レーヴァティン
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第七十四話 マルセイユからその三
「ちゃんと治める為にもな」
「最初から用意しておくか」
「それで優れた奴がいれば」
「そいつを入れていくか」
「そいつの相応しい部署にな」
そうすると言うのだった。
「そうしていくさ」
「いいことだな、まあこの時代の統治システムはな」
「はい、今の我々のものとは違うものになります」
順一が言ってきた。
「どうしても」
「俺達の世界とこっちの世界は全く違うからな」
「近代の統治システムでなく」
「もっと前か」
「バロックやロココの頃が一番いいでしょうか」
「欧州か」
「はい、貴族もいますし」
領主がそれだというのだ。
「キリスト教も存在していますし」
「他の宗教もあるけれどな」
「ですから」
それでとだ、良太は久志にさらに話した。
「こちらのものがです」
「いいんだな」
「日本の幕府や中国の王朝の様なシステムもありますが」
「そういうのはこの島には向かないか」
「統治システムもそれぞれの国に相応しいものがあります」
「それでか」
「はい、この島の文明や社会を考慮しますと」
それならというのだ。
「そちらの方がです」
「いいか」
「はい、ですから」
「十七世紀や十八世紀の欧州か」
「その頃の官僚制度で」
「国の統治システムを整えていくか」
「そうしましょう、ただ当時の官僚システムは」
順一はさらに話した。
「能力主義かといいますと」
「やっぱり貴族だからな」
「貴族の中でも家柄が影響していたので」
「そこが問題だよな」
「当時高度な教育を受けていた人は限られていました」
順一は久志にこの現実も話した。
「聖職者か貴族でした」
「教育には金がかかるからな」
「今もそうですね」
「ああ、日本でもつい最近になって多くの人が大学に行ける様になったな」
久志もこのことを指摘した。
「日本が豊かになってな」
「それからでした」
「そうだったよな」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「当時の欧州もこの島も」
「お金がないとな」
「まだ平民階級の富は少ないです」
「食えていてもな」
「食べられる位で教育も」
それもだった。
「読み書きが出来ても」
「それ止まりか」
「これだけでも非常に違います」
字が読めて書ける、これだけでもだ。人間はそれだけで実に多くの道が開けものを知ることが出来る様になるのだ。
「ですが統治の様な高度な話になりますと」
「そこまでの教育を受けないとな」
「出来るものではありません」
「人間知らないことは出来ないからな」
「モーツァルトも楽譜を知らなければ」
天才とは彼の為にあるとさえ言っていいこの偉大な音楽家もというのだ。
「その才能を発揮出来ないですね」
「まず楽譜知って書けたからな」
「彼は偉大な作曲家になったのです」
「そうだったよな」
「ですから政治を行うにも」
それにはと言うのだった。
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