器が違う
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第二章
ソ連軍の数は圧倒的だった、そして戦車や装甲車の攻撃と火砲の攻撃がだ。
あまりにも多く凄まじくそれは日本軍の比ではなかった、それで金は安本に言った。
「これはだ」
「はい、数だけでなく」
「あそこまで戦車や砲が多いとな」
「こちらは今がやっとですね」
「何とか戦っているが」
敵に損害は与えている、空を見れば優勢に戦っている。だがそれでもだった。
優勢とは言い難くてだ、こう言うしかなかった。
「何とかだ」
「それに過ぎないですね」
「これはこちらも必死に攻撃を加えないとな」
「勝てない、いえ負けてしまいますね」
「そうなる」
こう言ってだ、金は前線に持って来られていた速射砲を使って必死に戦った。彼等の部隊も砲撃を受けて損害を出したが。
何とか戦い抜いた、それは最早衝突というよりかは戦争それも激戦だった。だがその衝突は停戦となってだった。
両軍は戦闘行為を終了し前線から退いた、だが金は日本軍の損害を聞きそしてソ連軍の戦車や装甲車、火砲の確認された数を駐屯地に戻る中で聞いて言った。
「多い多いとは思っていてな」
「実際に多いですね」
安本もこう言ってきた。
「実に」
「兵力自体がこちらの三倍でな」
「戦車や砲もかなり多く」
「しかも攻撃が凄かったな」
「味方の歩兵や戦車が突撃している中でその味方ごと砲撃してですからね」
「こちらを攻撃してきたしな、それにだ」
金は安本に彼が聞いた話をさらに話した。
「我々はそれは受けなかったが鉄条網等の罠がな」
「はい、色々仕掛けてあったみたいですね」
日本軍が攻勢を仕掛けた時にそれを置いていたのだ、それで日本軍の進撃を阻んだのである。
「どうやら」
「防御も上手か」
「数も多いだけでなく」
「そうだな、正直言って奴等は強いな」
「はい」
安本は苦い顔で語る彼に自分も苦い顔で応えた。
「これ以上はないまでに」
「全くだ、恐ろしい連中だった」
「だからこそこの戦闘のことは覚えておかないといけないですね」
「戦車や大砲を増やしていきたいな」
「航空機もいいですがね」
陸軍だけでなく海軍も熱心に開発、製造していてその有益さは誰もが当然金も安本も認めていてもというのだ。
「そちらも何とかしていきたいですね」
「ああ、速射砲は役に立ったしな」
金は是非にと言った。
「そちらも充実させていかないとな」
「勝てませんよ」
「本当にそうだな」
二人はノモンハンでの戦闘のことを苦い顔で話していた、彼等にとっては実に苦い経験だった。そうしてだった。
彼等は第二次世界大戦の間それぞれの戦線で戦い幸いにして生き残った、だが戦争が終わって朝鮮半島は独立してだった。
金は大韓民国陸軍の将校になった、しかし韓国軍は独立してからの混乱が建国後も続いている国の状況もあってだった。
極めて弱体で将兵の質も悪かった、高級士官に至っては汚職に明け暮れる有様だった。
金はその中で少佐としていたが自軍のあまりもの有様に呆れ果てていた、その中で軍務に就いていたがその中でだ。
一九五〇年六月二十五日に突如として朝鮮民主主義人民共和国人民軍が攻め込んで来た、人民軍は瞬く間に国境を突破し。
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