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永遠の謎

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306部分:第二十話 太陽に栄えあれその十八


第二十話 太陽に栄えあれその十八

「あの方にとってはそれがかえって災厄となるのだ」
「御心も御身体も美麗だというのにですか」
「そうではないというのですか」
「その二つが美麗であっても」
「あの方にとっては災厄なのですか」
「心と身体は複雑なものなのだ」
 ビスマルクは嘆きと共にまた述べた。
「確かに美麗は素晴しいことだ」
「ですね。それは確かに」
「人を惹き付けるものです」
「人が周りにいてくれるというのはそれだけでよいことです」
「しかし。それがあの方にとっての災厄になりますか」
「美麗が」
「あの方が完全な男性か」
 ビスマルクはまたしてもだ。性別から述べた。
「完全な女性ならばよかったのだ」
「御心も御身体もですね」
「そのどちらも」
「そうなのだ。あの方は御心は女性だが御身体は男性だ」
 まさに齟齬だ。王はこの二つが完全に分かれてしまっている。
 それでだとだ。ビスマルクは話す。
「それだけでも厄介だというのに。美麗であれば」
「余計に問題がありますか」
「そこがなのですね」
「美麗であればある程」
「真に神は残酷だ」
 ビスマルクはまたしても嘆息して述べた。
「ヤーゴの如く残酷だ」
「シェークスピアのあの劇のですね」
「オセローの」
 その戯曲に出て来る悪人だ。嫉妬や偏見によりその心を歪ませ悪魔の如き陰謀を巡らせていく男だ。シェークスピアの作品においても屈指の悪人とされている。
「あそこまで残酷ですか」
「神は」
「少なくとも無限の慈悲を下さる存在ではないのではないか」
 ビスマルクはこうまで言った。
「そう思う時がある」
「とりわけあの方を見て」
「そのうえで」
「王として素晴しい資質を持たれながらも」
 今度はだ。このことを語るのだった。
「しかし玉座に座られるにはあまりにも繊細だ」
「それもまた不幸ですか」
「バイエルン王にとっては」
「そうだ。女性のその繊細さもあまりにも際立っておられる」
 そしてなのだった。女性の持つもう一つの資質についてもビスマルクは言及した。
「しかも女性の持つ強かさ。それは」
「それは?」
「それはといいますと」
「子を産むことで備わる資質だが」
 女性のその強さはだ。そうしたものだというのだ。
「あの方はそれは決して持てない」
「子を産めないからですね」
「そもそも」
「御身体は男だ」
 またこのことがだ。語られるのだった。
「それでどうして子を産めるか」
「男は産ませるもの」
「だからですね」
「そうなのだ。あの方は繊細であられるままだ」
 あくまでだ。そこから伸びはしないというのだ。
「強さを備えられることはない」
「繊細を護るそれを」
「備えられませんか」
「強さは鎧だ」
 それだというのだ。心における。
「だがあの方が着られるのは鎧ではなく。繊細という絹の衣だけなのだ」
「御身体が男性だからこそですね」
「そうなってしまうのですね」
「そうなのだ。あの方は王として相応しいが玉座に座られるには脆い」
 このこともだ。齟齬なのだった。
 
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