八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百七十二話 ワーウルフの話その五
「あまりなりわね」
「そうでござるか」
「犬は出るわ」
狼を家畜にしたこの生きものはだ。
「あとイヌ科なら狐とか狸とか」
「ああ、あそこにいる」
マルヤムさんは少し先の方を見た、そこに狐や狸達がいるけれどどうも彼等は実は人を化かしたりするらしい。
「生きもの達でござるな」
「物凄くよく出るわ」
日本の童話にはだ。
「欧州の童話の狼みたいにね」
「そうでござるか」
「ただ、人を襲うことはないわ」
狐や狸、童話での彼等がだ。
「特にね、化かそうとして返り討ちに遭ってばかりよ」
「そうでござるか」
「案外抜けてるから」
「それで、でござるか」
「そうなの」
「ううむ、文化の違いでござるな」
「そうなるわね」
狼が悪者でないのも狐や狸がいつも人を化かそうとして逆に返り討ちに遭うこともだ。欧州と日本の違いだ。
「実際に」
「そうでござるな、しかし狼を見ていると」
マルヤムさんはその狼の話に戻してきた。
「惚れ惚れするでござるよ」
「恰好よくて」
「マレーシアにいないのが残念至極でござる」
こうまで言うマルヤムさんだった。
「全く以て」
「気候がそうだからね」
「仕方ないでござるな」
「このことを言っても」
「そうでござるな」
「けれど狼は」
「これまで以上に好きになったでござる」
笑顔でだ、マルヤムさんは友奈さんに話した。
「また見たいでござるよ」
「今日だけでなくて」
「熊もでござるが」
「この動物園は学生さん無料だから」
八条学園の学生さんならだ。
「何時でもね」
「来られるでござるな」
「そうよ」
友奈さんはマルヤムさんに答えた。
「だからね」
「熊も狼もでござるな」
「見られるわ」
見たいと思ったその時にというのだ。
「だからね」
「今日帰っても」
「また見られるから」
「わかったでござる、本当に熊や狼は」
マレーグマはいてもというのだ。
「恰好いいでござるよ」
「それじゃあね」
「また来るでござる」
マルヤムさんは確かな顔で友奈さんに答えた。
「是非」
「それではね」
「また今度でござるよ」
「これで帰るわね」
「そうさせてもらうでござる」
「じゃあ僕達もね」
僕はここで二人に言った、もうそろそろ動物園の閉園を知らせる音楽が鳴る時間だ、夕闇はどんどん深くなっていっている。
「八条荘に帰ろうね」
「そうするでござる」
マルヤムさんは僕にも応えてくれてそうしてだった。
僕達は三人で動物園を出て帰路についた、その時に友奈さんはこんなことを言った。
ページ上へ戻る