過ぎていなかった日。俺たちはディアベル率いるレイドパーティに参加して初のレイドバトルに参加した。初のフロアボス戦。これを突破してゲームクリアへの一歩を歩もうとしたその時だった。

「ディアベルがスタンした!第二撃が来るぞ!」

リーダーのディアベルはフロアボス『イルファング・ザ・コボルドロード』の一撃によって大ダメージを負い、挙句スタン状態となって絶体絶命となった。
俺は思わず笑ってしまう。
今俺が陥っている状況にそっくりじゃないか。ディアベルもあの時はLAボーナスを求め、一人で単独行動に走って起きた。今回の俺もそうだ。アキトと逸れ、アキトを探すという口実を作って新たなフィールドを見て回っていた。興味に負けた結果がこれだ。

「クソ……俺はここまでなのか……ごめん、コハル……約束、守れなさそうだ…………」

俺はスタンゲージを睨み付けてから目を瞑った。その時だった。

ブワッ!!

俺の頭上から強い風が吹く。何ごとかと俺は瞑っていた目を開け、ボスの方を見る。そこにいたのは、

「アキト!」

アキトの《ヴォーパル・ストライク》がボスの胴体に直撃し、ボスはそのまま後ろによろけて倒れる。
スタンゲージが0になると、俺は《八極》を直ぐに切り、ストレージから《クラレット》を取り出す。

「アキト!」
「アヤト、無事で良かったよ」
「悪い、心配かけたよな」
「……!いや、無事ならそれで良いんだよ。それより、こいつを倒さないと外には出られないんだ。アヤトは下がってて」
「いや、アキト。俺も一緒に戦うぜ。アキトには助けてもらってばかりだからな。俺も一緒に戦いたいんだ」

俺はアキトを見つめる。アキトは少し困ったような顔をしたが、すぐに頷いてくれた。

「アヤト、このポーションを飲んだら来てくれ。協力するにしても今のアヤトのHPは危ないからね」
「悪い。助かる」

アキトから投げ渡された回復ポーションを一気に飲み込むと、アキトの元に走る。
俺が来たのが分かると、アキトは俺とスイッチ、俺は《ヴォーパル・ストライク》を使い、その勢いを使ってボスの目の前に躍り出る。

「もうさっきのようには行かないぜ」
「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎──────!!」

再び振り下ろされた剣もボスの股をスライディングで潜り抜け、臀部から上に向かって斬り上げる。ボスが振り向く前にソードスキル《ホリゾンタル・スクエア》を使ってボスをダウンさせる。
もう少しだ!

「スイッチ!」
「了解」

アキトが飛び込んでくると、アキトの剣が光始める。あの動きは《ホリゾンタル》か!ボスに強力な剣撃をお見舞いすると、今度はアキトの拳が光始める。

「なんだ!?」
「はあああ!」

俺はそれを知っていた。体術スキル《八極》を会得するために何度も使った体術スキル。

「《閃打》……!」

体術スキルの基本技の一つ。だが、体術スキルもソードスキル同様使った後の反動と硬直があるはずだ。なのに、

「これは……ユニークスキル……なのか?」

ユニークスキル。キリトの『二刀流』、ヒースクリフの『神聖剣』、そして俺の『無限槍』。その一つ一つの力が破格でフロアボスとも相対可能になる核兵器の様なエクストラスキルの俗称。

「アヤト!スイッチ!」
「お、おう!」

アキトの一言に我に帰る。ボスのHPは残り少ない。俺の使える中で最高の一撃で決める!

「これは……雪?」
「《ホーリィ・テンペスト》!!」

雪の様なエフェクトと共に繰り出された10連撃はボスの残りのHPを削り切り、『デトネイター・ザ・コボルドロード』はガラス片となって砕け散った。
俺はアキトの方を向き直すと、アキトの顔が浮かない事に気がついた。

「アキト?」
「あ……ううん。何でもない。それよりおめでとうアヤト。これで出られるよ」
「お、おお……。そうだな」

俺は特にアキトの事をツッコまずにボス部屋を出た。
部屋を出ると、アキトからここの場所について教えてもらった。ここはホロウエリア。
アインクラッドとは別の場所らしいが、何が何やら……。
それから俺たちはホロウエリアから出て76層の圏外を歩き回る。が、特に何といった成果も無く暗くなり、俺たちは《アークソフィア》に戻る事になった。
クライン達とも合流するも、クライン達も特に何見当たらなかったらしい。

「じゃあよ!せっかくだし、アヤトも一緒にエギルの店でみんなで飯食わないか?アスナさんの料理、ほっぺがマジで落ちそうになりぐらいうめーからよ!」
「……あ、ああ。じゃあ……」

俺はクラインに気押されながら頷く。
エギルも76層にいるのか。これまで自分が関わってきた人たちの殆どが76層にいるようだ。
エギルの店に着くと中に入った。内装は下層にいた時と雰囲気変わっていない。俺はここが似て非なる世界だと理解しながらも少し安らぎを覚えていた。

「いらっしゃい。ん?」
「あ……」
「ようエギル!コイツが例の下層から来たっていうアヤトだ。アヤト、このデカイのはエギルだ」
「よ、よろしく……あはは」
「よろしくな。俺はエギル。ここでアイテムの売買や鑑定をしている」
「俺はアヤト。ソロだ……」

知ってるプレイヤーに改めて自己紹介するのは何回やっても慣れないな……。
俺は若干引き攣った笑顔を浮かべていただろうに、エギルは気にせずに笑って椅子に座るように言ってくれた。
その後、アスナ、シリカ、リズベットと知ってるプレイヤーやリーファ、シノン、フィリアといった初めて会うプレイヤーもやってきた。
全員が集まった事で夕飯を食べ始める。俺は他の人とは少し離れて食べていた。アスナが作ったご飯は俺が食べたのと変わらない美味さだ。やはりアキトの言う通りココは別の世界なのか?

「アヤト」
「ん?ああ…….アキトか」
「クラインが探してたよ?……どうしたの?」
「いや、知ってる人が自分の事を知らないって言う状況なのがなんていうか……な」

俺は小さく笑ってみせる。アキトは俺の隣に座って俺の方を向く。

「何となく分かるな。俺も皆んなと会ったのは76層に着いてからだったし、それに最初は皆んなからしたらいい印象じゃなかっただろうしね」

アキトは自嘲気味に笑う。俺は水を少し飲むと、アキトの方に目を向けた。

「アキトは……その、あいつらとどうやって知り合ったんだ?」
「ああ……75層でキリトが死んで、ヒースクリフが居なくなってから攻略組のあれこれが気になってさ、アスナもフィールドボスにNPCの村を襲わせてその間に倒そうって言ってて──────」

俺はアキトのこれまでの出来事の話を静かに聞いていた。攻略組の士気の低下、アキトの不器用な鼓舞についても。今のアキトとは思いもよらないぐらいの態度に驚いた。

「でも今の俺は少し吹っ切れたんだよ。ホロウキリトとの戦いでずっと会いたかった人に会えたんだ」

アキトは目を瞑って上を向く。ずっと会いたかった人……か。

「なんだろうな……」
「何が?」
「実は俺、あんまり出会ったばかり人と話すの得意じゃないのにアヤトとは緊張とかしないんだ」
「そうなのか?」
「うん。クラインが言ってたアヤトとは何処と無く雰囲気が似ているからかな。……なんて」

アキトは少し照れくさそうに頬をかきながら俺に笑いかける。俺は少し驚いたが、アキトに微笑み返した。
俺は76層に来て初めて心の底からの笑顔だった。 
 

 
後書き
次回は来年更新予定!
 
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