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永遠の謎

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216部分:第十五話 労いの言葉をその六


第十五話 労いの言葉をその六

「だが。プロイセンはオーストリアを必要としているのだ」
「必要としているのですか?」
「そうだ、ドイツ帝国を築く」
 それからだ。先があるというのだ。
「築いた後でだ。ドイツは一国では成り立たない」
「ドイツだけでは」
「それだけでは成り立たない。同盟国が必要なのだ」
「だからオーストリアがですか」
「必要だ。そして」
「そして?」
「他にも。国が必要だ」
 さらにだというのだ。
「イタリアもだな」
「今統一に向かっているあの国もですね」
「そのうえで一つになる必要があるのだ」
 こう話す。王は遠くを見ながら話すのだった。
「ドイツは統一してからが問題だ。それでだ」
「オーストリアに対しては」
「多くを要求しない」
 勝利してもだというのだ。
「そして」
「そして?」
「我が国もだ」
 そのだ。バイエルンもだというのである。
「我がバイエルンもだ」
「まさか今軍を動かされないのは」
「今バイエルンがしなければならないことは」
 それはだ。何かというのだ。王がこの戦争の前から考えてそして行っていることは何か。それを今はじめて話すのであった。
「まずはオーストリアに対して外交的な誠意を尽くすこと」
「まずはそれですか」
「体面とも言うが」
 ここで表情を暗くさせもした。
「それを見せることだ」
「左様ですか」
「そしてだ」
 さらにだった。もう一つのことも話した。
「プロイセンの属国になってしまうことだ」
「それもですか」
「そうだ。それもあってはならない」
 こう言うのであった。
「必ずだ」
「そうなのですか」
「そうだ、絶対にだ」
 王はだ。また言うのであった。
「その二つを同時に果たさなければならないのだ」
「難しい問題ですね」
「そうだ。だが」
「だが?」
「私はそれを果たさなければならない」
 義務だとだ。そうだというのだ。
「双方をだ」
「オーストリアとプロイセンに対して」
「確かに私はオーストリアが好きだ」
 個人的な。その感情も話す。
「しかし。プロイセンは強い」
「勝つというのですね」
「その場合バイエルンはどうあるべきか」
 話はそこに至った。彼の国についてだ。他ならぬ。
「それを考えればだ」
「軍を動かさないのですね」
「それしかないのだ。オーストリアにつきだ」
 そうしてだ。動かない。それが王の考えであった。そして実行していることだった。
「今の様にするのだ」
「そうだったのですか」
「わかっている者は。少ないがな」
 寂しい笑みでだ。今の言葉を出した。
「それをな」
「確かに。実は」
「そなたもだったか」
「申し訳ありません」
「いや、正直に言えばいい」
 それでいいとだ。王は微笑んで言葉を返したのだった。
「私は嘘は嫌いだ」
「左様ですか」
「嘘は。人の心を蝕む」
 嘘については。嫌悪ではなくだ。悲しみを見せる。だが今はそのことはこれで終わらせてである。王はさらに話をするのであった。
「それでだが」
「その戦争のことですね」
「そうだ。この戦争のことはわかっていた」
 そうだというのである。
「プロイセンが勝つのだ」
「短期にですね」
「しかしオーストリアは多くを失わない」
 それはないというのである。
 
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