煬帝
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第二章
「余はな」
「左様でしたか。非常に高貴な方とお見受けしましたが」
「それでだ、今から人相を見てもらいたいが」
「わかりました、それでは」
道士は頷きそうして立ち上がった、そこに楊広は自身も馬車から降りてそのうえで道士の前に出た。当然ながら周りは臣下や兵の者達に護られている。
道士はその中で自分の前に立った楊広の顔をまじまじと見た、その顔は端正でかつ堂々としており見事なものであった。そのよい顔を見てだ。
そうしてだ、道士は自身の顔を暗くさせて楊広に述べた。
「非常によい相です、政でも戦でも学問でも何かをされようと思えば」
「どうなる」
「大成されます、教えを信じても」
道教なり仏教なりをというのだ。
「それは非常に素晴らしいものになります」
「余はどの道を選んでもよいのか」
「はい、ただ」
「ただ。何だ」
「貴方様は気が大き過ぎる様です」
道士はその暗くさせた顔で楊広に話した。
「ですから今王の座にあられますね」
「晋王にな」
「そのお立場がよいかと」
「王のままでか」
「はい、それ以上のものを望まれますと」
その時はというのだ。
「その気故にご自身にとてつもない禍をもたらすかと」
「余自身にか」
「その様です」
「おかしなことを言う、余はどの道に進んでも大成し素晴らしいことを為すのだな」
「はい」
「しかしそれは今の座にあってこそか」
「それ以上のお立場になりますと」
道士はさらに話した。
「貴方様にも他の誰にも大きな禍となるかと」
「わからぬな、何をしても大成する余が今以上の座にいると禍となるか」
「そう人相に出ています」
「そうなのか」
「くれぐれもおお気をつけを」
「そなたの言っていることはわからぬ」
楊広は首を傾げさせてそのうえで道士に答えた。
「一切な。しかしよく人相を見てくれた。だからな」
「はい、何でしょうか」
「褒美をやろう。受け取るがいい」
楊広が手をぽんぽんと叩くと傍に控えていた者の一人がすっと前に出て道士に多くの銀子を出した、楊広はその銀子を指し示して道士に話した。
「これをな」
「失礼なことを申し上げましたが」
「ははは、余がどの様なことをしても大成すると言ったではないか」
「だからですか」
「言うことがわからぬところもあるがそれはよい」
今以上の座になれば自分にも他の者にも大きな禍となる、そのことがだ。
「だがな」
「それでもですか」
「よく占いそのことを教えてくれた」
「だからですか」
「遠慮なく受け取るがいい」
道士に鷹揚な笑みで話してそうしてだった。
楊広は道士に多くの銀子を渡してから宮中に帰った。それからも道士が言った禍について考えたがどうしてもわからず。
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