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永遠の謎

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328部分:第二十一話 これが恐れその十八


第二十一話 これが恐れその十八

「外見や仕草に女性的なものはありません」
「それで何故男性的なものを感じないのですか?」
「それでは」
「それが不思議なのです」
 また言うのだった。
「おそらくその中にないのでしょう」
「あの方の中にですか」
「陛下の中に」
「そうなのでしょう。おそらくは」
 あまりはっきりしない口調で話したのだった。
「不思議ですが」
「エルザ姫はあの方の中にある」
「そうですか」
「あの方の外にではなくですか」
「あの方の中にこそ」
「あの方は鏡を見ておられるのでしょうか」
 リラはここでも考えながら話した。
「御自身を映し出す鏡を常にです」
「鏡を常に見ておられる」
「それで御自身の中のエルザ姫を見ておられる」
「そうだと」
「ワーグナー氏の舞台は」
 ひいてはだ。彼の芸術の話に至った。
「その音楽もですが」
「あの人の芸術が鏡?」
「そうなのですか?」
「あの方の中に最初からあったもの」
 王の中、即ち心だというのだ。
「それを映し出したものではないでしょうか」
「だからワーグナー氏の芸術を愛されていると」
「御自身の鏡だから」
「それだからこそ」
「確か」
 今度は王の話だった。彼についてのだ。
「あの方は幼い頃からドイツの古典を学ばれてきましたね」
「はい、その様ですね」
「中世の騎士物語や北欧神話」
「そして聖杯の伝説」
「そうしたものを親しまれてきたとか」
「そうしたものは全てワーグナー氏の芸術にあるものです」
 まさに全てだった。ワーグナーの芸術にあるものはその騎士や神話、伝説なのだ。その世界を芸術にした、それがワーグナーなのだ。
 そのことを話してだった。リラは思うのだった。
「あの方に愛されるもの。それは」
「それは」
「それはといいますと」
「果たしてこの世にあるのでしょうか」
 王のことをだ。気にかけている言葉だった。
「そうも思ってしまいます」
「ゾフィー様とは是非にと思うのですが」
「幸せにと思うのですが」
「それも果たして」
「私も思います」
 リラ自身もそうだと話す。そうだとだ。
「ですがそれでもです」
「それが不安になるのですね」
「あの方については」
「ゾフィー様については問題はありません」
 一方のだ。彼女についてはだというのだ。
「ですが陛下は」
「あの方についてはですか」
「どうしてもなのですか」
「不安を感じてしまう」
「そうなりますか」
「あの方は幸せにならなくてはならない方です」
 王への敬意はだ。確かだった。
 
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