八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百八十四話 遠くなったものその九
「塹壕で雨や土を避ける為に」
「あのコートが出て来たのよね」
「はい」
その通りだというのだ。
「そうでした」
「あれもだしね」
「フロックコートもです」
お洒落なこのコートもだ。
「軍服ですから」
「何ていうか色々な服がそうよね」
「ですから何でもかんでも軍国主義と言いますと」
それこそというのだ。
「何も着られないです」
「そうよね」
「挙句には裸になるかも」
「そんなの冗談ポイよ」
裕子さんは腕を組んで難しい顔になって言った。
「それこそね」
「裸は恥ずかしいですね」
「恥ずかしいっていうか何なのよ」
裕子さんは腕を組んだまま言った。
「夏も冬もかえって面倒だし」
「夏は裸でいますと」
「汗も吸わないしね」
シャツを着ないとだ、生地が薄いにしても服もだ。
「余計に面倒だし」
「冬は論外ですね」
「裸族っているけれど」
英語ではヌーディストという、裸で暮らすのをよしとしている人達だ。
「ああした人達とは違うから」
「だからですね」
「ええ、裸はね」
本当にというのだ。
「主義じゃないから」
「だから裕子さんとしては」
「そうしたことはね」
どうしてもというのだ。
「出来ないわ」
「夏も服を着て」
「裸でいない、私夏でも自分のお部屋で下着にならないし」
僕の存在を忘れtえいるのか随分生々しい言葉だった。
「シャツと半ズボンはね」
「確かにいつも着られてますね」
「そうしてるから、そんな主張突き詰めていけばね」
「本当に裸になりますね」
「軍国主義だから詰襟やセーラーは駄目だと言うのなら」
そうしたことを言ってるとだ。
「まず学校の制服がなくなって」
「挙句には」
「そう、服自体もね」
「なくなりますね」
「けれどそうしたことを言う人達は」
「日本は駄目で北朝鮮はいいので」
どう考えても戦前の日本より遥かにそれも比較にならないまでに歪で奇怪な形状になっている国の方がだ。
「北朝鮮の服ならいいのでしょう」
「あの不細工な軍服ね」
「あれならいいのかと」
「あれ着る位なら」
裕子さんはお口をへの字にさせてまた言った。
「詰襟やセーラー服の方がずっといいでしょ」
「私もそう思います」
「あんな変な軍服着るより」
「海軍のセーラー服ですね」
「陸軍の詰襟よ」
僕も聞いて思った、本当にあの国の変な軍服よりは昔の日本軍の軍服の方がずっといいと思う。デザインにしても。
「そうよね」
「誰がどう見てもですね」
「あれがナチスの軍服ならね」
「まだいいですか」
「黒いあれね」
あの軍服もブレザータイプだ、とはいってもあの黒い軍服は次第にドイツ軍のジャーマングレーのものになっていった。
「あれの方がね」
「まだいいですか」
「如何にも悪ってイメージがあるけれど」
ナチスのイメージと合わさってだろうか、僕もそう思う。
ページ上へ戻る