魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~
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Epica21約束~Oath~
前書き
先週は投稿できずすんません!
言い訳は↓あとがきで・・・
†††Sideヴィヴィオ†††
番長やヴィクターさんとの試合を終えたルミナさんは「あー、楽しかった♪」って満面の笑顔。
「大丈夫ですか、お嬢様?」
騎士甲冑を解除して私服に戻ったヴィクターさんもリングから降りてきて、執事のエドガーさんが駆け寄った。ヴィクターさんは「ええ、平気よ」って答えた後、ルミナさんに向き直った。
「お手合わせありがとうございました」
「あ、オ、オレも! ありがとうございました!」
ヴィクターさんが試合をしてくれたことに感謝を述べると、番長も勢いよく一礼。ルミナさんは「こちらこそ、楽しい時間をありがとう!」って頭を下げた。
「んー。こっからはどうしようか。使用時間はまだもうちょっとあるし・・・」
「ヴィクトーリア達のリングの使用時間なんて始まったばかりだろう?」
シャルさんとルシルさんがそれぞれ時間を確認。わたし達は半分の時間は消費しちゃったけど、ヴィクターさん達は10分くらい前に入ってきたばかりだ。
「時間いっぱいまで利用しなければならない、という規約はありませんので、皆さんと同じタイミングで出ますわ」
「悪ぃな、お嬢。金払ってもらったのに、結局あんま使わなかったぜ」
「ルミナさんとの試合でお釣りが出ますわ」
ヴィクターさんと番長の話もついたみたいだし、残りの時間をどう過ごそうかって話になって、番長が「もし、なんスけど・・・」って前置き。
「もしルシルさんが参加するなら、どう戦術を組み立てるっスかね・・・? シャルさんやトリシュさんもっスけど・・・」
番長の言葉にシャルさん達が顔を見合わせて、シャルさんが「なんならわたし達大人組で試合してみる?」って笑った。だから番長も、それにヴィクターさんも「本当ですか!?」って期待したし、わたし達子ども組も「おお!」って興奮した。シャルさんのお家でするシャルさん達の模擬戦って、危ないから見学はダメって言われちゃってて観たことがない。
「馬鹿を言え。護衛中にいっぺんに2人も抜けられるか」
「う~ん、じゃあヴィクトーリアとハリーを仮想敵にして、どういう戦術を執るか体験してみれば?」
「「え・・・?」」
「実際に試合をするんじゃなくて、シミュレーションみたいな? それなら護衛の数も減らないしさ♪」
シャルさんの提案にルシルさんは少し考えた後、「君たちはそれでも良いかい?」って尋ねると、番長は「はいっ!」って力強く頷いて、ヴィクターさんも「ぜひ!」って一礼。というわけで、ルシルさんとヴィクターさんと番長がリングに上がって、改めて防護服に変身。
「では、まずは俺がインターミドルに出場し、君たちのように高位選手とぶつかってしまった場合な」
――闇よ誘え、汝の宵手――
「「っ!?」」
ヴィクターさんと番長ふたりの影から薄っぺらくて長い腕が生えてきて、2人を拘束した。
――輝き流れる閃星――
続けて2人の周囲に100発近い魔力スフィアがドーム状に展開されて・・・
――舞い振るは、汝の獄火――
さらに炎で構築された魔力槍が何十本と穂先を2人に向けると・・・
――轟き響け、汝の雷光――
さらにさらにドーム状に放電してるベルカ魔法陣が12枚と展開された。子供組だけじゃなくて実際に仮想敵をしてるヴィクターさんと番長も息を呑んだ。
「まず相手を拘束し、次に魔力弾と魔力槍の一斉掃射で防御を削りきり、最後に砲撃の持続放射でライフを一気に消し飛ばす。基本的に相手に何もさせずに綺麗サッパリ吹っ飛ばすのが、俺の戦術だ」
「これは・・・さすがに耐えらんねぇな・・・」
「私もですわ。魔法陣からの遠隔砲撃12発、それが途切れることなく持続的に放射を続けられれば、さすがの雷帝の甲冑も耐え切れませんわ」
ルシルさんが指をパチンと全ての魔法が解除されて、ヴィクターさんと番長も解放された。それからヴィクターさんと番長は、ルシルさんとシャルさんとトリシュさんが交代で試合形式じゃなく、こう攻めたらどうするか、とか、こう攻められたらどうするかっていう風にシミュレーションを行った。
