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悲しい青髭

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第二章

 だがその屋敷に入ってからだ、ロシナンテはその蒼白というよりかは青ざめた顔と黒々とした髪の毛と髭、陰気な青い目を持っている顔でマリーに言った。背は一八〇あるが痩せた身体はやや背中が丸まり背より小さく見える。着ている服は喪服の様に黒い。
 その彼がだ、こうマリーに言ったのだ。
「私の妻となった貴女に言っておくことがある」
「それは何でしょうか」
「まずは毎日適度な運動をして欲しい」
 最初に言うのはこのことだった。
「水泳なり何なりだ」
「毎日ですか」
「そうだ、そして入浴も毎日じっくりして欲しい」
 今度は入浴の話だった。
「一日一回は必ずな」
「必ずですか」
「入って欲しい、そしてな」 
 彼はマリーにさらに話した。
「食事もだ」
「食事は」
「三度食べて欲しい」
「朝と昼、そしてですね」
「晩にだ、シェフに言って作らせる」
 その食事はというのだ。
「常にな、しかしな」
「しかしといいますと」
「その食事はどれも残さず食べて欲しい」
 シェフが作って出した食事はというのだ。
「いいな、必ずな」
「残さずですか」
「味だけでなく栄養も考慮して作らせる」
 そうした料理だというのだ。
「栄養士に言ってな」
「そうですか」
「それを食べて欲しい、そして日光浴も忘れないでくれ」
 これもと言うロシナンテだった。
「毎日な、ただ雨が降れば」
「その時は」
「雨にあたらない様にして欲しい」 
 くれぐれもというのだ。
「そして外出の際はだ」
「あなたにお話をして」
「いや、私に言わなくても外出をして外を楽しんでもいい」
 屋敷の外で買いものをしてもいいというのだ。
「喫茶店やレストランに入ってもな。しかしな」
「しかし、ですか」
「何を飲んで食べたのかは細かく教えて欲しい」
「喫茶店やレストランで」
「そして車は用意してある」
 外出の際のそれはというのだ。
「特別の車をな。運転手もいる」
「車の免許は持っていますが」
「それはいい。後ろでくつろいで欲しい」
 後部座席でというのだ。
「そこでな、ただシートベルトはだ」
「絶対にですか」
「して欲しい、飛行機や船での移動の時は言ってくれ」
 この時はというのだ。
「ビーチに行く時もな」
「旅行もいいですか」
「自由にしていい、しかし飛行機や船は選んでくれ」
 くれぐれもとだ、またこう言うロシナンテだった。
「厳重にな。病気になれば屋敷に医師もいるしいい病院も知っている」
「では病気になれば」
「すぐに診てもらうのだ、また定期健診も受けてくれ」
 こちらの話もするのだった。
「半年に一回な」
「一年ではなく」
「そうだ、半年だ」
 普通は一年だがその半分の期間だった。
「宜しく頼む、そして毒蛇や鮫がいる様な場所には絶対に近付かないでくれ」
「毒蛇ですか」
「当然蠍もだ、毒のある生きものには近付かないことだ」
「私は近寄らないですが」
「それでも言う、絶対にだ」
 毒蛇や蠍には近付かず鮫等危険な生物がいる場所にはというのだ。 
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