異世界転移した最強の俺、追放されたSSS級冒険者(美少女)を拾う
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プロローグ-2
どこからともなく現れた、謎の少女と少年。
死を待つのみといった窮地であった私の前に現れた彼らは、突然現れたことを考えると“転移魔法”を使ったのだろう。
“時空間”に干渉するその魔法は、特定の地点と地点を結ぶものが主で、それでもその能力者の数は非常に少なく、そして、こんな風に好き勝手に別の場所に行けるようなものではない……はずだった。
こう見えても死にかけているとはいえSSSランク冒険者の私であるために、周囲から気づかないうちにこちらに近寄られていた、ということはない。
だがこの危機的状況という異常事態に、更に、あり得ないような出来事が重なり私は思考停止をしていた。
もしかしたなら私は、死にかけていて何かおかしな弓をめているのかもしれないとも思った。
だって見知らぬ少女が、私を知っているようだったのだ。
でも私は彼女を知らない。
髪型だって服装だってすべて変えて、私は私だと気づかれないように装っていた。
だから気づかれるはずがないのに……などと考えている間に、目の前の少年が、
「ルーシー、援護よろしく」
「え~、私の出番があるの?」
「いや、俺が魔法を強く出力しすぎたら、そこの人を傷つけるだろう? というか治療の方もよろしく」
「は~い、うん、でもこれくらいの“魔王”なら私が倒せるような気がする!」
「じゃあルーシーが今回はやるか?」
「う~ん、魔王は影響が強そうだからやっぱりやめておく。というわけでよろしく」
「優柔不断だな。というわけで、俺の目的のために倒されてくれ。“光迅の槍”……威力は十倍で様子見だ」
そこで、特に呪文を唱えたわけでもなく、目の前のの少年が魔王に向かって手をかざし、それと同時に金色の光を放つ複雑な模様の書かれた魔法陣が空間に描かれる。
同時に私は気づく。
この魔法はかなりというか……とても高度な魔法だ。
以前有名な魔法使いがこれは特別な魔法だといって使い、人々に害をなす“風の竜”を倒しているのを見たことがある。
そう私が思い当たると同時に、閃光と轟音が響いた。
強い白い光が一直線に魔王を貫いた。
だがそれはすぐに収まって、後には魔王の城近くまで一直線に木々がなぎ倒されている。
そこに魔王の姿はなく……そして、遠くに見えている魔王の城がある字を失ったからだろう、砂のように光の粒となって崩れ落ちていく。
魔王を倒す前に宝物庫に向かって宝物を手に入れないと、魔王を倒した瞬間にそれらはこの世界の“魔力”となって周囲に散らばり、掻き消えてしまう。
私がいたパーティメンバーは今頃、城のすぐそば辺りまで来てこの光景を見ていることだろう。
真っ先に宝物庫がどうのと言っていたので、今頃は崩れ落ちている城を呆然と見ているのかもしれない。
いい気味だ、そう思っているとそこで少女が近づいてきて、
「はいは~い、治療をしますね。“癒しの光”~、魔力もついでに回復させちゃいましょう」
そう言って一瞬にして私の怪我から何から回復させてしまった。
魔法の使う能力も非常に高くて、この人は何者だろうと思う。
と、そこで先ほどの少年が緑色の石のようなものを手にしてこちらにやってきた。
「“魔王の核”だ。これでまた一つ作れるな」
「そうだね。でもなんであんな依頼を受けちゃったの? ユウスケは」
「その場のノリ?」
「う~ん、まあいっか。まだ動き出す時じゃない、し?」
「そうそう。というか、そこにいる彼女を助けられたみたいだしそういった意味でもよかったんじゃないのか?」
そこで少年が私の方を見て、そういう。
確かに彼の助けがなければ私は死んでいたかもしれない。
誠意には誠意を。
そう思って私は彼に、
「お礼をさせて欲しいわ。だって私を助けてくれたのですから」
「そうなのか? じゃあせっかくだから新商品でも食べていくか? できれば女の子の意見を聞きたいんだ」
「……え?」
今、彼は不思議なことをいった。
新商品?
私は首をかしげながら、
「……料理が趣味なのですか? いえ、冒険者でも料理が趣味の人はいるけれど……」
「いや、俺、今、ある村で喫茶店をやっているんだ」
「え? 喫茶店をやっている冒険者?」
「いや、そういえば俺、冒険者登録はしていなかったな。そのうちしておくか」
などと彼は言う。
どうやら彼は冒険者ではないらしい。
私の頭が混乱してくる。
何故冒険者でもないのに魔王と戦っていたりするのか?
そう困惑しているとそこで彼が、
「とりあえず、味見をして欲しいから、俺たちのいる村“マカロニ村”に来てもらってもいいか?」
「“マカロニ村”、どこですか?」
「“アルザの町”近郊の村だが、もし他の場所に連れて行って欲しいならリクエストは聞くぞ。あ、できれば新商品を試してもらってからの方が嬉しいが。やっぱり複数人の意見があるのとないのでは違うからさ」
などと少年はいうが……私はその町は知っているが、ここからはあまりにも遠すぎる。
だが場所としては問題なくて、しかもそんな風に自由に移動できるような大魔法をどうやら彼は使えるようで……もう自分の常識が通じないこの謎の空間に私は、考えるのをやめた。
助けてくれたし、彼らは悪い人ではなさそうだったので、
「大丈夫です。場所は分かりましたから」
「そうか、じゃあ、俺の手を握ってもらっていいか?」
そう言って彼は私に手を差し伸べてきて、私は彼の手を握ったのだった。
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