「いやぁ、すっげぇ貴重な体験が出来たぜ!」
「良かったっスね、リーダー!」
「まさかあたしらまで護身術を教わることになるなんて思わなかったっスけど・・・」
「でもかなり為になったぞ。痴漢程度なら一撃で沈められそうだ」
「防御魔法の穿った使い方なども、実体験したのでとても有意義な時間でしたわね」
すっごく満足げなヴィクターさんや番長たちと一緒に、わたし達もリングを後にする。途中、わたし達子供組は更衣室に寄って、トレーニングウェアから私服へと着替える。そんな中、「そういえばヴィヴィオ達って、ルシルさんから何を貰ってたの?」ってコロナが聞いてきた。トリシュさんとのシミュレーションの最中、ルシルさんがわたしとフォルセティとイクスとアインハルトさんに・・・
「あ、うん。えっと、プロミスリング?っていうのを貰ったよ」
プロミスリングをプレゼントしてくれた。わたしの親指にはめられた紐で出来たリングを見る。アインハルトさんは左手の人差し指、フォルセティは左手の中指、イクスは右手の人差し指にはめてる。
「発信機の役割があるみたいです」
「万が一、私やヴィヴィオさん、イクスさん、フォルセティさんが拉致されたとして・・・」
「私のリングがヴィヴィオ達のリングの座標を拾って・・・」
「僕たちがどこに拉致されたとしても、リヴィアが即座に迎え来てくれる手筈を、お父さんが整えてくれたんだ」
「私がカルナージに戻っても判るみたいだし、ヴィヴィオ達は安心して拉致られて良いよ?」
「一応お願いしますって言っておくよ・・・」
拉致されるより早く、ルシルさん達がきっと最後の大隊をどうにかしてくれると思うし、リヴィもすぐに迎えに来てくれるって言うし、だから不安はないよ。
「ヴィヴィオさんが最後の大隊に怯えないで良い日が、早く戻ってきてもらいたいですね」
「アインハルトさんも、フォルセティにイクスも・・・。みんなが安心して過ごせる日々が戻ってきますよ」
着替えを終えたわたし達は「お待たせしました~!」ってシャルさん達と合流。エントランスホールの一角にあるカフェテリアで少し休憩をすることになった。シャルさん達大人組の奢りということで、ちょっと遠慮しつつも好きな物を注文。ちなみにわたしは、疲れきったこの体にパフェというご褒美を与える事にしました♪
「にしても、お前ら羨まし過ぎるぜ」
ステーキを頬張りながら番長がそんな事を言ってきたから、わたし達は「???」って小首を傾げて見せた。
「いやさ。何の誇張も無く、ガチで次元世界最強クラスのすげぇ人たちと試合して鍛えてんだろ? いろんなアドバイスも貰ってるんだろうし。チビ達、すげぇ幸せな立場に居るんだぜ?」
羨ましいってそういう意味だったんだ。でもシャルさんが「今日が特別なだけよ」って返した。そう、ルミナさんとの試合は本当に今日だけの特別なものだった。ルシルさんも「普段は仕事で忙しいからな」って続いた。
「今回はヴィヴィオ達から頼まれた事で、彼女たちが相手にと選んだルミナが試合することになっただけです」
「そ。今日、私たちの騎士隊は休暇だったこともあるから、こうして付いて来れたの。けど明日からまた仕事ってこともあるし、最後の大隊を潰したらそれこそ、シャルやルシルは別として、私とトリシュとの接点は限りなく少なくなるからね」
「ということは、オレやお嬢がルミナさんと闘えたのも・・・」
「奇跡のような幸運だったわけですわね」
本当にいろんな積み重ねがあっての現在があるってことが判って、わたし達は笑い合った。それから食事を続けているとノーヴェが「あの、お2人に相談があるのですが」って、ヴィクターさんと番長に話を切り出した。
「ヴィヴィオ達の監督兼コーチとして、あたしは日々この子たちを鍛えているんですが。身体の鍛錬は問題は無いんですけど、アインハルトの覇王流については変に口を出してスタイルを崩してしまうようなことは出来ないんです。そこで、公式試合の経験者とのスパーリングをたくさん経験させようと考えたのです。で、お2人の知り合いをまず当たらせてもらえないか、と」
「ノーヴェさん、敬語は結構ですわ」
「オレも。オレの方が年下だろうし。・・・で、その相談っていうことなら、そういう外試合的なやつが好きな連中に心当たりがあるんで、連絡先を教えておくっスよ」
