レーヴァティン
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第七十四話 マルセイユからその七
「お店出すだけやなくてな」
「店自体の取り込みも考えてるか」
「店主も従業員もそのままでな」
「店全体の取り込みか」
「丸ごとうちのもんにする」
美奈代は熱い声で語った。
「そうも考えてるわ」
「そうして勢力を拡大していくんやな」
「そや、ほんまにこの世界最大の商人になったるわ」
「そうなる為には世界も救わないとな」
「そやな、市場は広ければ広いだけええ」
美奈代は商売の話をさらにした。
「この島だけやと限界がある、そやからな」
「世界も救ってか」
「世界にも市場拡大していくで」
「それじゃあ世界を救うのは金儲けの為?」
清音は美奈代のその言葉を聞いてどうかという顔で突っ込みを入れた。
「あんたの場合は」
「いや、当然ちゃうで」
「今のお話聞いてるとそう思えたけれど」
「それがちゃうんや」
「違うの」
「そら儲けたいっていう気持ちは真実や」
美奈代はこの感情自体は否定しなかった。
「それはある、けどうちも困ってる人は放っておいたらあかん」
「そう考えてはいるの」
「お母ちゃんにいつも言われてる」
まさにというのだ。
「人を助けて我が身助かるっていうやろ」
「何処かで聞いた言葉ね」
「自分も儲ける前に」
「まずは人助けなのね」
「商売は人情第一やってな」
「お母さんに言われたの」
「そや、今も言われてる」
その母にというのだ。
「お母ちゃんホルモン屋さんやけどな」
「ホルモン屋さんなの」
「家でやってるんや、当然お父ちゃんと二人でやってるわ」
家族で経営をしているというのだ。
「それでその中でや」
「商売は人情」
「人の為に動くことを忘れるなってや」
「いつも言われてるのね」
「そう言われてて」
「うちもその通りやって思ってな」
それでと言うのだった、美奈代も。
「この世界で商売に励んでるんや」
「そうなのね」
「商売でほんまに大事なんはな」
「人情なのね」
「そやからこの世界救うことは第一って考えてるわ」
その様にというのだ。
「それでその後でな」
「商売なのね」
「そう考えてるねん。大体人がおらんで商売出来んし」
美奈代はさらに言った。
「人情も信頼もない何処ぞの国の野党の女性議員みたいなのがやっとる店に行きたいか」
「その議員何人も候補いるだろ」
今度は正が突っ込みを入れた。
「そもそも」
「大阪にもおるし東京にもおるわ」
「選挙区はな」
「ああした連中は大抵品揃えもサービスも出来ん」
「まあ商売出来る風には見えないな」
「そんな連中やからや」
それでというのだ。
「うちとしてもや」
「店やってたらお断りか」
「ああした連中の店と関わったらな」
それこそとだ、美奈代は真顔で言い切った。
「何があるかわからん」
「平気で悪事を押し付けそうだな」
「そうしてくるかも知れんからや」
「関わらないことか」
「悪人の周りには悪人が集まる」
美奈代はこうも言った。
「類は友を呼ぶっていうやろ」
「碌でもない奴の友達は碌でもない奴か」
久志が美奈代に応えた。
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