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戦国異伝供書

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第十三話 青と赤と黒とその九

「それでじゃ」
「ここはですか」
「武田を織田の領地に入れずな」
「そして徳川殿のご領地からも」
「押し出す」
 そうするというのだ。
「戦いそのうえでな」
「さすれば」
「皆の者よいな」
 信長は諸将にも言った。
「この度はじゃ」
「はい、何としてもですな」
「武田の軍勢を押し返し」
「当家の領地を守り」
「徳川殿のご領地も」
「守るぞ」
 こう言ってだった、信長は昼は兵を急いで進ませ夜は軍議を行った。明智がその軍議の場で信長に地図を見つつ話した。
「三河口においてです」
「戦にじゃな」
「なるかと」
「双方の進む方向と速さを見るとじゃな」
「はい」
 明智は信長に答えた。
「そうなってです」
「そしてじゃな」
「三河口での戦となり」
「どう戦うかじゃな」
「やはり鉄砲と長槍を使い」
「武田の騎馬隊をじゃな」
「退けるべきかと」
 こう言うのだった。
「この度は」
「やはりそうじゃな」
「我が軍勢は軍勢の数が多く」
 明智はまずこのことを述べた。
「そして鉄砲も長槍もです」
「実に多いな」
「特に長槍は多くの兵が持っています」
 織田家の軍勢の主力と言っていい、その驚くまでに長い槍は。
「それを多く突き出し」
「騎馬隊を止めるべきじゃな」
「そうして鉄砲も撃ち」
「近付けさせぬ」
「そうせねば」
「切り合い等になればな」
「我等は負けます」
 明智ははっきりと述べた。
「ですから陣を固め」
「鉄砲や長槍でな」
「武田の軍勢、特に騎馬隊を」
「近寄せてはならぬな」
「そうして戦いましょう」
「その通りじゃ、武田の騎馬隊は強く」
 そしてというのだ。
「それを率いる将達もな」
「二十四将も」
「強い、特にな」
「飯富殿と山県殿は」
「鬼の様だというな」
「徳川殿の軍勢もでしたな」
 ここで言ったのは佐久間盛政だった。
「総崩れになったとか」
「その三方ヶ原でな」
「そう聞いておりますし」
「お主もじゃ」
 信長はその盛政に強い声で忠告した。
「この度はな」
「迂闊にはですな」
「動くでない」
 彼がとかく前に出たがるのでこう注意したのだ。
「よいな」
「はい、承知しております」
「この度はそれをすればじゃ」
 まさに迂闊に攻めればというのだ。 
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