レーヴァティン
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第七十二話 大商人その九
「戦ってる時なんかな」
「それでや、商売の世界もや」
「信頼第一だな」
「そういうこっちゃ、それでうちもや」
「信頼第一でやってるんだな」
「評判も気にしてな、気が小さいっていえば」
評判や信頼を常に強く意識している、それを気が小さい人間と言うならばというのだ。
「そうなるわ」
「小心者かよ」
「そや、儲け方も石橋叩いて渡らんってつもりやし」
「元総理大臣みたいだな、タレントさんのお祖父さんだった」
久志は女の言葉からこの人物も思い出した。
「あの人みたいだな」
「あの人はうち尊敬してるで」
「そうなんだな」
「政治家として見るべきもんあったからな」
その能力を見てのことだというのだ。
「金は貯めても自分の為には使わんかったしな」
「全部政治に使ったんだな」
「ある意味潔いわ」
「まあ最近の野党の女議員連中よりずっとましか」
「あの連中は私利私欲しかなくてしかもな」
女は彼女達についてはこうも言った。
「評判も信頼もや」
「気にしてないってか」
「うちはあの連中こそさっき言うたド屑やと思うてる」
「胡散臭い奴ばかりなのは事実だな」
「そやろ、テレビや新聞では人気あっても」
マスコミは持て囃してもというのだ。
「実際はや」
「違うからな、マスコミが言うことと真実ってのは」
「うちはそれを見てや」
「あの連中こそか」
「ほんまのド屑や、商売したらな」
その時ことというのだ。
「絶対にあかん連中や」
「商売相手には絶対に信用するな、か」
「大阪の奴も名護屋の奴も東京の奴もな」
「誰が誰かすぐにわかるな」
「その連中を信じてる漫画家もおるけど」
「何かもう終わった人になったな」
「傲慢か何か知らんがあの漫画かもな」
「同じ穴って奴か」
「貉や」
同じ穴の狢、それだというのだ。
「うちはあの漫画家が商売の話持ち出しても信用せんわ」
「それで仕事もしないんだな」
「そや、ほんま商売はな」
「評判と信頼か」
「その二つが大事やで、そやからな」
「今からか」
「ちょっと店のモンに言うとくわ」
自分のいない間の仕事への申し継ぎ、引き継ぎ等をというのだ。
「そうするわ」
「そうか、じゃなあ」
「今からやってくるわ」
「その間待ってるぜ」
「うちの店でお金落としてくれたらええわ」
「そこでまた言うかよ、それでな」
「ああ、言い忘れてたことあったな」
女は久志が今言うことを察してそのうえで応えて述べた。
「うちの名前とかやな」
「ああ、何かいつもこうなんだよな」
「名前聞くのは最後か」
「他の連中とはじめて会った時もな」
久志は仲間達を見回しつつ女に話した。
「いつもな」
「名前とか聞くのはやな」
「最後なんだよ」
「そうなってるんやな」
「色々他に話してな」
「ほんまやったらまず最初に名前からでもやな」
「名前が最後だな」
そうなっているとだ、久志はまた女に話した。
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