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ダグラス君

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第四章

「この厚木の銅像の中に入ってだ」
「それで今ここにおられますか」
「普段はあの場所でじっとしているがな」
「銅像らしくですね」
「そうしているがだ」
 それがと言うのだった。
「時々、夜にだ」
「動かれてですか」
「この基地の各地を歩き訪問してだ」
「楽しんでおられるんですか」
「この基地では誰でも知っていることだ」
「そういえば」
 勝手はここで思い出した、この厚木に来る前に人事のお姉さんに言われたことを。
 それでだ、そのことを銅像に対して言った。
「面白い方がおられるって言われてました」
「それが私か」
「その時は何とも思いませんでしたが」
 それがと言うのだった。
「貴方のことでしたか」
「その様だな、私はこうして夜を中心に基地の中を歩き回ってな」
「楽しんでおられますか」
「そして基地に問題がないかチェックしパトロールもしている」
 ただ楽しむだけでなく、というのだ。
「そうもしている」
「それで今みたいにですか」
「君達自衛隊の諸君の勤務ぶりも見ている」
 事務所の中に入ったりしてというのだ。
「そうもしている、ただ隊舎の中には進んで入らない」
「プライベートまではですか」
「何かないと関わらない」
「そうされていますか」
「そうだ、しかし基地の中をな」
「夜を中心に歩いたりされて」
「楽しんでいる、映画館や図書館に行くこともある」
 人間だった時の日常も楽しんでいるというのだ。
「こちらは昼にな」
「そうだったんですね」
「全て厚木では誰でも知っていることだ」
 銅像が実は動き回ることが出来て日常を楽しんでいることはというのだ。
「君も今そのことを知ったのだ」
「何か嬉しい様な嬉しくない様な」
「よく驚かれるがな」
「当然ですよ、銅像が動くなんて」
 それこそとだ、勝手は自分に滔々と語る銅像に答えた。
「怪奇現象ですよ」
「よくそう言われる、しかし軍隊ではこうした話は付きものだな」
「アメリカ軍でもそうですよね」
「私のルーツはスコットランドにあるが」
 銅像は自分の生前のことも話した。
「スコットランドも幽霊や妖精の話が多い」
「マクベスの舞台でしたね」
「そうでもあるしな、尚この名前はケルト系の証だ」
 マッカーサーではなくマックアーサーという名前自体がというのだ。
「今私が使っている日本語ではアーサー家の息子という意味になる」
「マックが何とか家の息子になるんですね」
「そうだ、そしてスコトランドでもだ」
 この地域でもというのだ。
「そうした話が多くな」
「軍隊でもですね」
「多いな、自衛隊でもな」
「みたいですね、私防衛庁に入って間もないですが」 
 それでもと言うのだ。
「結構聞きます」
「基地でも艦艇でもな」
「大抵の基地にそうした話ありますね」
「そして私自身がだ」
「その怪奇現象ですか」
「まさか私自身がそれになるとは思わなかったがな」
「というかアメリカに帰られなかったんですか?」 
 勝手は銅像が元々はアメリカ人であることから彼に尋ねた。
「何で日本にいるんですか。フィリピンにも縁がありましたよね」
「あの国にもいたしな」
「そうでしたよね」
「そこは私にはわからない、気付けばだ」
 その時はというのだ。 
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