八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百八十五話 秋の二大イベントその十一
「興味ないの」
「嫌いなんだ」
「嫌いでもないけれど」
それでもという返事だった。
「これといってね」
「食べたいって思わないんだ」
「そりゃ私も食べたことあるけれど」
「美味しいって思わないんだ」
「香りもね。普通の茸とね」
それこそという口調でだ、僕に話した。
「変わらないでしょ」
「そんなポジションなんだね」
「私としてはね。あまりね」
「積極的に食べたいとはなんだ」
「思わないわ」
「松茸は高いしね」
「その高いものがあるとはね」
本当にと言うのだった、今も。
「思わないしね」
「昔は安かったそうですね」
小夜子さんがここでこう言ってきた。
「松茸は」
「そうなの?」
「はい、うどん屋さんで松茸うどんがあったりして」
「松茸が入ってるおうどんね」
「山菜うどんの様だったのかと」
「そんなのがあったの」
「とかく今より遥かにです」
これでも輸入ものが入る様になってかなり安くなったらしい、このことは牛肉と同じだと言えるだろうか。
「安かったとか」
「そうだったの」
「そう聞いたことがあります」
「松茸うどんね」
「召し上がられたいでしょうか、美沙さんも」
「いや、安いって言われても」
それでもとだ、美沙さんは小夜子さんに答えた。
「特にね」
「思われないですか」
「茸だとしめじとかエリンギの方が好きだし」
こういった茸達の方がというのだ。
「なめことかね」
「なめこ汁ですね」
「あとスーパーマリオの茸ね」
美沙さんはゲームの話もした。
「毒きのこ以外は食べたいわ」
「毒きのこは食べると死にますしね」
「だからあれは食べたくないけれど」
冗談を入れて話していた。
「それでもね」
「あのゲームの茸もですか」
「食べたいわね、あと茸の山」
今度はお菓子の話だった。
「これも好きよ」
「茸の山ですか」
「こちらもね」
「筍の里ではないのですか」
小夜子さんは美沙さんにかなり真剣な顔で問い返した。
「そちらでは」
「いや、私はね」
「そちらも茸派ですか」
「そうだけれど」
「そうですか」
ここで小夜子さんは微妙な顔になってこう言った。
「私はそちらについては」
「筍派なの」
「あちらの方がクッキーが美味しくて」
それでというのだ。
「そちらですが」
「そうなのね」
「何かこの違いは」
「どうしてもあるわよね」
「不思議なことに」
「いや、本当にね」
美沙さんは小夜子さんに真面目な顔で話した。
「私としてはね」
「そちらもですか」
「茸派なのよ」
そうだというのだ。
「どうしてもね」
「クッキーの違いでしょうか」
「それでなの」
このことは小夜子さんと同じだった。
ページ上へ戻る