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永遠の謎

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189部分:第十三話 命を捨ててもその一


第十三話 命を捨ててもその一

                第十三話  命を捨てても
 王は一旦ミュンヘンに戻った。しかしだ。
 王は楽しまない顔で宮廷にいてだ。そのうえでだった。
 オーストリアとプロイセンの話を聞いていた。その話をだ。
 両国は動員態勢に入っていた。王自身もだ。
 まだ周囲からだ。しきりに言われていた。
「どうかです」
「総司令官になって下さい」
「是非共です」
「ここはです」
 こうだ。周りの誰もが執拗に薦める。しかしなのだった。
 首を縦に振らない。どうしてもだった。
 そしてだ。かえってだ。王は周囲にあまり面白くなさそうに述べた。
「今夜の舞台は何だったか」
「舞台ですか!?」
「今夜のですか」
「そのことですか」
「そうだ、それは何だったか」
 周囲に尋ねるのはそのことだった。そのことをだ。周囲に尋ねるのだった。王宮で尋ねるのはそのことであった。
 そのことを尋ねるがだ。周囲はだった。
「あの、今夜はです」
「舞台はありませんが」
「申し訳ありませんが」
「そうか。そういえばそうだったな」
 話を聞いて納得する王だった。そのうえでだった。
 今度はだ。こんなことを話すのであった。
「それではだ」
「あの、ですから今は」
「オーストリアとプロイセンがです」
「今にも戦争になります」
「ですから。とても」
「舞台等は」
 こう言ってだ。王に政治に顔を向ける様に促す。しかしだ。
 王はそれでもだ。まだ周囲に言うのだった。
「いいではないか。むしろだ」
「むしろ?」
「むしろといいますと」
「戦争の時だからこそ娯楽を求めるべきではないのか」
 こう周囲に話すのだった。
「私だけでなく誰もがだ」
「誰もがですか」
「陛下だけでなくですか」
「臣民達もですね」
「そうだ、それ位いいではないか」
 またこう話す王だった。
「楽しみのない世の中なぞ。何だというのだ」
「だから舞台をですか」
「舞台をですか」
「御覧になられたいのですか」
「舞台がないのならだ」
 その場合はだと。まさに今のことを話すのだった。
「それならだ。音楽にするとしよう」
「では王宮のオーケストラをですね」
「それをですか」
「そうだ。それでいいな」
 また話す王だった。
「オーケストラだ」
「わかりました。それでは」
「しかし。本当にです」
「今はご自重されるべきかと」
「そう思うのですが」
「戦争だからといって全てを捨てなければならないというのか」
 王はそのことを問うた。それをだ。
「そう決められているのか」
「それは違いますが」
「そこまではありませんが」
「そうだな。神が定められたことではあるまい」
 王は神の名も出した。それもであった。
「ではいいではないか」
「それで臣民達もですか」
「彼等も。今はですか」
「楽しんでいいと」
「そう言われるのですね」
「そうだ。戦争になっていてもだ」
 それでもだというのである。その状況でもだ。
 
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