戦国異伝供書
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第十九話 急ぎ足その十一
「命が危うい」
「そうした戦がしたいな」
「それが傾きと思っていますので」
それ故にというのだ。
「ですから」
「好きでないな」
「そうじゃな、しかしな」
「それでもですな」
「そうした戦ということでな」
「今は堪えて」
「和歌や漢詩を楽しめばよし」
慶次がそうしたことにも造詣が深いことを受けての言葉だ。
「それで突き進む時が来るかも知れぬしな」
「そうなるまで、ですな」
「待っておれ、しかし勝てばな」
戦にだ。
「お主も才蔵もじゃ」
「勝ちを祝っていいですか」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「酒も飲め」
「そうしていいですか」
「槍を出さずともいればいいだけという時もある」
「戦においては」
「だからじゃ」
それでというのだ。
「お主達も勝てばな」
「それを祝ってですな」
「酒と馳走も楽しめ」
例え戦の場で実際に槍を振るって敵を倒すことがなかってもというのだ、それでもだというのである。
「よいな」
「はい、それでは」
「その様にな、あとお主昨日は」
「弾正殿の茶を頂いていました」
「猿とそうしたな」
「いや、お話しますと」
茶を飲みつつとだ、慶次は信長に笑って話した。
「これが実にです」
「面白いか」
「そうした方です」
慶次から見た松永はそうだというのだ。
「悪いところはなく」
「そう思うのじゃな」
「それがしは。殆どの方があの御仁を色々言いますが」
「お主と猿はな」
「はい、特に」
これといってというのだ。
「悪いものは感じませぬので」
「付き合っておるな」
「それも親しいつもりです」
「お主は政はせぬが」
それでもとだ、信長はその慶次に話した。
「それでも頭はいい」
「不便者でもですか」
「だから政をせぬだけじゃ」
そちらには興味がなくそして知識もないのだ、学ぼうと思ってことも一度もなく当然経験もないのだ。
「それと頭のよさ、人を見る目は別じゃ」
「それがしに人を見る目はありますか」
「うむ、そして猿もな」
羽柴、彼もというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「わしもあ奴は嫌いではない」
「だからですな」
「金ヶ崎でも傍に置いていたのじゃ」
森達共にそうしたというのだ。
「ああした時こそじゃ」
「その本質が出ますな」
「わしの首を取ろうと思えば」
それこそというのだ。
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