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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百七十三話 涼しさその三

「汗をかいてそうして」
「一日を、ですね」
「はじめます」
「それじゃあ、ただ十一キロの木刀とか」
 僕は畑中さんの鍛錬のことにも思ってご本人に聞いた。
「よく振れますね」
「直新陰流の鍛錬用の」
「物凄い重さですよ」 
 十一キロなんてだ。
「それを千回二千回とか」
「最初は私もでした」
「振れませんでしたか」
「はい、はじめた頃は」
 剣道、それをだ。
「その時は」
「最初はですか」
「出来ませんでした、ですが徐々にです」
「木刀を重くしていかれたんですか」
「振る回数もです」
 それもというのだ。
「増やしていきまして」
「徐々にそうしていかれて」
「振れる様になりました」
 十一キロの木刀を千回二千回とだ。
「そうなりました」
「そうでしたか」
「まずは身体をその域にまで鍛え」
「そこからですか」
「はじめました」
 十一キロもの木刀を千回二千回それも毎日振ることをだ。
「急にではないです」
「急には無理ですか」
「身体が備わっていないので」
 体力や腕力、あと腹筋や背筋の力それに何といっても足腰がだ。それだけの重さの木刀を千回とか振ることを思うとだ。
「ですから」
「まずはですね」
「そこまで鍛えてからです」
「出来ることですか」
「そこからさらに振り続ければ」
「直新陰流免許皆伝もですか」
「至れました」
 畑中さんの様にだ。
「そうなった次第です」
「それで免許皆伝になられてもですね」
「今もです」
 極めた、そうされてからもというのだ。
「続けています」
「剣の道に終わりはないということですね」
「そうです、悟りもそうなのでしょう」
 仏教のそれもというのだ。
「悟りを開いてもまだ先があるといいます」
「悟って終わりじゃないんですね」
「解脱すれば仏になりますが」
「仏も修行をするんですね」
「弥勒菩薩がそうですね」
 あの五十六億七千万年後に全ての命を救うとされている仏だ、その慈悲の力はそこまで凄いという。
「あの仏もです」
「悟りを開いて仏になっても」
「今もです」
 まさに五十六億七千万年後に備えてだ、途方もない話だ。
「修行をしています」
「じゃあ悟りを開いても」
「はい、まだ道はありますし」
「剣術もですか」
「免許皆伝になろうとも」
「先があるんですね」
「ですから私は今もです」
 免許皆伝となりもう九十歳になられてもというのだ。
「修行を続けています」
「そうですか」
「死ぬまで」
「ずっとですか」
「続けていきます」
「あの十一キロの木刀を振ることも」
「毎朝」
 それこそ一日も欠かさずというのだ。 
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