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家までの道

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第一章

                家までの道
 念願のマイホーム、勝呂喜朗は遂にこの家を買った。契約の時不動産屋は彼に笑ってこう言った。
「駅までちょっと時間がかかりますが」
「バスで十分ですね」
「そこがネックということはです」
 契約のその時に見せの中で勝呂に言うのだった、大柄で四角く大きな顔にやや不釣り合いな小さな目を持つ彼に。髪の毛は短くしていて薄い唇の大きな口も印象的だ。
「お話しておきますね」
「あの、ですが」
 勝呂は業者が二人がそれぞれ座っているソファーの間に置いている卓の上に拡げられている契約するつもりの家の区割りとその家から最寄りの駅や国道までの道を描いたマップつまり地図を見つつ言った。家の区割りは二階建ての家自体も庭の面積も広く彼の家族、彼と妻そしてそれぞれ中学生、小学生の長男と次男、長女の三人が暮らすには充分だった。むしろこんな広くていい家が安く手に入ることに幸運さえ感じていた。
 だがここでバスで十分がネックと言われて勝呂は業者に尋ねた。
「普通じゃないんですか?それ位」
「それはそうですけれどね」
「何でまたそんなことを」
「いえ、最近のあのあたりの流れで」
 勝呂が買う家の地域のというのだ。
「バス自体が少ないんですよ」
「そんなにですか」
「はい、一時間に四本あれば多いですね」
「通勤通学時間で、ですか」
「皆車やらで通勤しますし駅まで自転車で行ったりして」
 それでというんどあ。
「もう、なんですよ」
「バスが少なくなっているんですか」
「住宅街ですが」
「人口多いんですよね」
「一万人はいますよ」 
 買う家がある地域はというのだ。
「大体」
「それだと一つの住宅街では多い方ですね」
「そうですね、ですが」
「皆車とかを使ってですか」
「バスで十分ですが」
 それでもというのだ。
「そのバス自体が少なくなっているんですよ」
「それが問題ですが」
「駅まで歩くと三十分位ですね、自転車だと十五分ですか」
 業者は勝呂に考える顔でバス以外の移動手段でかかる時間も話した。 
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