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戦国異伝供書

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第十三話 青と赤と黒とその三

「左様ですか」
「そうであろうな、しかしこれでな」
「兄上のお茶好きはですね」
「これで納得がいった、酒が飲めぬだけではなかったか」
「そうなのです。しかし兄上がお酒が飲めないことは」
「最初は誰もが驚くのう」
 この話を聞いてだ。
「実際に」
「はい、私は最初からこのことを承知していたので」
 それでというのだ。
「驚くことはです」
「ないのう」
「ですが天下では」
「義兄上のそのことはな」
「意外とですね」
「思うな、わしもじゃ」
 長政にしてもだ、このことは。
「最初に盃を交わした時にな」
「お酒を一口程度だったので」
「それだけだったからな」
「驚かれましたね」
「よく飲まれると思っていた」 
 信長といえばというのだ。
「しかしそうではなくな」
「お酒はまさにほんの一口程で」
「甘いものがお好きじゃな」
「はい」
 それが信長だというのだ。
「ご幼少の時から」
「そうであるか」
「果物もお好きで」
「柿もか」
「はい、柿もです」
 この果物もというのだ。
「お好きでとかく甘いものは」
「お好きか」
「そうなのです」
「そういえば先日干し柿をお贈りしたが」
「返事の文を頂きましたね」
「かなり喜んでおられた」
 そう書かれていたというのだ。
「あれにはわしもじゃ」
「驚かれましたか」
「そこまでお喜びとはな」
「その様にです」
「義兄上はか」
「はい、とかく甘いものはお好きでして」
「そして酒はか」
「駄目なのです」
 下戸、そうだというのだ。
「どうしても」
「左様であるな、ではな」
「はい、殿もですね」
「義兄上にはこれからもな」
「機会があれば」
「甘いものをお贈りしよう」
 信長に気配りをしてというのだ。
「そうしようぞ」
「それがいいかと」
「許して頂いたうえに今も頼りにしてもらっているからな」
 それだけにというのだ。
「だからな」
「そのことに応えて」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「この度もな」
「戦われますね」
「いざという時はな」
 まさにと言ってだ、そのうえで。
 長政は小谷城の修繕を急がせるだけでなく多くの兵に兵糧、武具も入れていざという時に備えていた。そしてだった。
 信長は長政のそのことを聞いてだ、安心して言った。
「よし、これで後ろはじゃ」
「安心出来ますな」
「浅井殿がご健在なら」
「それならば」
「うむ、これ程有り難いことはない」
 信長は家臣達にも笑顔で話した。 
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