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悲しい青髭

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第四章

「あの方はどの奥方様もです」
「殺められていませんね」
「あの方は非常に心優しい方なのです」
 そうだというのだ。
「私達に対しても」
「それはわかります、あの方は」
「非常に心優しい方ですね」
「誰よりも」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「どの様な方でもです」
「その手にかけられることは」
「ありません」
 こうマリーに話した。
「あの方は」
「そうですね、ですが」
「これまでの奥方様はどの方も不幸があったのです」
「その不幸は」
「最初の奥方様は癌でした」
「癌で」
「お若い時に。お若いだけに」
 癌細胞は若ければ若い程その動きが活発になる、それでというのだ。
「もう発見された時には手のほどこし様がなく」
「それでなのですか」
「お亡くなりになられました」
 結婚してすぐにというのだ。
「残念ながら」
「そうだったのですか」
「はい、そして悲しみに沈まれていました」
 最初の妻を亡くしたその時はだ、ロシナンテはそうなっていたというのだ。
「見ている私も他の者もどう声をかけていいか」
「そう思うまでにですか」
「酷い悲しみでした」
「そうだったのですか」
「そして二度目の奥方様もそれからの奥方様も」
「どの方もですか」
「はい、病や事故等で」
 そうした不慮のことでというのだ。
「亡くなられています、そしてその都度」
「あの人は」
「酷く悲しまれました」
「愛しておられたからですね」
「ですから奥様にです」
 マリー、彼女にとというのだ。
「何としてもです」
「生きていて欲しいとですか」
「それも長く」
 そう思うからだというのだ。
「ですから」
「私にですか」
「厳重なまでにです」
 食事や安全、そうしたことにというのだ。
「お気遣いをされているのです」
「そうでしたか」
「旦那様の噂は私共も聞いています」
 これまでの妻達を次々と殺している殺人狂、その話をというのだ。
「ですがそれは」
「違うのですね」
「断じて」
 こうマリーに言うのだった。 
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