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黒い機関員

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第四章

「おい、逃げるぞ」
「そうするんだな」
「ああ、俺は今すぐにな」
「ここから逃げてか」
「船の中を走ってな」
 そうしてというのだ。
「逃げる、そうする」
「そうか、じゃあ俺もな」
「御前も逃げるか」
「その前にやることがあるんだよ」
「やること?」
「ちょっとな、それをしに行ってからな」
 そうしてと言うのだった。
「船を出るからな」
「急げよ」
 シャインはアッシュに言った、そしてだった。
 彼は何処かへに向かいシャインもだった。彼は機関室を出るとすぐに走りだした。既に船内の状況はわかっていてだ。
 手にはシャベルがあった、そのシャベルでだ。
 時には傾いた船の中で身体を支え障害物をどける、そうしつつ駆けていき。
 助けてくれという声にもだ、こう言った。
「助かりたかったら自分で逃げろ」
「そんな!」
「自分では無理だ!」
「俺は自分で逃げて自分で助かる」
 そうするからだというのだ。
「あんた達もそうしろ」
「無理に決まってるだろ」
「もう船は沈むのよ」
「助けてくれたら金は幾らでも出すぞ」
「一晩相手をするわよ」
「金はもう稼いでいる」
 まずは金のことから言うシャインだった、言いながらも顔は前にあり駆けてシャベルを動かし続けている。
「女も港で娼館に入ればいい」
「じゃあ見捨てるのか!」
「あんた船員でしょ!」
「船員なら助けろ!」
「それが人の道でしょ!」
「だから助かりたいならだ」
 それならと言うのだった。
「自分で何とかしろ、黒人の手を借りずにな」
「くそっ、こうなったらだ」
「自分で何とかするわよ!」
「そうしろ、自分で何とかしないとな」
 そうする者でなければというのだ。
「神様も何とかしてくれるものか」
「おい、逃げるぞ!」
「安全な道を探して!」
「海に飛び込め!」
「そうして助かるのよ!」
 シャインの言葉を聞いた者達はそれならとなる者も多く出た、そうして彼等はそれぞれ彼の様に必死になってだった。
 自分達の手で助かろうと動いた、彼等は次々にまずは甲板まで向かった。
 甲板まで向かっているのはシャインも同じだった、彼は必死に走り続けシャベルで障害物をどけた。頭の中に船内のマップはあり迷わなかった。
 そして甲板まで出るとだった。
 一気に海に飛び込んだ、そのうえで沈みゆく船から脱出した。そのまま泳いでボートの一隻に向かったが。
 そのボートに乗ってからだ、海に飛び込んでいた者達にこれまで着ていた上着を脱ぎズボンだけになって言った。 
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