八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十二話 港とヤクザその十
「そうですね」
「はい、実際にマフィアが幅を利かせています」
「本当だから怖いですね」
「イタリア南部の深刻な問題です」
「ナポリもカモラがあって」
「犯罪組織が社会の裏から何かと仕切っていますね」
「そうですよね」
最近この話をよくする、というか僕が聞く昔の日本以上にマフィアやカモラはイタリア南部に浸透している。
「有名ですよね」
「ですが歌劇の舞台であり景色は素晴らしいので」
だからだというのだ。
「行きたいです」
「そうですか」
「一度は」
「観光、そして芸術の学問の一環としてですね」
「行きたいです」
そうだというのだ。
「私は」
「そうですか」
「長崎は住みたい場所で」
「実際いい場所だしね」
長崎生まれの裕子さんの言葉だ。
「住みたいわよね」
「はい、とても」
「長崎市もいいし佐世保市もね」
「どちらもいい街ですね」
「そうなのよね」
裕子さんは故郷のことをにこにことして話した。
「食べものも美味しいし」
「カステラや長崎ちゃんぽんも」
「どれもね」
「長崎は蝶々夫人の舞台で」
「そちらはよね」
「住みたいです」
シチリアと違ってというのだ。
「そう思っています」
「ハウステンボスも幾らでも行けるし」
「長崎は本当に素敵ですね」
「昔は貧しかったらしいけれど」
「あっ、そうなのですか」
「ええ、耕作地が少なかったから」
そのせいでというのだ、昔は耕作地の広さとその地味がそのまま貧富に直結していた。鹿児島なんかはかなり苦しかった。
「だからね」
「貧しかったのですか」
「昔はね」
「そうだったのですね」
「けれど今はね」
「あの通りにですね」
「いい場所になったわよ」
長崎や佐世保の様な観光で栄えている街もあってだ。
「幸いね」
「いいことですね、本当に将来は」
「長崎に住みたいわよね」
「そう思います」
「長崎人気ありますね」
僕も聞いていてしみじみと思った。
「夏に八条荘で旅行に行きましたし」
「はい、素敵な旅でしたね」
「はい、それで」
僕は早百合さんに応えてさらに述べた。
「僕も好きですし」
「そうでしょ、あんないい街滅多にないわよ」
裕子さんも僕に笑顔で話してきた。
「だから住めたらね」
「是非ですね」
「住んでね」
そうして欲しいというのだ。
「本当にね」
「そうですね、ただ僕は」
「これからも神戸にいるの?」
「就職先によりますね」
将来はほぼ確実に八条家が経営している何処かの企業に入社してトヨタさんみたいに一番厄介な場所に入ってそこで現場で汗を流すことになっている。これが八条家の者の義務となっていてあの一族きってのはねっ返りと言われる親父も八条家の経営する病院に勤務していて現場で働き続けている。もっとも親父は椅子で座っているよりも手術の方がいいと言って今も現場に立ち続けているところが他の八条家の人と違う。
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