「私の知り合いにも、そういった異種格闘のスパーリングを好む者を知っていますわ。こちらが連絡先ですわ」
「ありがとうござ――ありがとう、恩に着るよ!」
「ヴィクターさん、番長さん、ありがとうございます!」
ノーヴェとアインハルトさんが頭を下げてお礼を述べたけど、番長は「今回の授業の料金っつうことで♪」って笑って、ヴィクターさんも「そういうことですわ」って微笑んで見せた。ノーヴェとの連絡先の交換を終えたヴィクターさんが「そういえば・・・」ってアインハルトさんを見た。
「アインハルト。あなたは、覇王流が最強であることを世界に示したい、ということでしたわね。・・・ではジーク、ジークリンデ・エレミアとも拳を交えるつもりだったのでしょ?」
ジークリンデ・エレミア選手。出場は過去3回。そのうち1回で世界代表戦を勝ち抜いて、正真正銘、10代女子最強の地位を手にした、わたし達みんなの目標の1人だ。今年の大会は、どういうわけか途中で欠場しちゃって、別の選手が世界最強の座に就いた。
「はい、一応ですが。チームナカジマの皆さんとの目標ですので」
10年計画で世界最強を目指そうって目標を掲げてるわたし達チームナカジマ。もちろんメンバーの一員であるアインハルトさんも、チームナカジマのチームメイトとして、そしてもう1つの目的の覇王流の威を示すために頑張ってる。
「?・・・いえ、それもそうでしょうけど、あなた・・・というか、覇王イングヴァルトとしてエレミアとの関係というか・・・」
「あの、それは一体どういう・・・?」
アインハルトさんとヴィクターさんは揃って小首を傾げる。ヴィクターさんは、アインハルトさんとジークリンデ選手との間に何かしらの関係がある、みたいな感じで話してたけど・・・。
「あなた、覇王流だけでなく覇王イングヴァルトの記憶も承継していると伺ったのだけれど・・・」
「はい」
「なら、エレミアの事も憶えているのではないの?」
みんなの視線がアインハルトさんに向かって、アインハルトさんは「すみません。全てを思い出しているわけではなくて・・・」って申し訳なさそうに目を伏せた。覇王の記憶は少しずつ、状況によって浮かび上がってくるみたいで、アインハルトさんの言うように全ての記憶を見られるわけじゃないみたい。
「そうでしたの。・・・判りましたわ。なら憶えておきなさい。鉄腕ジークリンデ、黒のエレミアという名を」
「はい、判りました」
それから談笑しながら食事を終えて、「ごちそうさまでした!」ってシャルさん達にお礼を言った後、エントランスから外へと出る。わたし達はルーツィエさんの運転するリムジンが来るのを待って、ヴィクターさんと番長たちはエドガーさんが車を取りに行ってるのを待つ。
「ではヴィヴィ、アインハルト、リオ、コロナ、ルー、リヴィ、来年のインターミドルであなた達と槍を交えることを楽しみにしていますわ」
「ああ。だからオレ達と当たる前に負けんじゃねぇぞ。これ約束だからな」
番長が突き出した右拳に、わたし達も拳を出してコツンと打ち合わせた。番長やヴィクターさんと闘えるまでのレベルアップをして、必ずリングの上で会うんだっていう約束をした。とそこにルーツィエさんの運転するリムジンがエントランス前に横付けされた。
「ヴィクターさん、番長、今日はありがとうございま――」
お別れの前に改めてお礼を言おうとした時、PiPiPi♪って通信が入ったことを知らせるコール音が鳴った。受信者はシャルさんのようで、「ほいほい、こちらシャル」ってモニターを展開して通信を繋げた。
『あ、イリス。本部よりスクランブル要請が入った。北部レムリア地区とアーグルトン地区に仮面持ちが4人ずつ出現。私とセレスとアンジェは先行して向かうけど、そっちはどうする?』
「う~ん・・・」
通信の相手はクラリスさんだった。シャルさん達はわたし達の護衛として付き合ってもらってるから、こういう緊急時にはわたしは足を引っ張る存在になっちゃうわけで。迷惑かけちゃってるな・・・って落ち込んでると、「ふわっ? ルシルさん・・・?」がわたしの頭を優しく撫でた。
「ヴィヴィオが辛い顔をする必要は無いよ。悪いのは君ではなく最後の大隊なのだから」
「ルシルさん・・・!」
「そうだよ、ヴィヴィオ」
「ヴィヴィオは何もしてないもん!」
「はい。その通りです」
「だから気にしちゃダメだよ」
「大丈夫ですよ、ヴィヴィオ! シャル達が必ず、最後の大隊を捕まえてくれます!」
