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永遠の謎

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407部分:第二十五話 花咲く命その二十三


第二十五話 花咲く命その二十三

 そのうえでだ。王はさらにだった。
「聖杯城にもあります」
「神に仕える騎士が集うというですね」
「あの伝説の城」
「ヴォルフラム=フォン=エッシェンバッハが歌った」
 実在のミンネジンガーだ。それと共にワーグナーのタンホイザーにも出て来る。ここでもまたワーグナーだった。
「あの城ですか」
「その城にも玉座がある」
「あの聖杯と共に」
「聖杯はこの世にあったのか」
 ゾフィーの言葉はここでは過去形だった。
「様々なことが言われていますね」
「はい、実にですね」
「よく言われていますね」
「昔から」
「この世になければ神が持っておられるのでしょう」
 神はここでは絶対だった。キリスト教の神だ。
「あの神が持っておられ」
「聖杯城の主が守護していますね」
「聖杯城の王パルジファル」
 この名前が出た。やはりヴォルフラムの歌に出て来る者だ。
「あの王がロンギヌスの槍を手に守護しておられる」
「そうなのですね」
「そのパルジファルの子がです」
 ゾフィーは見た。彼を。
「ローエングリンなのです」
「では次の聖杯城の王ですね」
「あの白銀の騎士は」
「そうです。そして」
 さらにだと。ゾフィーの話が動いた。
「あの方は」
「王はですか」
「陛下が」
「あの方は次の主でもあるのではないでしょうか」
 こう言うのである。王と聖杯城のことを考えながら。
「パルジファル、そしてローエングリンに続く」
「聖杯城の王」
「それになられる方ですか」
「そう考えてしまいます」
 どうしてもだ。そうなるというのだ。
「あの方はそうした方ではないでしょうか」
「この世の王、そしてあの世界の王になられる」
「そうした方なのですか」
「そう思われますか」
「考えてしまいます」
 まさにそうだというのだ。
「そして聖杯城の主はです」
「そういえば」
 ここでだ。彼等も気付いたのだった。
「あの城の王には妃がいませんね」
「どの王も」
「そうです。聖杯城の王は清らかな存在ですから」
 だからだというのだ。その王には。
「伴侶を必要としないのです」
「ではあの方もですか」
「御后は必要ない」
「そう言われるのですか」
「思われているのですね」
「私個人の考えです」
 しかしだ。それでも思うというのだ。
 こうした話をしてだ。彼女は王との婚姻について暗い考えを増していくのだった。そしてそれは止まらずにだ。さらに深くなっていた。


第二十五話   完


                     2011・7・14
 
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