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ダンジョン飯で、IF 長編版

作者:蜜柑ブタ
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短編集編
  IFのIF  わたし(or僕)を食べて

 
前書き
※『IFのIF  やはり、魔物は魔物だ』の派生の派生。
※ファリン×ライオス。カブルー→ライオス前提。
※『IFのIF  あなたと一緒にいられるなら』のその後みたいな、ギャグ? 

 
「僕のモノになってください。イヤなら僕を食べてください。」
「殺されたいの?」
「あ、あの…二人とも?」
 バチバチと見えない火花を散らすカブルーとファリンに、ライオス・ドラゴンキメラは、戸惑った。

 狂乱の魔術師は、倒された。ファリン達の手で。
 その後、ファリンが迷宮の主となり、キメラとなった兄・ライオスの居場所を保つことになった。
 迷宮の封印を目的にしていたカブルー達と再び遭遇したとき、激しい戦いが展開されるかと思いきや……出鼻をくじかれた。
 主にカブルーの迷言(?)で。
 正気に戻ったライオス・ドラゴンキメラを目にして、笑顔で一言。
「好きです。僕を食べてくれたこと覚えてますか?」
 ……突然の告白と共に爆弾を落とした。
 カブルーの仲間に問いただされて、あの時の腕の傷がライオス・ドラゴンキメラに自分から肉を食べさせた跡だったことを悪びれもなくカブルーは答えたのだった。
 言葉を失うカブルーの仲間達を後目に、カブルーは、ずいずいとライオス・ドラゴンキメラに近寄って腕の傷跡を見せつける。
「覚えてます?」
「えっと……。」
「なーんだ、覚えてないのか…。こんな傷をつけておいて…。」
「ご、ごめん! 迷宮の支配を受けていた時の記憶が曖昧で…、ただなんか美味い肉を一回食べたような………、あれ?」
「へ~? 僕、美味しかったですか?」
「お、覚えてない…。」
「でも美味しかったって記憶はあるんでしょう?」
「ああ、あるには…あるんだけど、………あれ?」
「僕を傷物にした責任は取ってくださいよ。」
「ええー!」
「兄さんに近づかないで。」
「迷宮の主は、すっこんでてください。」
「殺されたいの?」
「ふぁ、ファリン、落ち着け。」
「兄さんは下がってて。」
「ライオスさんは、下がっててください。」
「ええー?」
 こうして、ファリンとカブルーの戦い(?)が展開されることになった。
 ライオスを自分にくれ、ダメ!みたいな、なんとも平和的(?)な戦いではある。
 カブルーの仲間が、目の前に迷宮の主がいるんだから迷宮の主を倒さないのかと聞くと。
「妹公認で仲を認めてもらいたいから。」
 っと、言ってのけたのだった。
 恋は盲目とはよく言ったものだ。魔物を憎むがためにダンジョンの封印に積極的だったカブルーも、所詮は普通に恋する男だったのだ。それが例え、相手が魔物になってしまった人間でもそれを受け入れるぐらいには好きらしい。
 カブルーの仲間達は、心底呆れたが、だからといってパーティーメンバーからは外れていない。
 なぜなら、ライオスを巡って戦うときのみ、迷宮の主であるファリンが浅い層にも自ら出てくるからだ。つまり隙あらば殺せるということだ。
 その噂は、冒険者間で、瞬く間に広まり、カブルー達の後をつけて行ってファリンを襲おうとする者達が出始めた。
 すると今度は、ライオス・ドラゴンキメラが、迷宮の主の使い魔として立ちはだかり、返り討ちに遭うという事態になる。
 周りが死屍累々になっても、喧嘩しているファリンとカブルー。
「あれ? なんでこんなに死体が転がってるんだ?」
「気付けよ!!」
 喧嘩が終わってから、気がつくカブルーに、さすがにファリンの元仲間達とカブルーの仲間達は、みんなで同時にツッコんだ。





***





 そんなこんなで、最近では、二階を拠点に、木のウロの外でライオス・ドラゴンキメラ巡ってファリンとカブルーが喧嘩している傍ら、ファリンの元仲間を交えて、センシが作った魔物食を食べながら、愚痴を聞いたり聞かせたりするのが恒例となっていた。
「あなた達も苦労してるわね~。」
「アイツ(カブルー)が、あんな恋愛バカだったとは思わなかったのよ。」
「仮にライオスの奴をモノにしたとして、その後どうする気なんだ、アイツ(カブルー)?」
「それ聞いたら、首輪付けて繋いどくって言ってた。」
「…どこに?」
「納屋にって…。」
「犬じゃねーんだから。」
「あやつは、いつも様々な階層を飛び回っておる。大人しくさせるのは、並大抵のことじゃない。」
 様々な階層を自由に飛び回っているため、自分では行けない階層の魔物を取引しているセンシがそう言った。
「それに今のライオスを外には出せないわ。だから、ファリンが居場所を確保するために迷宮の主になったのよ。」
「その件なんだけど……、なんか無人島で暮らそうかとか本気で考えてるみたい。」
「そこまでするか?」
「もしくは、シュローさんのところの島に移住も考えてるみたい。家のカタログ見てた。」
「ホントのアホでバカだなぁ!」
「うちのバカリーダーが迷惑かけてごめん…。」
「いやいや、こっちこそ、極度のブラコンのせいで、すまん。」
 それを言った後、みんなでほぼ同時にため息を吐いたのだった。

「お腹すいたー。」
「みんなもう食べたのか?」
「センシ。今日は何を作ってくれたんだ?」

 そこへ、喧嘩を休戦した二人と、二人の争いの原因になっている一匹(?)が戻ってきた。
 腹が減ったら、食事をしに休戦する。これも恒例になっていた。
 そんな三人の姿を見て、彼らの仲間である者達は、再びため息を吐いたのだった。
 この争い……、どちらかが妥協するか、ライオスがイヤだとキッパリ拒否するか、カブルーを好きになってファリンを説得するかしない限りは終わらないだろう。
 ……とは言ったものの、カブルーが諦めるような性格じゃないので、断ってもずいずいと行くだろうと想像し、あと、ファリンもファリンで絶対に兄を奪われまいとするだろうから、結局は戦いは終わらないだろうと思って、互いの仲間達はまたため息を吐いたのだった。 
 

 
後書き
恋馬鹿とブラコンの対決は、終わりを見せない。 
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