永遠の謎
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41部分:第三話 甘美な奇蹟その六
第三話 甘美な奇蹟その六
「素晴しい方だな」
「そうだな。何と美しい」
「背は高く姿勢がいい」
「すらりとしているな」
「目鼻立ちは繊細だ」
「まるで絵画だ」
「ここまで美しいとはな」
こう言ってなのだった。彼等はその王の姿に魅了されたのだった。
古代ギリシアの彫刻を思わせるその彼に誰もが魅了された。馬に乗る彼の姿はまさに絵画そのものだった。
その彼が王になるとだ。すぐにある問題が語られるのであった。
「プロイセンだな」
「あの国とどう付き合うかだ」
「今まさにドイツを席巻しようとしている」
「オーストリアと戦争になるか」
「このままいけばな」
誰もがプロイセンとオーストリアの衝突は近いと思っていた。
フランス皇帝ナポレオン三世は言うのだった。
「間違いなく戦争になる」
彼もまた両国の衝突を確信していた。それはどの国もだった。
「激しい戦争になる」
「ドイツの国の全てが巻き込まれる」
「当然バイエルンもだ」
「そうなるな」
「戦争は避けられるか?」
このことも話題になるのであった。戦争は確実と思われてもそこに希望を見出そうとする者は必ずいる。そうしたことをするのもまた人なのである。
「何とかして」
「どうだろうな。難しいだろう」
「やはり一度やり合うしかないだろうな」
「どちらも引かないしな」
そのオーストリアとプロイセンがというのであった。
「まずオーストリアは自分達も入れた大ドイツ主義だ」
「神聖ローマ帝国の再現だな」
この言葉が出た。かつてドイツを形成していた国だ。長い間、それこそ千年に渡って続いたが内実は諸侯の力が強く三十年戦争以降は有名無実化していた国である。ナポレオンにより完全に解体された国だ。
「それはまさにな」
「そうだな。神聖ローマ帝国皇帝はハプスブルク家だった」
「完全にそうなる」
「あの国の再現だ」
「それに対して」
もう一方の話もされるのであった。
「プロイセンは小ドイツ主義だ」
「オーストリアを除外したドイツだな」
「これはかつてのドイツか?」
「神聖ローマ帝国成立前の」
このドイツだというのであった。
「それでも南ドイツの諸侯の国家も抱き込んでいるな」
「あのバイエルンもな」
「バイエルンはどちらにしても入るな」
そしてなのだった。バイエルンのこの事情が注視された。
「それがどうなるかだな」
「どっちになっても得をするか」
「それとも損をするか」
「バイエルンはどうなるかだな」
「この辺りの舵取りはかなり厄介だ」
このこともまた話された。バイエルンの外交についてである。
「さて、あの若い王様はどうされるかな」
「外見だけじゃ駄目だからな」
「ああ、王としての資質はどうか」
「見物だな」
まだ即位前だというのにこんな話が出ていた。バイエルンを取り巻く状況は決して穏やかなものではなかった。不穏なものがあった。
それは太子も聞いていた。王になる直前でもだ。
「陛下、まずはプロイセンです」
「あの国とどうして付き合っていくかです」
「それが問題です」
周りの者達も口々にこう彼に言うのだった。
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