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永遠の謎

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179部分:第十二話 朝まだきにその五


第十二話 朝まだきにその五

「プロイセンはフランスとも戦う」
「必要だからこそ」
「だからこそですか」
「フランスとも戦う」
「そうするのですか」
「戦争はその二つだ」
 ビスマルクが考えている戦争はだ。オーストリアとフランス、その両国とだというのだ。これもまた政治的な理由からだというのである。
「だが。それは」
「それは」
「それはといいますと」
 周囲は王の顔が曇ったことに気付いた。
 それでだ。その王に対して問うた。
「バイエルンの取るべき道はですか」
「それを御考えなのですね」
「それはもう決まっている」
 全てを達観した、そうした言葉だった。
「プロイセンは今は好戦的だ」
「好戦的だと」
「そう言われますか」
「あくまで今は、だがな」
 言葉は限定だったがそれでも断定であった。
「やはり好戦的だ」
「ではそのプロイセンとは」
「どうされますか」
「距離を置く。私はオーストリアの方がいい」
 こうだ。醒めた声で述べた。
「好戦的なプロイセンよりはだ」
「ではやはりですか」
「オーストリアにつかれますか」
「そしてですね」
「軍の総司令官になられますか」
「オーストリアが望んでいる」
 それにというのであった。
「なられるのですね」
「そうされますか」
「いや」
 だが、だった。そのことにはだ。王は顔を曇らせて答えた。
 そしてだ。彼は話した。
「私は戦いは好まない」
「あの、ですが」
「バイエルン王としてはです」
「司令官に就任されないと」
「とても」
「しかし私は好きではない」
 それは変わらないと。王の言葉は強いものになった。
 そしてだ。その醒めながらも強い言葉でまた述べたのだった。
「戦い自体をだ」
「だからですか」
「司令官には就任されない」
「それが理由ですか」
「陛下、それは」
 それについてはとだ。誰もが言葉を曇らせる。
 そのうえでだった。彼等は王に対して述べるのだった。
「オーストリアに示しがつきません」
「そして我が国の信頼にも関わります」
「そんなことをされては」
「オーストリアからも各国からもです」
「よく思われませんが」
「だが、だ」
 それでもだというのであった。王はだ。
「私はそれでもだ」
「就任はされせんか」
「断られるのですか」
「やはり」
「そうだ、それはない」
 また言ったのだった。彼はだ。
「決してだ」
「左様ですか」
「司令官にはなられませんか」
「それは絶対になのですか」
「御心は変わりませんか」
「そうだ、変わらない」
 やはりまた言うのであった。
 
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