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戦国異伝供書

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第十三話 青と赤と黒とその十二

「それでじゃ」
「敵のその動きを見て」
「そしてじゃ」
 それでというのだ。
「かえって攻めぬ」
「門が全て開いている城なぞ有り得ぬ」
「必ず何か策があるとな」
 信玄は考えてというのだ。
「かえって攻めぬわ」
「そうして武田の軍勢を攻めさせず」
「かがり火まで多く焚いたとも聞いたが」
 戦に負けたその夜にだ。
「そのこともな」
「見事だとですか」
「うむ」
 まさにというのだ。
「戦に負けて散り散りになった兵達を入れる為にじゃ」
「灯りを灯されるとは」
「これも凄い、しかも城の門を開けたからのう」
「兵は入りやすいですな」
「余計によい、その肝と知恵流石竹千代じゃ」
 家康についてこうまで言うのだった。
「それならば必ず立ち上がる」
「そうしてですな」
「名を上げるわ、ではその竹千代をな」
「これよりですな」
「助けに行く、そしてじゃ」
 さらに言う信長だった。
「我等は飯も食うぞ」
「腹が減ってもですな」
「そうじゃ、たらふく食ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「そのうえでじゃ」
「力をつけて」
「そしてじゃ」
「戦でもですな」
「存分に戦うぞ」
「それでは拙者も」
「当然じゃ、たらふく食え」
 羽柴に笑って話した。
「飯はある、ただしな」
「ただしとは」
「お主は食が細い、だからな」
「そのことはですか」
「注意せよ、食が細くてはじゃ」
 それならというのだ。
「力も出ぬわ」
「だからですな」
「しこたま食え、権六の様にな」
「拙者ですか」
「そうじゃ」
 信長は柴田にも笑って話した。
「当然お主もじゃ」
「たらふく食いですな」
「戦で働くのじゃ」
「わかりました、それでは」
「うむ、ではな」
「たらふく食わせてもらいます」
「そうせよ、他の者達もじゃ」
 羽柴や柴田以外の者達もというのだ。
「存分に食うのじゃ」
「そして力をつけ」
「そうして戦の場でもですな」
「思う存分戦うのですな」
「その為の兵糧じゃ」
 多く持って来たそれだというのだ。
「無論足軽達もじゃ」
「皆ですな」
「たらふく食わせる」
「そうするのですな」
「全ての兵達にじゃ」
 軍勢の者全てにというのだ。
「たらふく食わせよ、これまで通りな」
「そしてこれからも」
「戦が終わるまでですな」
「常にたらふく食わせるのですな」
「さもなければ満足な戦は出来ん」
 満足な飯がなければというのだ。
「だからじゃ、よいな」
「それでは」
「これよりもです」
「全ての兵達にもです」
「たらふく食わせます」
「美味いものをな」
 ただたらふく食わせるだけでなくというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「それではです」
「軍勢のどの者にも美味いものをたらふく食わせ」
「力をつけさせておきます」
「その様にな、飯のことはな」
 信長はこのことを言うことも忘れていなかった、そしてだった。
 織田家の軍勢はいよいよ三河に入ろうとしていた、そのうえで武田家と本格的な戦に入るのだった。


第十三話   完


                 2018・8・9 
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