「コロナ、リオ、アインハルトさん・・・フォルセティ、イクス。うん、ありがとう!」
わたしは本当に幸せ者だって、いつも思ってることを改めて思う。目を閉じて胸のうちにある温かな思いを感じていたところで・・・
――トランスファーゲート――
「おっと。妙なタイミングで拉致してきたわね~」
シャルさんがそう言ったから慌てて目を開けると、わたしの腕を掴もうとしている腕が空間の歪みから生えてきていて、ルシルさんがその何者かの腕を掴んでいた。目をパチクリしていると、「ヴィヴィオ、こっち!」ってアイリがわたしを抱きしめた。
『何かあった?』
「こっちにも仮面持ちが出た。完全にヴィヴィオ狙い」
『・・・判った。こっちの件は他の隊も出るみたいだし、気にしないでそっちに来た連中を潰しておいて』
「ありがと、クラリス」
「こそこそと卑怯者め!」
ルシルさんがグイッと腕を引っ張って、空間の歪みから男性の仮面持ちを引っ張り出して地面に叩き伏せた。その仮面持ちに「普通さ、煙幕焚いてとか、護衛が減ってからとかじゃない?」って言いながら、シャルさんは起動した“キルシュブリューテ”の刃先を向けた。
「でもま、煙幕が焚かれてもわたし達の視界が完全に無力化される頃には、わたし達はヴィヴィオの防衛を完全にするし、護衛が減ってもその分コレまで以上に警戒するから、どっちにしろヴィヴィオの拉致なんて不可能だろうけどね」
「・・・」
――トランスファーゲート――
「なんだテメェら!」
「最後の大隊ですわね・・・! 直接お目に掛かるのは初めてですわ!」
わたし達の周りに仮面持ちが10人以上と現れた。この人たちみんな、わたしやイクス達を狙ってるっていう事実に身の毛がよだつ。仮面持ちの人たちが一斉にデバイスをわたし達に向けた瞬間・・・
――舞い降るは、汝の煌閃――
「ジャッジメント」
たった1人だけ、女性の仮面持ち以外の仮面持ちが高速で飛来した魔力槍を避けられずに貫かれた。さらに「カムエル!」って、仮面持ちの人たちの影を利用して作った影の腕で全身をグルグル巻きにした。
「今の俺たちは局員時代より優しくはないぞ」
「そういうこと♪」
「あなた達、全員を逮捕します」
「そこの角突き仮面も、抵抗せずに投降するように」
確かハンニャっていうデザインの仮面を付けた女性仮面持ちは、シャルさん達SSランクの実力者と対峙をしても慌てることなく、ジッとわたしを仮面越しから見つめてきていて、そして自分を拘束してる影の腕をバキバキって引き千切って見せた。
†††Sideヴィヴィオ⇒イリス†††
十数人の仮面持ちを一気に捕まえられたけど、般若の仮面を付けた女仮面持ちは、ルシルの奇襲の魔力槍を余裕で躱し、影の触手カムエルも力ずくで引き千切るなんて荒業を見せ付けてきた。ルシルが「おいおい、凄まじいな」って驚きを見せた。
「ルシル、ルミナ、トリシュは引き続きヴィヴィオ達の護衛に専念。こいつはわたしが倒すよ。ルシル、結界をお願い。うんと強力な奴」
「判った」
「ご武運を、イリス」
「シャル。彼女はまさか・・・」
「うん、たぶんね。じゃ、後は任せてね♪」
ヴィヴィオ達にも笑顔を向けながら手を振って、ルシルの展開した結界魔法によってわたしと仮面持ち以外の人間がパッと居なくなった。
「さてと。・・・あなた、ミヤビだよね? あなたから連絡が途絶えたからまさかとは思っていたけど・・・。やっぱりあなたを最後の大隊へ潜入させるなんて真似させるべきじゃなかったね・・・」
・―・―・回想なのだ・―・―・
「へ? 最後の大隊からスカウトされた?」
『はい。先日のトレインジャック事件の際、仮面持ちの1人から入隊しないか、と・・・』
かつて同じ隊で頑張っていた仲間、ミヤビからそんな連絡が入った。管理局の抱える多くの問題を、正義感が強いミヤビに突き付けてその思いを砕こうとしたようだけど・・・。
「ミヤビはどうしたいの?」
『もちろん考えるに値しないものですので断ります。ただ・・・』
「ただ?」
『シャル隊長。最後の大隊の尻尾を掴む方法があるのですが・・・』
ミヤビが何を言うのかすぐに察せたわたしは「却下」って、その提案を受け入れないことを先制して伝える。ミヤビは『私が何を言うのかがお判りなのですか?』ってちょっと不満げ。
