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戦国異伝供書

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第十八話 道を走りその八

「飯を炊くことをせずともよい」
「とにかく歩け」
「道をとはな」
「これは速いぞ」
「すぐに都まで着くぞ」
「足も速いしのう」 
 武具を漬けない分だ。
「武具は船で尾張まで運ぶという」
「では尾張まで歩くか」
「急いでな」
「とにかく休むか寝るかまでは歩く」
「そうしていくのじゃな」
 皆こう話しながら歩いていた、無論諸将もだ。
 武具を着けず馬に乗っていた、蒲生はここで山内に言った。
「これはです」
「普通に進むよりもな」
「ずっとです」
「速く進んでおるし」
「すぐに備中から備前に入りました」
「ならばな」
「都までもです」
 そこまでもというのだ。
「すぐに行けますぞ」
「そうであるな、しかし雨でもな」
「殿は進めと言われましたが」
「そこまでせねばな」
「危ういということでもありますな」
「急いで徳川殿のところに着き」
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「武田家と戦う」
「そうせねばならぬ」
「そうした状況ですな」
「今の我等はな」
「だから殿もですな」
「ここまで思い切ったことをされているな」
「武具はあえて船で運ばせ」
 海からだ。
「そしてです」
「我等は飯を炊くこともなくな」
「道中で用意させた飯を食い」
 握り飯だ、皆それを食べてすぐに出発している。
「そうしてです」
「進んでおる」
「飯を炊きますと」
「これが随分時間を食うからのう」
「三度の飯が。しかしです」
「その時間も歩けばな」
 それも武具を着けずにだ。
「かなり進める」
「左様です、まして飯も運んでいません」
「このことも大きいのう」
「飯を運びますと」
 本来は絶対にそうしなければならない、まさに腹が減ってはだ。
「これもです」
「重くてのう」
「運ぶ分軍勢の歩みが遅くなります」
「そうであるがな」
「それがです」
「ないからのう」
「これはすぐにです」 
 まさにというのだ。
「三河までです」
「すぐに行けるな」
「そしてそこで武具を着けて」
「戦になるな」
「まさに」
「これも殿のお考えじゃな」
 山内も唸って言った。
「いつも思うことであるが」
「お見事ですな」
「全くじゃ」
 こうも言うのだった。
「あの方は」
「あっと驚くことを考えられて」
「そしてそのお考えが」
「大きなことになる」
「何といいますか」
「殿のその頭絵の冴えがじゃ」
 それこそがというのだ。
「当家の一番の武器か」
「そうやも知れませぬな」
「左様であるな、ではな」
「我等はこのまま」
「東に進み」
「まずは三河まで」
「尾張で船から武具を受け取ってな」
 そうしてというのだ。 
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