八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百八十話 まさかのことその四
「これからどうされるかわかりませんが」
「そうですか、ただ」
「はい、何故お母様が今までわからなかったかですね」
「そのことですが。八条家なら」
世界的な企業グループの経営を担うこの家の力ならだ。
「もうそれこそ」
「一人の方の行方位は」
「まして日本は狭くて情報も高度化していて捜査能力も」
「警察等に頼みましても」
「すぐにわかるんじゃ」
こう思った、実際に。
「それでもでしたか」
「この世に万能の人や人が造った組織はありません」
これが畑中さんの返事だった。
「万能と思っても錯覚です」
「八条家でもですか」
「はい、日本には一万人の行方不明者がいます」
「一万人もいるんですか」
「そうです、その一万人の中にです」
まさにというのだ。
「お母様もおられ中々です」
「わからなかったんですか」
「例えばある方が一人暮らしということでお部屋に入られ」
「実は、ですか」
「もう一人の方が外に一切出られず住まれていては」
「誰にもわからないですね」
「お役所にもそう言えばいいのです」
一人暮らしだとだ、お役所にも出てというのだ。
「多少生活費が多くともです」
「無駄な出費があるとですか」
「周囲は思いません」
「それで人を隠すことも出来るんですね」
「そうです」
まさにというのだ。
「そうしたことも出来ますので」
「しかもそこで転々としていたら」
それこそだ。
「尻尾も掴めなくて」
「中々わからないですね」
「はい、そうですね」
「しかも八条家の力を使うにしても」
畑中さんは僕が言及したこのことについてもお話してくれた。
「止様はそれを使われる方でしょうか」
「違います」
言われてみればそうだ、親父は確かに八条家の人間でその影響は受けていて仕事もそちらの縁で就いている。けれど基本一匹狼だ。
「それは」
「左様ですね、ですから」
「八条家の力もですか」
「使われませんでした、総帥様はどうかと言われましたが」
「親父は断ったんですね」
「何度かありましたがその度に止様は笑われて」
この時の姿が目に浮かんだ、親父はそうした時は軽く笑って余裕を見せて断るのだ。
「そうしてです」
「断ってですね」
「自分の家のことだからと」
「自分一人で、ですか」
「そうです」
やると言ったというのだ。
「そのうえで長い間です」
「一人でお袋を探していたんですか」
「そうされていました」
「そうでしたか」
「はい、ですがご本家もです」
総帥さんもというのだ。
「密かにお母様を探しておられました」
「そうでしたか」
「はい、ですが」
「それでもですか」
「長い間わかっていませんでした」
総帥さんが探してくれてもというのだ、お袋の行方を。
「それでも」
「中々わからなかったんですね」
「そうでした」
「八条家の力を使ってもですか」
人脈、人材に資金に技術だ。そうしたあらゆる力を使ってもというのだ。世界屈指の企業グループのそれを。
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