「誘いに乗った振りして大隊に潜入して、情報を集めて局に流す・・・みたいなことを考えてるんでしょ?」
『あぅ・・・。はい、仰るとおりです・・・』
「最後の大隊に潜入捜査するなんてさすがに危険が過ぎる」
多くの魔導師や騎士を集める人材掌握のすごさから、心理的な戦術が巧いと思うんだよね。そこに純真なミヤビが行っちゃうと、信じたいけど洗脳されてしまう気がする。魔法とか機械的な技術による洗脳なら、まだ解除する手段はある。だけど、ミヤビの心がそっちに傾倒してしまうような話術による洗脳になってしまうと、もう剣を交えたうえで叩き潰し、時間を掛けて解かないといけなくなる。
「ミヤビをそんな形で失いたくないの」
『シャル隊長・・・。ありがとうございます、私を心配していただいて・・・。でもやらせてください』
「ミヤビ・・・」
『シャル隊長の、局員としての残り時間が少ないのは知っていますよ。最後の大隊との戦いが長引くと、それだけ特騎隊としての活動期間が短くなるんです。私、そんなの嫌です。もっとシャル隊長、ルシル副隊長、それに先輩方と同じ現場を経験したいです』
「わたしも気持ちは一緒だけどね・・・」
ミヤビの言うように正直な話、潜入捜査でもやらないと大隊の殲滅には時間が掛かりそうとは考えてたけどさ。でもミヤビをそんな危険な任務に就かせて良いのか・・・。
「ご家族には・・・?」
『伝えるつもりはありません。絶対に止められますから。後で怒られることを覚悟して望む次第です』
今のミヤビは説得が通じるような半端な覚悟じゃないことを感じたわたしは、「ねえ、ちょっと逢えない?」って聞いてみると、「はい。今日は非番なので大丈夫です」とのことだったから、わたしは事情を話したルシルと一緒にミヤビと逢う約束をした、中央区画の喫茶店へ向かった。
「久しぶり、ミヤビ!」
「元気そうで何よりだ」
先に喫茶店に着いてたミヤビは、店の奥のテーブル席を取ってくれていた。ミヤビの元へと行ってそう挨拶したら、「あの、どちら様でしょう?」って彼女にそう言われて、わたしとルシルが今、カツラと帽子で変装していることを思い出した。
『大隊にスカウトされた以上、ミヤビが監視されてる可能性もあるし。ラフな会話をしつつ、思念通話で本題ね』
「『あ、なるほどです。判りました。えっと、じゃあ・・・』何かお食べにな~・・・るかい?」
ミヤビの変な口調に笑いそうになったけど、わたしは「とりあえずミルクティー」って決めて、ルシルは「チーズハンバーグセット」ってガッツリ系。
「お昼はまだな~・・・んかい?」
「ああ、食べる前に引っ張って来られたからな」
「ごめんごめん。だから今日は奢るから♪ あ、ミヤビの分も奢るから好きなの頼んでね~」
「あの、ありがとうございます、ごちそうになり・・・なるよ」
まだ昼食を終えてなかったルシルの“マクティーラ”に乗ってやって来たからね~。その辺はおごりで許してもらう、ってことにしてもらおう。わたしのミルクティー、ルシルのハンバーグセット、ミヤビのパフェを、店員さんに注文してから『じゃあ本題』を切り出す。
『念のために魔法や機械的による洗脳を施されないよう、ルシルの魔術でミヤビに精神にプロテクトを掛けようと思う』
『魔術。魔法より上位の魔導技術でしたね。はい、よろしくお願いします!』
・―・―・終わりだよ・―・―・
「ルシルがガチで施したプロテクトだからね。エグリゴリの中で洗脳できる奴はもう居ないって話だし、話術による洗脳にも耐えるって言ってたもんね・・・」
“キルシュブリューテ”の柄を握り直して、騎士服へと変身する。
「もしあなたが大隊側に付いた場合は、洗脳されていようが偽者だろうが全力で潰すって約束だから・・・」
その約束に従って、わたしがあなたを止める。
「イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト、参ります」
後書き
まぁ田舎の年末年始は忙しい。やる事なす事、田舎特有の行事が多すぎる。
しかも大掃除の一環で、普通の一戸建て住宅よりデカイ蔵の整理ときた。
全身が筋肉痛でちょびちょび書けなかったということもあり、先週は投稿できませんでした。
ということで、1月後半まで毎週投稿は出来そうにないっす!
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